近研ブログ

國學院大學近代日本文学研究会のブログです。
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平成28年度 春期合宿報告 沼津・三島

2017-03-12 11:06:53 | Weblog
こんにちは 今年度の春期合宿委員を務めさせていただきました、2年吉野です。
3月9日・10日に行われました平成28年度春期合宿についての報告をさせていただきます。今回の合宿地には、静岡県三島・沼津周辺が選ばれました。
井上靖が幼少時代を過ごし、「作家・太宰治」の誕生の地とも言われる土地です。

 また今回も、簡単ではありますが、しおりにコラムを1ページ書かせていただきました。別の記事にて紹介させていただきます。

【1日目】
 東京駅という複雑な場所での待ち合わせにも関わらず、ほとんどの会員が10分前には集合し、時間通りに無事新幹線のホームへ移動できました。
行きは三島駅まで新幹線こだまを利用しましたが、1時間足らずで三島に到着しました。
 青空の下、桜川沿いに文学碑の並ぶ「水辺の文学碑(水上通り)」を通って三嶋大社へ行きました。
文学碑には近世から現代の、三島が登場する文学作品の一節が刻まれています。
近代文学作品だと、太宰治の「老ハイデルベルヒ」井上靖「少年」などがありました。
 三嶋大社で記念写真を撮り、お参りを済ませてから宝物庫を見学しました。国宝「梅蒔絵手箱」の復元品や、刀剣類・文書などの色々な種類の歴史的文化財が展示されており、興味深く拝見しました。見学後は神社で飼育されている鹿と戯れたりしました。同敷地内で開催されていた陶器市に行った会員もいたようです。
 昼食は三島駅に隣接している「魚がし鮨」でお寿司という贅沢なメニューでした。漁港が近いこともあり寿司ネタが一貫一貫大きくて、とても食べ応えがありました。
 昼食後はバスに乗って、井上靖文学館へ向かいました。緑に囲まれた中の立派な建物で、入り口に続く階段の前には井上靖の銅像もたっておりました。
この文学館は、井上靖66歳の年に開館しました。存命中の文学館として話題になり、井上靖も足しげく訪れたそうです。企画展は「真田軍記」展でした。直筆原稿や沼津での学生時代の写真はもちろん、小説の題材になった事柄の紹介なども幅広く展示されておりました。その後同敷地内にあるカフェで一休みしました。

 今回の宿泊先の「かどや旅館」でもおいしい魚介が中心の夕食をいただいたあと、読書会を行いました。
 作品は、太宰治「ロマネスク」です。太宰の処女創作集「晩年」の収録作品であり、来年度前期のテーマである「出発点の作品」を一足先に扱ったことにもなりました。作中の「喧嘩屋次郎兵衛」のモデルは、太宰の三島・沼津滞在時の生活や執筆活動を支援した坂部武郎だとも言われています。
 読書会では「仙術太郎」「喧嘩屋次郎兵衛」「嘘の三郎」三篇それぞれの語られ方の違いやフォークロアを題材とした上での発展のさせ方、また虚構やでたらめという意味を持つ「ロマネスク」というタイトルとの関わりなどが話題に挙がりました。中でも後半に話題に上った「仙術太郎」最後の一段落に着目した「仙術太郎」から「喧嘩屋次郎兵衛」への接続の仕方の考察は興味深かったです。岡崎先生からは、フォークロアを題材とした上であえて一面的な語りをしたりしたうえでの自然主義批判も読み取ることができるのではないか、などの意見を頂きました。
 今年度は例会でも「走れメロス」「富嶽百景」「秋風記」と太宰作品を沢山取り扱った一年でした。そんな年度の最後に太宰のストーリーテラーとしての力量を改めて確認した読書会でもありました。
 読書会のあとは、懇親会を行いました。一年生から四年生まで、学年の垣根を越えた交流ができたと思います。

【2日目】
 2日目は、旅館でしじみ汁などのおいしい朝食を食べたあと、沼津港と沼津深海水族館・シーラカンスミュージアムへ行きました。
沼津港のある駿河湾は日本で一番深い湾で、底曳き網漁などが盛んに行われているので深海生物も頻繁に水揚げされます。そこで採集された深海生物や、世界でも数体しか存在しないシーラカンスの冷凍標本を展示しているのが沼津深海水族館・シーラカンスミュージアムです。まだ長期飼育方法が確立していないメンダコも見ることができました。出発時は雲がかかっていた富士山も、沼津港では頂上まできれいに見ることができました。
昼食は沼津港の敷地内にある「浜焼きしんちゃん」でした。ここは海の幸(もちろん深海魚)を備え付けの鉄板で自分で焼くことができます。初めてで焼き加減が難しかったりもしましたが、楽しく・美味しくいただきました。
 昼食後は沼津港から徒歩で15分ほどの、沼津若山牧水記念館へ行きました。沼津は牧水の晩年を過ごした土地です。時代ごとの写真や直筆の原稿、妻貴志子の紹介や沼津宅の書斎を再現した展示がなされており、より牧水を身近に感じることができます。愛用の盃や酒に関する歌の掛け軸が展示されている「牧水と酒」のコーナーは、この歌人ならではのものですね。
 その後沼津駅まで戻り、珍しい形式で有名(回転寿司のレールのように水が流れており、桶に載って品物が運ばれてくる)な喫茶店「どんぐり」で一休みした後東京へ帰り、合宿は終了しました。

 私たち2年生が合宿委員最上級生として企画した初めての合宿でした。気の回らなさや不手際など個人的には反省の多い合宿でしたが、それでも楽しい思い出となりました。会員の皆様(全員参加してくださった四年生にとってはもちろん最後の合宿です)にとってもいい思い出となったら嬉しいです。

来年度はいよいよ幹事学年です。普段の活動も勿論ですが、合宿委員としても今回の反省を踏まえて頑張ります。

最後になってしまいましたが、先生・参加してくださった会員の皆様・他の合宿委員2人の協力で合宿を無事終えることができました。本当にありがとうございました!


牧水記念館の裏手から

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