近研ブログ

國學院大學近代日本文学研究会のブログです。
会の様子や文学的な話題をお届けします。

久野豊彦「ボール紙の皇帝万歳」第2週目

2009-07-16 23:17:40 | Weblog
今週は久野豊彦の「ボール紙の皇帝万歳」の発表の2週目でした。
「書きたいものが書けない〈僕〉の葛藤」という、前回を踏襲した読みの他に、男女の普遍的な姿と、新しい表現技法というテーマに取り組んでいました。

質問としては、〈配達員〉や〈手紙〉といったキーワードをどう読むのかといったようなものが多かったです。
また、この作品で提示された新しさとはなんなのか、〈僕〉の物語の範囲をどう定義するのかといったような質問もありました。
そのほか、「新しい文学」とはなんなのか、この作品とロシア・アヴァンギャルドはどのように関わっていくのかといった質問がでました。

とても難しい作品で、発表者の方も聞き手であるほかの会員も、大変苦労した発表でした。

前期の発表はこの作品で最後となります。
レポート、テスト、課題などをがんばっていきましょう。
皆様よい夏休みをお過ごし下さい。

久野豊彦「ボール紙の皇帝万歳」発表 一週目

2009-07-08 10:04:41 | Weblog
今週は久野豊彦の「ボール紙の皇帝万歳」の発表でした。
発表者の方は、今まであまり論じられたことのなかったこの作品から、久野の文章表現の方法を読み取ることを目的にして、発表を進めました。
そして、この作品の中から当時の世相(言論統制、ロシア革命など)のパロディや、文章のリズムを特徴としてあげ、その中から「作家」である〈僕〉の葛藤を読み取っていました。

議論としては、それらの技法でいったい何を試みようとしていたのだろうか、物語の逸脱と言い切ってしまっていいのか、何をもってこの作品から新しさを読み取るのかといったような疑問の他、久野が注目していたダグラス経済学との関連性に注目してみる必要もあるのではという意見もでました。

また、先行論をそのまま自分の論に引用することの危険性も指摘されており、これは私たちも気をつけなければならない問題だと感じました。

発表者の方は来週もがんばってください。

「刺繍せられた野菜」2週目

2009-07-01 01:45:22 | Weblog
今週は中河与一の「刺繍せられた野菜」の2週目の発表でした。
発表者の方々は、まず先行研究と中河与一自身の評論を揚げた上で、〈形式が内容を決定する〉ことに注目し、語りの方法を中心に発表をすすめられました。
本文検討では、本文の流れに即して分析を進めていました。
まとめとしては〈夫婦〉の間の距離が近づき、2人の関係性がゆっくりと変化していくものとして表出されることをあげました。そして次に語り手の使う言葉の象徴性を指摘し、このテクストで使われる言葉の意味が限定されたものではないことを述べていました。

議論としては解釈に関する基本的な質問がほとんどでした。
資料に関する指摘としては、レジュメの長さと、作家自身の論文の扱い方があげられました。これらのことは今後研究を進める上で、会員皆が考えなければならない問題だと思います。

来週は久野豊彦の「ボール紙の皇帝万歳」の発表です。毎日雨で憂鬱になるかもしれませんが、元気に過ごしましょう。