切り絵

浮世絵を切り絵に

広重 江戸名所百景 芝愛宕山 

2016年01月27日 | Weblog

芝愛宕山」  (東京都港区愛宕

右手に大きなしゃもじ、左手にすりこぎを持った人物は、落款部分に「正月三日毘沙門使」とあるように、愛宕神社の強飯式の中心人物である。強飯式は信者に大鉢の飯を食べさせる行事で、毘沙門天の使いと称する者が別当寺の真言宗円福寺に赴き、儀式を行なつた。図は、その行事のあとに六八段もあったという男坂を上り終えた場面である。仏教の四天王でもあり、愛宕山の地主神でもある毘沙門天になぞらえ、使者は頭に橙などの飾りをつけた兜ふうの笊をかぶっている。高台に位置するため、ここからは江戸湾を一望できた。

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六十余州名所図会 出雲大社ほとほとの図

2016年01月10日 | Weblog

出雲大社ほとほとの図」  (島根県出雲市大社町)

「ほとほと」とは、小正月には尊い神が人々に祝福を与えるために来訪するという信仰から興った行事で、正月14日の夜に顔を隠した若い人が各戸を尋ね、供物を受け取って帰るというもの。中国地方を中心に行われたようであるが現在では秋田の「なまはげ」の類似の行事として知られている。広重が出雲大社のほとほとの行事を描いたことは容易に想像つくが、実際にこのような行事があったかどうかは解っていない。女性たちがそれぞれ手に持っているのは家々で飾っていた注連飾りであろうか、小正月を祝う行事の華やいだ様子を伝えている。近景の杉と3人の女性がはっきりと描かれる一方、背後の松や杉、先を行く2人の女性や鳥居などが靄で霞んで描かれ、出雲大社の幽玄とした雰囲気を効果的に伝えている。

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