近研ブログ

國學院大學近代日本文学研究会のブログです。
会の様子や文学的な話題をお届けします。

田村俊子「生血」勉強会

2013-02-16 10:20:35 | Weblog
2月12日に行った勉強会についてご報告いたします。
今回は田村俊子「生血」の読書会で、司会は今井が務めさせていただきました。


まず論点となったのは、ゆう子による昨晩の回想部分です。ゆう子は昨晩のことが自分の身に起こったことだと受け入れられないため「男」「女」と客観視しているという意見などが出ましたが、先生からこれ以前に昨晩の出来事に対するゆう子の不快感が読み取れるのか、むしろこれ以前のセクシャルな描写からは性の目覚めなどが読み取れる。回想部分は時間差から来る感情の位相差による客観視ではないかというご意見をいただきました。

ゆう子が推量した安藝冶の心内は括弧で括られあたかも安藝冶のセリフのように表現されています。推量された安藝冶の心内はマイナスの表現が多いのですが、ここについては、ゆう子が自分のことを蔑んでいるからではないか、そう自分のことを思っているからこそ出てくる推量ではないかという意見が出ました。

度々出てきて最後の場面で多くなる「男」という人称に関しては、「安藝冶」と称された場合は客観的な動作が多く「男」と称された場合はゆう子の心情が多めであることから、自分の理解が及ばない異性としての安藝冶を意識してきた表われではないか、未知だった「男」としての安藝冶を昨晩で強烈に意識させられたからではないかなどの読みが出されました。先生からは、ゆう子が普遍的な「男」を実感し、納得、受け入れたといえる。最後の場面からもゆう子のそうしたあり方が窺われるというご指摘をいただきました。

次回の活動は春合宿です!読書会で扱うのは太宰治「黄金風景」です。
では、失礼します。

2年 今井