切り絵

浮世絵を切り絵に

広重 富士三十六景 東都駿河町 

2014年12月26日 | Weblog

東都駿河町」  (東京都中央区日本橋室町)

駿河町(かつて東京に有った町名)は、通りの真正面に富士山が見えることから、富士山のお膝元である駿河国にちなんで付けられた地名であった。井桁に三の商標と「ゑちこや」の文字を染め抜いた藍色の長暖簾を下げるのは、駿河町の大店・越後屋(三越百貨店の前身)である。駿河町を描く際の典型的な構図を避け、通りの右側だけを切り取り、正月の情景を展開させた。注連飾りと門松が飾られた越後屋の店の前を、新年を言祝ぐ門付芸人たちが歩いている。編笠を被って三味線を弾き鳥追歌を唄う鳥追、烏帽子に大紋のいでたちの三河万歳、笛と太鼓を鳴らす太神楽。その賑わいに富士も隠れ気味で脇役となっている。

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名所江戸百景 目黒太鼓橋夕日の岡

2014年12月16日 | Weblog

「目黒太鼓橋夕日の岡」

現在の目黒区下目異にあたる景色である。行人坂を下って目黒川に架かる橋が太鼓橋で、橋上には雪中を行く人々が描かれる。橋の北側の台地は、俗に「夕日の岡」とも称された景勝地で、かつて夕日に映える紅葉が見事であったことからこう云われた。しかし広重はあえて雪景とし、紅葉の紅・夕日の紅に象徴される暖色のイメージを覆し、寒色系の色調にまとめている。目黒不動尊にも程近く、参道に沿ってたくさんの店が軒を連ね、にぎわいを見せた。江戸にはめずらしいアーチ形の石橋を印象深く事前に配している。東詰めに江戸時代から200年以上続く老舗「太鼓鰻屋」があり、当時の面影を残している。

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国芳 忠臣蔵十一段目夜討之図

2014年12月09日 | Weblog

忠臣蔵十一段目夜討之図」 (東京都墨田区両国)

「仮名手本忠臣蔵」十一段目の討ち入りを描いた作品。遠近法を取り入れたこの作品は、オランダで刊行された『東西海陸紀行』の中に収録されている銅版画の挿絵を下敷きにして描かれたものであることが最近の研究でわかった。高師直の屋敷に潜入する緊迫のシーンですが、犬を手なずける浪士の姿は、微笑ましく感じられる。

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六十余州名所図会 豊前羅漢寺下道

2014年12月04日 | Weblog

豊前羅漢寺下道」 (大分県中津市本耶馬溪町)

九州の東北部に位置する豊前国は、奇勝として最も喧伝される耶馬渓のあることで著名である。耶馬渓の一つ樋田曾木橋の東に羅漢寺がある。堂宇が岩窟の中にあって、石の五百羅漢がある。ここより十四、五町川下の曾木村に宍道があり、それが図に描かれている。十八世紀中頃、江戸浅草辺の六十六部の禅海が近郷を勧化してつくったものであるという。高さ一丈、横九尺で所々あかりとりの窓をつけている。ここを通るのに一人につき四文、牛馬には八文取ったという。山嶺は草木の育ちがあまりよくなかったようで広重はこの奇景を中央に、此岸に一人の旅憎を点描して、彼岸の旅人と対応させつつ、画面に変化をつけている。

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