近研ブログ

國學院大學近代日本文学研究会のブログです。
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谷崎潤一郎「母を恋ふる記」卒業論文報告会・原民喜「鎮魂歌」修士論文報告会

2012-01-21 16:30:45 | Weblog
1月16日に西村先輩の卒業論文報告会と、西山先輩の修士論文発表報告会を行いました。司会は藤野で行いました。


西山先輩の修士論文報告では、「原民喜「鎮魂歌論」」をどのように書かれたのかをご説明いただきました。
「原爆以後」という原爆を受けた後の人間の姿を描いた作品群の中である「鎮魂歌」が書かれる前と、「鎮魂歌」が書かれた後の作品で、がどのように書かれたのかということを、「鎮魂歌」論をその間に挿み、「原爆以後」という作品群の中での「鎮魂歌」がどんな位置にあるのかが論じられおりました。
修士論文を書かれた反省・感想として、資料は自分の眼で確かめ、出来る限り現物に当たる。「不明」とされる資料も諦めない、ということを挙げられていました。先輩は「不明」とされている資料にも当たり、「不明」とされていた資料を探すことができたとおっしゃっておりました。

既成のデータベースにあるものだけを頼るのではなく、実際に目録カードを使って検索することも大切だということを教えていただきました。


西村先輩の卒業論文報告では、谷崎潤一郎「母を恋ふる記」を視覚・聴覚に着目し、論じられたものでした。視覚としての光は、アーク燈と民家の光は意図的に灯された人工的な光で、現実を表わしたものであり、月の光は自然の光で、理想と憧れを照らし出すものとして対比されている。それは生活に根差す実体の世界から抜け出す契機を獲得するものであると論じられており、作品の中で象徴的に使われる白という色と音によって、この作品の「私」が求める母像(理想の母)の確立を一貫して求めるテーマからなっており、描かれている感覚はそこに結びつく重要な作用を持っている。この点で、「母を恋ふる記」は谷崎の母恋いものの出発点としてふさわしい作品であるといえる、という結論で論じられておりました。

西村先輩には、卒業論文の書く上での必要なせんこうし先行論文の挙げ方や、作品を選ぶ際の注意などを教えていただきました。


最後に岡崎先生からは、これから卒業論文を書く学部生に対して、卒業論文で扱う作品には研究の難しさで選ぶよりは、自分の興味のある作品を選んだほうがいいとのご指導をいただきました。


今回、先輩方の卒業論文・修士論文報告会で先輩方に書かれたことや、その注意点などを教えていただきました。自分も来年度は四年生になりますので、研究会で学んだことを活かし、卒業論文を書いていきたいと思いました。


次回の例会は、森鴎外「舞姫」・吉行準之助「星と月は天の穴」の卒業論文報告会を行います。