バルセロナ、ピカソ美術館を訪ねて

2015年09月04日 | ドイツ・ヨーロッパの「旅」

今日はバルセロナでの仕事が予定より早く終わったので、妻と二人で
前回5月にはその前を通るだけで、足を運ぶことのできなかったピカソ
美術館に行きました。
バルセロナ旧市街の細い路地が交差する一角、その歴史的建物の前には
世界各地からの訪問客が入場待ちで列を成しているのが常のようですが、
小一時間ほどで中に入ることが出来ました。



大きな中庭(パティオ)から階段を上がり、美術館の中に入っていくと
天井の高い大小の展示室があって、ピカソの各々の時代の代表作とともに
普段は目にすることの出来ない下絵や習作も幅広く展示されていて、
彼の千変万化とも言える作風、創作プロセスが目の前に広がります。
(日本語の詳しいオーディオガイドもあります。翻訳文もよくこなれて
いました。)

なかでも、外国の展覧会ではあまり披露されないピカソの十代前半から
の初期作品も数多く展示されており、特に見応えがありました。
初期の作品(13歳の頃からのものがあります)の一つ一つを見ていく
と、ピカソの実に確かな眼と、若い時に徹底的に鍛えられた精密な
描写力がよく分かります。



「科学と慈愛」(1897年)/ピカソ15歳の時の作品

彼の絵師としてのこのような際立った基礎力が、その後の画家
としての発展と、カメレオンのような様々な作風の下支えになって
いることを感じます。







レオナルド・ダビンチの言葉に
「精神と手がともに働くことがなければ、芸術は生み出されない。」
と言う定義的表現がありますが、ピカソの場合にも、まさにそれが
当てはまるようです。

僕自身はキュービズムを生み出したピカソの後期から晩年の作品には
あまり興味を抱けませんが、絵画としての面白さやその美術史的意味
にも、好みや知識がついていきません。
むしろ、彼の画家というよりは絵師としての創作の軌跡、その自由自在
な豹変ぶりに興味が湧きます。また、ピカソと言えばいかにも生気に溢れ、
筋骨隆々とした壮年の自信に満ちた男性の姿が目に浮かびますが、その背後に、
一見ひ弱で細身の神経質そうな子供が隠れていたのだろうという推測が、
今回の美術館訪問の後に頭の中を巡ったことです。