近研ブログ

國學院大學近代日本文学研究会のブログです。
会の様子や文学的な話題をお届けします。

吉行淳之介「童謡」研究発表(一週目)

2013-12-07 03:46:05 | Weblog
おはようございます。
12月2日(月)に行われた吉行淳之介「童謡」研究発表(一週目)について報告させていただきます。
発表者は、3年今井さん、2年松尾さん、1年石川さんで、司会は1年櫻井が務めさせていただきました。
今回の作品は、第三の新人の一人である吉行が昭和36年に「群像」に発表した、二つの童謡が作中に登場する寓話性の強い短編です。

では、「少年の変容」という副題のもと行われた今回の研究発表の内容をおおまかに述べさせていただきます。

先行論には、「少年がどのように変容し成長したのか」「『自分の内部から欠落していったもの、そして新たに付け加わってまだはっきり形の分らぬもの』とはなんなのか」という論点が多かったのですが、今回の発表では、少年の変容の過程を詳しく分析していただきました。
発表者さんが先行論の一つ一つを非常に丹念に読み込んで発表に臨んでいたのが印象的でした。

本文検討、また童謡の内容と物語の比較を通して、少年期から青年期へと、肉体(体重の増減、身体能力の変化)・精神(友人・少女・医師の捉え方)ともに、違和感を覚えつつも変容・移行していく主人公の姿を丁寧に解き明かしていただきました。

学部生、また岡崎先生からは、
・友人を「子供ゆえの無邪気さ」として悪意なき者として捉えるのは適切か?
・奇怪な少年の姿を目撃してしまった少女は、そのときどう思ったのか?
・間延びした感じを与え、また途中で雰囲気をかえる文章をどう捉えるか?
・「生きている人間の世界からずり落ちる」という表現は何を示すのか?
などの疑問点を出していただきました。
議論が難航したときに考えの道筋を示してくださった岡崎先生には、司会者として非常に感謝いたしております。

次回、12月9日(月)は同じメンバーで二週目の研究発表です。
今回発表の課題・手ごたえを受けてどのような発表になるのか期待しております。

それでは、失礼いたします。

1年 櫻井