近研ブログ

國學院大學近代日本文学研究会のブログです。
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6月4日「屋根裏の散歩者」読書会

2012-06-11 13:51:49 | Weblog
非常に遅くなりましたが、6月4日の例会では「屋根裏の散歩者」読書会をおこないました。司会は神戸が務めさせていただきました。

今回焦点となった部分は2つありました。

一つ目は「なぜ三郎は殺人を犯した後、遊びを面白く感じるようになったか」という部分です。
ここは「明智に勝った充足感」「自己顕示欲がみたされた」「殺人者として身を潜める快楽にひっている」などの意見が出ました。

二つ目としては「明智による罪の発覚はないのにどうして“法律上の罪人”になることを恐れた三郎が自首するのか(死刑になることを考えているのか)」ということが主題になって議論が行われました。
こちらでは「快楽の喪失によって死を望んだから」という意見が出ましたが、「あえて死刑を考える理由があるはずだ」という意見があり、そこから「秘密をもつ快楽から犯罪者である自分をさらす快楽にうつった」「犯罪が発覚する前は自分であって自分でない個(犯人)へのまなざしであったが、犯罪が発覚することによって自分自身(犯人である三郎)へのまなざしに変化する。それを三郎は望んだのではないか」「三郎は童心にかえっており、自白を考えたのでは」などの意見が出ました。
この問題については石井先輩から「三郎は明智に心理を操作されたのではないか」という意見を戴きました。

また岡崎先生・石井先輩には、舞台となった「東栄館」は当時最新鋭の建物。その構造だからこそ行うことが出来た三郎の犯罪であり、その構造の特殊性は重要視すべき所であること。また1920年代の東京の都市化など、当時の時代背景なども調べて挑めばよりよい例会になるというご指導などもいただきました。
また「郷田三郎」が“都会の高等遊民のなれのはて”であり、その人間性を探れば人との関わりを持てない(持っていない)、都市が生み出した特殊な人間であること、そういった人間が犯罪を犯すことによって、人(明智)と濃密な関係をもつことができた物語であるという一つの読み提示もしていただき大変勉強になりました。

他にも指導としては新入生が増えたこともあり、先行論を読むだけではなく、同作家の同時代に書いた作品をいくつか読んでくることによって、新たな発見があること。また例会に参加する者として司会者・発表者に負けないくらい、その作品・作者について知識を深めることなど、例会に参加する心構えなども御教授いただきました。


以上2年の神戸でした。
本当に遅くなってすいません。




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