近研ブログ

國學院大學近代日本文学研究会のブログです。
会の様子や文学的な話題をお届けします。

平成29年度前期の活動予定

2017-03-30 01:20:22 | Weblog
こんばんは。
平成29年度近代日本文学研究会幹事の長谷川です。

平成29年度前期の活動予定が決定致しましたのでご報告致します。
テーマは「出発点の文学」です。作家の処女作や習作、文壇に認められる契機となった作品を扱います。
日程は以下の予定です。

04月17日 森鷗外「舞姫」
04月24日 志賀直哉「清兵衛と瓢箪」
05月08日 芥川龍之介「鼻」
05月15日 谷崎潤一郎「刺青」
05月22日 菊池寛「父帰る」
05月29日 吉行淳之介「驟雨」
06月05日 三島由紀夫「花ざかりの森」
06月12日 坂口安吾「木枯の酒倉から」
06月19日 堀辰雄「聖家族」
06月26日 大江健三郎「死者の奢り」
07月03日 石川淳「佳人」
07月10日 樋口一葉「闇桜」
07月17日 横光利一「蠅」
07月24日 井上靖「猟銃」

ご興味をお持ちの方は、是非見学にいらしてください。

詳しくは近代日本文学研究会ホームページをご覧ください。

平成28年度 春期合宿報告 沼津・三島

2017-03-18 00:02:26 | Weblog
こんにちは。
今年度の春期合宿委員を務めさせて頂きました1年浦野です。
遅くなってしまいましたが、平成28年度春期合宿の御報告をさせて頂きます。
今回は3月9~10日の一泊二日で静岡県の三島・沼津周辺に行って参りました。井上靖や太宰治、若山牧水など多くの作家にゆかりのある場所です。

まず初日は東京駅の銀の鈴前で集合し新幹線で三島へ向かいました。委員の先輩方の入念な下調べと会員の皆様の余裕ある集合のお陰で難解な東京駅構内もスムーズに移動することが出来ました。
三島に着いて最初に向かったのは三嶋大社です。桜川に沿って徒歩で移動したのですが、川沿いの各家の前に一本ずつ架かっている橋と立ち並ぶ花壇に文学碑と、歩くだけで楽しい道のりでした。ちなみに文学碑には正岡子規、若山牧水「箱根と富士」、司馬遼太郎「裾野の水、三島一泊二日の記」、太宰治「老ハイデルベルヒ」、井上靖「少年」などの引用があり、この地と文学との関わりの深さが窺われました。
三嶋大社では参拝をして全員で集合写真を撮った後宝物館を見学し、しばし自由時間となりました。宝物館では北条政子が奉納したと伝えられる蒔絵の手箱や数振りの刀剣、三十六歌仙の図像を刺繍で描いた絵額など非常に貴重で美しい展示を数多く拝見致しました。三嶋大社の境内はとても広く、会員はそれぞれ立派な鯉が沢山いる池や神鹿園など思い思いに散策しました。また、丁度この日は境内で陶器市が開催されており、旅の思い出として作品を買い求めた会員もおりました。私は神社の周囲も少し拝見しましたが、残念ながら「ロマネスク」に登場する喧嘩次郎兵衞が傘を借りた居酒屋や修行に使った水車は見つけられませんでした。
その後三島駅に戻って「魚がし鮨」で昼食に頂いたお寿司はどれもネタが大きくてとても豪華な食べ応えでした。
午後に向かったクレマチスの丘では最初に井上靖文学館へ行き、集合写真を撮ってから長めの自由時間を各自楽しみました。
ここは丘陵を拓いた広い土地に美術館や文学館、レストランなどが点在する森林公園のような施設で、空気も良く非常に気持ちの良い場所でした。
井上靖文学館では井上靖の学生時代の写真やゆかりの品の他に、この日開催中だった特別展「真田軍記」展に際してその執筆資料や戦国時代を舞台とした他の井上作品との関連についての展示が見られました。

再び三島駅に戻った我々は電車で一駅、沼津に移動し今回の宿泊先である「かどや旅館」に到着し1日目の旅程を終了しました。
夕食の後は恒例の読書会を行いました。今回扱った作品は太宰治の「ロマネスク」です。
本作は「仙術太郎」「喧嘩次郎兵衞」「嘘の三郎」の三篇からなるオムニバス形式で、「喧嘩次郎兵衞」の舞台が今回の合宿地である三島の町となっています。作中には三嶋大社も登場し、実際に今も行われている例祭に関する詳細な言及など太宰がこの地に滞在した跡の見える描写が多く見られます。
会では三篇に見られる語りの差異やフォークロア的な作品世界とそこに散見される近代的な名詞に関する考察など様々な視点からの活発な議論が行われました。特に「仙術太郎」の結びの一文から次の「喧嘩次郎兵衞」への接続の効果や、岡崎先生から伺った三人の主人公に対する周囲の認識や各篇の末文に見られる意味の揺らぎと自然主義や私小説に対する批判についての御考察は非常に興味深いものでした。
読書会の後に行われた懇親会でも先輩方から貴重なアドバイスを頂いたり同学年他学年を問わずにお話したりと楽しく有意義な時間が過ごせました。

2日目は旅館で朝ごはんを頂いてから沼津港へ向かいました。沼津港周辺には漁港や市場だけではなく展望台を備えた日本最大級の水門や深海生物をメインに展示する水族館などがあり、観光スポットとしても非常に充実していました。
ここでは全員で沼津港深海水族館・シーラカンスミュージアムに入り昼食まで自由行動となりました。
深海水族館は先程も述べた通り深海をテーマにした日本でも珍しい水族館で、特に沼津港の面する駿河湾に関する展示が豊富です。また、冷凍された本物のシーラカンスの展示もこちらの大きな特徴です。冷凍個体を含めた五体のシーラカンスが展示されており、解説もとても詳しく分かりやすかったです。他にもハリモグラやアフリカの大きなゴキブリなど珍しい生き物を沢山見ることが出来ました。
2日目の昼食は深海水族館のすぐ近くにある「浜焼きしんちゃん」で頂きました。大ボリュームの魚介を自分の手で焼いて頂く楽しい昼食でした。
沼津港を出た後は15分程歩いて沼津若山牧水記念館に行きました。道中から立派な松が多い土地だと思っておりましたが、記念館の庭園は特に美しい緑が青空と遠くに見える富士山に映えてとても良い景色でした。
こちらでは牧水の愛用した品や美しい柄の入った直筆の短冊などを近くから拝見することが出来ました。酒好きだった牧水らしくお酒にまつわる展示も多く、親しみの湧くものでした。
記念館を出た後は沼津駅へ戻り再び自由時間になりました。
私は先輩方と一緒に「喫茶どんぐり」へ行きました。こちらはお店の中央にある大きなテーブルに水が流れていて、そこに浮かぶ桶に乗って注文したメニューがやってくると言うとても珍しくて面白いお店です。各席にあるメニューを届ける目印が東海道の駅名になっていて芸の細かさと地方色を感じました。
そして沼津駅に再集合して三島駅から東京駅行きの新幹線に乗り、今回の合宿は終了しました。

私は合宿委員を務めるのは今回が初めてで不手際や気の回らない所も多々あり反省しきりでしたが、委員の先輩方の御采配や会員の皆様のご協力によって合宿は無事に楽しい思い出となりました。今回の合宿に参加して下さった皆様にとってもそうであると嬉しく思います。本当にありがとうございました。

来年度は二年生として後輩のお手本となれるように、また引き続き先輩方のお役に立てるように今回の合宿での教訓や今年度の活動で学んだことを活かして近研の活動に励みたいと思います。
末筆となってしまいましたが、今回の合宿に参加して下さった先生、会員の皆様、合宿委員の先輩方のお陰で無事に平成28年度春期合宿を終えることが出来ました。改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。

拙文ながら以上で御報告を終了させて頂きます。

平成28年度春期合宿 コラム

2017-03-12 11:28:31 | Weblog
こんにちは 今回の合宿委員を務めさせていただきました、2年吉野です。

前回の夏期合宿に引き続き、今回もしおりにコラムを掲載させていただきました。
1ページだけではありますが、ここに紹介させていただきます。




コラムを読むことで会員も作品や作家、行き先の土地に対する理解が深まります。しかしそれ以上に作成する合宿委員にとって、より深く学ぶいい機会になったと思います。
来年度もしおり掲載のコラムは継続していきたいです。

平成28年度 春期合宿報告 沼津・三島

2017-03-12 11:06:53 | Weblog
こんにちは 今年度の春期合宿委員を務めさせていただきました、2年吉野です。
3月9日・10日に行われました平成28年度春期合宿についての報告をさせていただきます。今回の合宿地には、静岡県三島・沼津周辺が選ばれました。
井上靖が幼少時代を過ごし、「作家・太宰治」の誕生の地とも言われる土地です。

 また今回も、簡単ではありますが、しおりにコラムを1ページ書かせていただきました。別の記事にて紹介させていただきます。

【1日目】
 東京駅という複雑な場所での待ち合わせにも関わらず、ほとんどの会員が10分前には集合し、時間通りに無事新幹線のホームへ移動できました。
行きは三島駅まで新幹線こだまを利用しましたが、1時間足らずで三島に到着しました。
 青空の下、桜川沿いに文学碑の並ぶ「水辺の文学碑(水上通り)」を通って三嶋大社へ行きました。
文学碑には近世から現代の、三島が登場する文学作品の一節が刻まれています。
近代文学作品だと、太宰治の「老ハイデルベルヒ」井上靖「少年」などがありました。
 三嶋大社で記念写真を撮り、お参りを済ませてから宝物庫を見学しました。国宝「梅蒔絵手箱」の復元品や、刀剣類・文書などの色々な種類の歴史的文化財が展示されており、興味深く拝見しました。見学後は神社で飼育されている鹿と戯れたりしました。同敷地内で開催されていた陶器市に行った会員もいたようです。
 昼食は三島駅に隣接している「魚がし鮨」でお寿司という贅沢なメニューでした。漁港が近いこともあり寿司ネタが一貫一貫大きくて、とても食べ応えがありました。
 昼食後はバスに乗って、井上靖文学館へ向かいました。緑に囲まれた中の立派な建物で、入り口に続く階段の前には井上靖の銅像もたっておりました。
この文学館は、井上靖66歳の年に開館しました。存命中の文学館として話題になり、井上靖も足しげく訪れたそうです。企画展は「真田軍記」展でした。直筆原稿や沼津での学生時代の写真はもちろん、小説の題材になった事柄の紹介なども幅広く展示されておりました。その後同敷地内にあるカフェで一休みしました。

 今回の宿泊先の「かどや旅館」でもおいしい魚介が中心の夕食をいただいたあと、読書会を行いました。
 作品は、太宰治「ロマネスク」です。太宰の処女創作集「晩年」の収録作品であり、来年度前期のテーマである「出発点の作品」を一足先に扱ったことにもなりました。作中の「喧嘩屋次郎兵衛」のモデルは、太宰の三島・沼津滞在時の生活や執筆活動を支援した坂部武郎だとも言われています。
 読書会では「仙術太郎」「喧嘩屋次郎兵衛」「嘘の三郎」三篇それぞれの語られ方の違いやフォークロアを題材とした上での発展のさせ方、また虚構やでたらめという意味を持つ「ロマネスク」というタイトルとの関わりなどが話題に挙がりました。中でも後半に話題に上った「仙術太郎」最後の一段落に着目した「仙術太郎」から「喧嘩屋次郎兵衛」への接続の仕方の考察は興味深かったです。岡崎先生からは、フォークロアを題材とした上であえて一面的な語りをしたりしたうえでの自然主義批判も読み取ることができるのではないか、などの意見を頂きました。
 今年度は例会でも「走れメロス」「富嶽百景」「秋風記」と太宰作品を沢山取り扱った一年でした。そんな年度の最後に太宰のストーリーテラーとしての力量を改めて確認した読書会でもありました。
 読書会のあとは、懇親会を行いました。一年生から四年生まで、学年の垣根を越えた交流ができたと思います。

【2日目】
 2日目は、旅館でしじみ汁などのおいしい朝食を食べたあと、沼津港と沼津深海水族館・シーラカンスミュージアムへ行きました。
沼津港のある駿河湾は日本で一番深い湾で、底曳き網漁などが盛んに行われているので深海生物も頻繁に水揚げされます。そこで採集された深海生物や、世界でも数体しか存在しないシーラカンスの冷凍標本を展示しているのが沼津深海水族館・シーラカンスミュージアムです。まだ長期飼育方法が確立していないメンダコも見ることができました。出発時は雲がかかっていた富士山も、沼津港では頂上まできれいに見ることができました。
昼食は沼津港の敷地内にある「浜焼きしんちゃん」でした。ここは海の幸(もちろん深海魚)を備え付けの鉄板で自分で焼くことができます。初めてで焼き加減が難しかったりもしましたが、楽しく・美味しくいただきました。
 昼食後は沼津港から徒歩で15分ほどの、沼津若山牧水記念館へ行きました。沼津は牧水の晩年を過ごした土地です。時代ごとの写真や直筆の原稿、妻貴志子の紹介や沼津宅の書斎を再現した展示がなされており、より牧水を身近に感じることができます。愛用の盃や酒に関する歌の掛け軸が展示されている「牧水と酒」のコーナーは、この歌人ならではのものですね。
 その後沼津駅まで戻り、珍しい形式で有名(回転寿司のレールのように水が流れており、桶に載って品物が運ばれてくる)な喫茶店「どんぐり」で一休みした後東京へ帰り、合宿は終了しました。

 私たち2年生が合宿委員最上級生として企画した初めての合宿でした。気の回らなさや不手際など個人的には反省の多い合宿でしたが、それでも楽しい思い出となりました。会員の皆様(全員参加してくださった四年生にとってはもちろん最後の合宿です)にとってもいい思い出となったら嬉しいです。

来年度はいよいよ幹事学年です。普段の活動も勿論ですが、合宿委員としても今回の反省を踏まえて頑張ります。

最後になってしまいましたが、先生・参加してくださった会員の皆様・他の合宿委員2人の協力で合宿を無事終えることができました。本当にありがとうございました!


牧水記念館の裏手から