「あなたが死ぬ時に、誰が涙を流すのだろうか」 ー スペインとドイツの二日間

2015年09月05日 | 随想

昨日はスペインのバルセロナにいました。
仕事上、今年三月の飛行機墜落事故のスペイン人とドイツ人の
御遺族の方々に通訳として対面することになりました。
遺された伴侶の方、息子さん、娘さん、御両親の方々の哀しみ、
嘆き、心に負った深い傷は癒しようがなく、言葉がありません。
それでも貰い泣きはせずに、なるべく正確に、無念の想いのその
表現を、亡くなった方への言葉を少しでも、出来る限り伝えること
が僕の役目です。

心の病を患っていた副操縦士の自死の道連れとなり、まさに人生の
不合理に直面しての不慮の死。亡くなられたお二人の方は僕とほぼ
同い年、50代後半の男性二人でした。
「この年になれば、兄妹や友人に死に別れることはもう何度も
あったこと。それでも、子供に、自分の息子にこんな形で先に
逝かれたこと、このことは耐え難く、どうにもならない。」
と繰り返し語る、八十を越えた遺族のお母様の慟哭が、今も耳に
響きます。
人の死が避けがたいこと、其れがいつ来るかもしれないこと、
当たり前のことですが、そのことを毎日の生活の基本として、
一日一日を自覚的に生きていくことは容易なことではありません。

 


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ドイツに戻った翌日、今日は妻の従兄弟の結婚式です。





2歳の子供のいる若い二人が、これからの人生を互いを伴侶として
送っていくことを誓い、祝おうとする特別な日です。二人にとって、
家族、親戚、昔からの友人達が一堂に会し、まさに記念すべき、
人生の特別な一日だったと思います。
僕自身はこの二日間で、スペインとドイツを移動することになり、
慌ただしい時間でしたが、常に頭の中にあったのは次のような文章、
問いかけです。

「あなたが死ぬ時に、誰が涙を流すのだろうか、私達は、その人達と
交わす言葉の一つ一つを、その時間を、そして自分の一回限りの人生の
時間を、一日一日、大切に過ごしているのだろうか?」