裏見の滝は、栃木県日光市安良沢にある荒沢滝。落差は45m、幅釣2mと規模はそれほど大きくはない滝であるが、滝の裏から落水の様子が見られたことから、「裏見の滝」と称され、日光では「華厳の滝」「霧降の滝」と並ぶ名滝であった。明治35年(1902)9月28日の暴風雨で滝口の岩が崩壊し、滝口が数メートル後に移動してしまったために、滝の裏を行く通路がせばまり、現在は通行が禁止となっている。本シリーズ中の滝は「美濃 養老ノ滝」にも通じるが、いずれも壮大なものとなっている。画面の下部に霞をたなびかせることで、さらに下にあるような印象を受け、滝壷がどこにあるのかわからない程である。菅笠を被った旅の人物が3人描かれ、滝を裏から見る奇観に驚き見入る様子が、小さいながらも細かく描かれているのが広重らしい。
「厳島」と「宮島」という呼称の使い分けについては、明確な決まりはない。
日本三景のひとつ、世界遺産にも登録された安芸厳島神社の管絃祭を描いたもので管絃祭が行われる旧暦六月十七日で夏の盛りのお祭りである。
『芸州厳島図会』巻之五の六月の項に次の記載がある。
「十七日夜船管絃 十六日の夜 御船三艘を御池にならべ座をつらね、竹にて籬を結ひ屋形を作り、さまざまの彩花燈籠を懸く、これを御船組といふ。十七日申の尅大鳥居の正面より乗り出す。諸祀官座主供僧各装束をなし御船に候す。水主十四人烏帽子素袍袴にてその行儀最厳重なり。是を御船泛といふ。この夜府下より御供船とて百余艘をいだし、其粧甚壮観にして舌端筆頭の尽すべきにあらず、(中略)実に海西の大祭当社の勝事なり」