近研ブログ

國學院大學近代日本文学研究会のブログです。
会の様子や文学的な話題をお届けします。

4/13芥川龍之介「羅生門」読書会

2015-04-20 11:10:48 | Weblog
こんにちは。
4月13日に行われました芥川龍之介「羅生門」の読書会の模様についてお伝えしようと思います。
司会はわたくし、石川でした。

新年度最初の読書会ということで、当日は新入生の方をはじめ、多くの方に見学に来ていただきました。
おかげで積極的な議論が繰り広げられました。
参加していただいた方、ありがとうございます。

読書会では、テクスト内に登場する「作者」に関して、言葉遣いや価値観から「下人」たちの物語と距離があるという指摘や、生と死、善と悪など境界の観点に基づき羅生門という舞台が設定されているという指摘がありました。
また面皰といった身体的特徴や持ち物である太刀が、「下人」にとってどのような意味を持つのかの議論も交わされました。
それに伴って、「下人」は子どもと大人の狭間にある存在だという意見などが見受けられました。
加えて、「羅生門」は「下人」が語り手以外の他者=老婆の論理を借り、最終的に語り手の範疇から脱していく物語だという分析も行われました。

 岡崎先生からは、「作者」が書き込まれることによって、「作者」の見方は絶対ではないということが現れており、これにより「作者」を相対的に見ることが可能となっているという指摘をいただいた他、「羅生門」は近代の価値観を持つ「作者」によって、既に暇を出されたはずの「男」に「下人」の役割が押し付けられた小説であるとのご意見を頂戴しました。
 またこの「作者」は語りなおしを行うなど、正確でないことも書いてしまう「作者」であり、いかがわしさを感じさせる存在として書かれており、身の危険を感じないところから中古の世界の「下人」たちを俯瞰して語る身勝手さを持ち合わせているとのまとめをいただきました。


今回は新歓期間中ということで、教科書などでもなじみの深い「羅生門」を取り上げました。
見学の方々にも多くの意見を頂戴いたしまして、充実した読書会になりました。
少しでも近研の雰囲気が伝われば幸いです。


4月20日(月)は川端康成「片腕」の研究発表です。
研究発表は読書会とはまた違った形式のものですので、今週もぜひ足を運んでいただければと思います。
また先週参加されなかった方も大歓迎ですので、お気軽にお越しください。


3年 石川