1月21日の例会では、卒業論文最終報告会を行いました。
題は「夏目漱石「それから」論―〈自然〉が導くもの―」で、発表者は藤野先輩、司会は今井でした。
論の大まかな流れを述べさせていただきます。
現在の代助には三千代への愛と、日本の封建制度的家との関係が深く影響しており、今後も代助はこれら2点について変化していくと考えられる。
代助をこのように変容させたのは〈自然〉であり、〈自然〉には2種類ある。1つは意識的に働く〈自然〉。これによって代助の中にあった三千代への恋愛感情が揺り起こされ、それまでになかった家への明確な抵抗を示し、三千代への告白に至る。もう1つは無意識的に働く〈自然〉。これによって代助は自己の生き方を省みることになり、次男という立場から他者を扶養することの出来る家長という立場を獲得したいと思うようになる。
また、〈赤〉は確かに代助を苦難へ導く色かも知れないが、それまでの生き方を捨て新たに生きる再生のシンボルカラーとなっていくのではないか。
結論としては、三千代と、代助の家との関係とは密接に絡み合い影響を及ぼしあう。これらの〈自然〉は代助を家との絶縁と三千代の病状悪化へと導く。しかしこれは仕方のないことで、〈趣味の人〉から〈実生活の人〉になるというのは困難が大きい。それを可能にするのが三千代への愛と言う意識的〈自然〉とその先の結婚、そして家長になろうという無意識的〈自然〉であり、〈赤〉というシンボルカラーだったのではないか。
質問が集中したのは発表者の考える作品における〈自然〉の定義についてで、発表者はこれに対して立場を求める流れ、それに導くようなものという応答をしました。しかし、発表者自身〈自然〉の定義づけには曖昧なところがあったようで、論の中でキーワードとして使用する概念の定義はしっかりとして、抽象的ならば他の言葉で代替可能なのかどうかを検討する必要があるというご指摘をいただきました。
他には、概略ということだったのですが先行論のどの問題意識を引き継いでいるのか、自分の論の独自性は何なのか、先行論史の中での位置づけはどこになるのかなどを示すために先行論を紹介する重要性をご指摘いただきました。また、本文の中から解釈の根拠を挙げること、色彩について論じるなら同作家の色の使用方法に関する研究成果を踏まえることなど、今後の私達の研究にとっても勉強になるアドバイスをいただきました。
次回の活動は2月の勉強会です。
では、失礼します。
2年 今井
題は「夏目漱石「それから」論―〈自然〉が導くもの―」で、発表者は藤野先輩、司会は今井でした。
論の大まかな流れを述べさせていただきます。
現在の代助には三千代への愛と、日本の封建制度的家との関係が深く影響しており、今後も代助はこれら2点について変化していくと考えられる。
代助をこのように変容させたのは〈自然〉であり、〈自然〉には2種類ある。1つは意識的に働く〈自然〉。これによって代助の中にあった三千代への恋愛感情が揺り起こされ、それまでになかった家への明確な抵抗を示し、三千代への告白に至る。もう1つは無意識的に働く〈自然〉。これによって代助は自己の生き方を省みることになり、次男という立場から他者を扶養することの出来る家長という立場を獲得したいと思うようになる。
また、〈赤〉は確かに代助を苦難へ導く色かも知れないが、それまでの生き方を捨て新たに生きる再生のシンボルカラーとなっていくのではないか。
結論としては、三千代と、代助の家との関係とは密接に絡み合い影響を及ぼしあう。これらの〈自然〉は代助を家との絶縁と三千代の病状悪化へと導く。しかしこれは仕方のないことで、〈趣味の人〉から〈実生活の人〉になるというのは困難が大きい。それを可能にするのが三千代への愛と言う意識的〈自然〉とその先の結婚、そして家長になろうという無意識的〈自然〉であり、〈赤〉というシンボルカラーだったのではないか。
質問が集中したのは発表者の考える作品における〈自然〉の定義についてで、発表者はこれに対して立場を求める流れ、それに導くようなものという応答をしました。しかし、発表者自身〈自然〉の定義づけには曖昧なところがあったようで、論の中でキーワードとして使用する概念の定義はしっかりとして、抽象的ならば他の言葉で代替可能なのかどうかを検討する必要があるというご指摘をいただきました。
他には、概略ということだったのですが先行論のどの問題意識を引き継いでいるのか、自分の論の独自性は何なのか、先行論史の中での位置づけはどこになるのかなどを示すために先行論を紹介する重要性をご指摘いただきました。また、本文の中から解釈の根拠を挙げること、色彩について論じるなら同作家の色の使用方法に関する研究成果を踏まえることなど、今後の私達の研究にとっても勉強になるアドバイスをいただきました。
次回の活動は2月の勉強会です。
では、失礼します。
2年 今井