切り絵

浮世絵を切り絵に

国芳 東都名所 佃嶋

2014年04月13日 | Weblog

「佃嶋」

 佃島を、永代橋の橋脚の間から望んだ風景図である。橋脚のみを近景に強調して扱った近代的な視覚もさることながら、水面を行く小舟を後方から写した立体的表現は、国芳独特の感覚に基づくものである。舟べりを押さえて、横揺れにそなえる芸妓の姿が自然で、後ろ向きの浴衣の女性が夏を感じる。橋の上から撒いた紙片は、仏像を摺った川施餓鬼の札であろう。水死者を供養する行事で、この散り舞う紙片が微風の動きを感じさせる。水面にはなお食べかけの西瓜や小桶が漂い、国芳の斬新な近代的視覚を如実にうかがい知らせる。

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広重 名所江戸百景 吾妻橋金龍山遠望 

2014年04月04日 | Weblog

吾妻橋金龍山遠望」  (東京都墨田区吾妻橋

春風に舞う桜の花びらがはらはらと、船と水面にと降り積もる。吾妻橋は安永3年(1774)の架橋で、隅田川に架かる四大橋のなかではもっとも新しい。花見に興じた一行が、今戸橋あたりの料亭へと繰り出すところであろうか。屋根船には複数の客が乗っているはずだが、画面には芸者とおぼしき女性の背中と後ろ髪がわずかに見えるのみである。洒落た着物と華やかな鼈甲簪などから、この女性の洗練された容貌まで連想できそうだ。手前に船を大きく配し、それを越した向こう岸に、富士山と浅草寺の五重塔を「遠望」する構図である。

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