切り絵

浮世絵を切り絵に

広重 近江八景 矢橋帰帆

2017年01月30日 | Weblog

「矢橋帰帆」

近江八景とは、琵琶湖周辺の代表的な名勝8カ所を選んだもの。その選定には、中国湖南省洞庭湖(どうていこ)付近の名勝・瀟湘(しょうしょう)八景が参照されている。室町時代には、その瀟湘八景をもとにさまざまな日本の風景が漢詩に詠まれたが、現行の近江八景が登場するのは、江戸時代の初め頃。以後、屏風絵や版画の題材として流行った。

近江八景のひとつ、矢橋帰帆は、琵琶湖南部にあった矢橋港に帰ってくる舟を描写したものだ。大津から東へ旅するにあたって、瀬田の唐橋を渡るのは陸路になるが、天候さえ良ければ大津から矢橋へ舟で渡るほうが早かった様だ。かつて湖東地方でとれた近江米の出荷地として栄えた矢橋港は、往時は二百艘近い船が行き来したという。白い帆を連ねて港に入る船の列が、ゆったりとした時間の流れを感じさせる。

「真帆かけて矢橋にかかる舟はいまうち出のはまをあとの追風うち出の浜は大津港である」

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名所江戸百景 虎の門外あふひ坂

2017年01月14日 | Weblog

「虎の門外あふひ坂」

虎の門から赤坂に向かう坂を葵坂という。夜のしじまのなか、下帯姿で提灯を持ち歩く親子は金毘羅社への寒参りの最中である。先頭を切って歩く元気な親子に対し、いささか寒そうな人達の姿が好対照をなしている。堀沿いには屋台の蕎麦屋、通称二八蕎麦が描かれる。江戸時代の市中の画にはしばしば野良犬が登場する。

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広重 名所江戸百景 霞かせき

2017年01月01日 | Weblog

霞かせき

現在の国会議事堂前の坂で、古代には同名の関所が置かれていた。霞ケ閑の坂道の南側(画面右)には福岡藩主黒田家の上屋敷、北側(画面左)には広島藩主浅野家の上屋敷があった。両家は江戸開府以来、この地に広大な屋敷を持ち続けた。通りには新春を祝うさまざまな人がおり、中央には太神楽の一行が描かれる。太神楽とは伊勢神宮に奉納する神楽のことで、江戸市中では獅子舞や正月の厄除けなどを行なつた。その左方には、萬歳の姿も見える。正月らしく、多くの凧があがっているが、手前の凧には版元魚栄の「魚」の文字を配している。

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