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雑念が入ったから

 「雑念が入ったから、、、」心臓がドキッとし、そうだったのかと納得した。テレビで見た、三遊亭円楽師匠の引退記者会見のひとこまである。

 円楽師匠は一昨年の暮れに脳梗塞を発症した。その後復帰を目指し練習を積んできたらしいが、先日、国立演芸場での高座のあと記者会見で引退を表明した。

 「ろれつが回らない。話のニュアンスがうまく出ない。こんな話を、お客さまの前でやるのは情けない」

 「もうちょっと、はっきりしゃべれるかと思ったが、だめですね。こんな調子で、また恥をかきたくない。今日が引退する日ですかね」

 情けないからとか恥をかきたくないというのは分からないでもないが、うまく話せないと言うだけで引退と言うのももったいない。年輪を重ねた味わいが、ろれつの回らないのを十分カバーするかもしれないのに。

 ところが冒頭の「雑念が入ったから、、、」を聞いて、それならば仕方ないとだろうと納得した。技術の問題ではない、集中力が続かないと言うのである。自分の経験に照らし合わせてもそれならやむ得ないと思うのである。

 この記者会見はあらかじめ予定されていたものではないらしく、従って原稿を読むような会見ではなかった。師匠はその場で言葉を絞り出すように話している。俗な言い方だが魂の言葉である。

 新聞やテレビではこの記者会見の模様を編集して流していたが、従来のマスコミだったらこれでもしょうがないと思う。しかしインターネットの発達した現在だから会見の全文にもアクセスできるようにしてもらいたいものだ。残念ながらYouTubeにも無かったのだが、一流の芸人の心からの言葉をそのまま聞いてみたいのだ。

 三遊亭円楽師匠、長い間ご苦労様でした。少し休養をとって、英気を養ってください。有難うございました。

Photo: http://www.asahi.com/culture/update/0225/010.html

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