近研ブログ

國學院大學近代日本文学研究会のブログです。
会の様子や文学的な話題をお届けします。

長野合宿

2013-08-26 15:59:25 | Weblog
8月の頭に長野県へ合宿に行ってきました。
長野には昔家族でよく軽井沢にスキーをしに行っていましたが、軽井沢以外はほとんど行ったことがなかったので中々新鮮でした!

1日目
長野県へは新宿から新幹線で向かいました。
新幹線の中で信玄餅アイスというものを食べました。
溶けはじめてからの黒蜜とアイスの相性が抜群でした!
合宿の始まりとして幸先が良かったです。

天気予報では雨の予定だったのですが、上諏訪駅に到着したときにはさっぱり晴れていたので運がよかったです。
ただ長野はどこも避暑地だと思っていて、涼しいのだと思っていたので、予想より気温が高くてちょっとがっかりしました。
そのあと荷物を預けに宿へ行きました。
民宿は入り込んだ造りで迷いそうでした。
部屋も番号ではなく、部屋それぞれに名前が付けられていてとても個性的だと思いました。

上諏訪に着いて最初に見学したところは高島城です!
城といっても昔の状態で残っているわけではなく、後から建て直したもので、天守内部は資料館になっています。
そのため塀の中は公園になっていたり、現代アートっぽい石が置いてあったりしました。
天守に入ると館内の人が、この城のことなどについて説明してくださいました。
この城は諏訪湖の近くにあり、さらに諏訪湖へ流れる川という天然の要害に囲まれているので、難攻不落の城だったようです。
また、諏訪湖を挟んで城を見ると、湖の上に浮いているように見えるので、「浮城」ともいわれていたみたいです。
中々すごい城なのでコンクリートで再建されたのがちょっと残念です。
ただ天守の上層部から見える諏訪湖の景色はとても良かったです!

高島城を見学した後は昼食をいただきました。
ワカサギ入りのお弁当で、さらに刺身や天ぷらが入っていて、豪華で美味しかったです!

昼食後は諏訪市美術館に行きました。
常設展示の彫刻が不気味で、圧迫感がありました。

その後諏訪湖へ向かい、おやこはくちょう丸という遊覧船に乗りました。
風が気持ち良かったです。
はくちょう丸から見た諏訪湖は予想より緑色で、濁っていました。
魚が良く育ちそうな気がしました。

諏訪湖をあとにし、民宿へ帰ってから夕食をいただきました。
焼き魚が美味しかったです!

夕食後には諏訪湖で行われた花火大会に行きました。
花火大会はこの時期になると毎日行われているそうです。
距離が近かったので、かなり迫力があってすばらしかったです!
(余談ながら、浴衣を着て羽織っぽいのを着た姿が紋付き袴を着ているように見えたので「殿」というあだ名をいただきました)

花火を堪能した後、いよいよ1日目の読書会がはじまりました。
初日は堀辰雄の「燃ゆる頬」です。
主人公である私と魚住と三枝との関係についての意見が多かったように思います。
岡崎先生によると、この作品は三角関係という人間関係の根本を追求したものである、とのことでした。
また、同性だけの人間関係の中でも男性役と女性役を求めるようになる、というのは中々興味深かったです。

2日目
この日は一旦上諏訪を離れ、松本へ向かいました。

最初に訪れたのは、松本城です!
さすが国宝に指定されているだけあって、城内に入る前から凄まじいオーラを放っていたような気がしました。
城内に入り少し進んでいくと、なんと広場で甲冑を着たお兄さんがいました!
どうやら松本城の天守をバックに観光客と記念撮影をしていたようです。
僕もさっそく記念撮影しようと思い、写真を撮る係の人に頼んだのですが、タイミングよく携帯の充電が切れてあえなく断念しました…。
非常にがっかりしました。
直前まで門や城全体は撮れていたので、あのタイミングでのバッテリー切れはショックでした。
そんなことがあった後、国宝に指定されている天守に登りました。
天守は当時のものがほぼそのまま現存しているようなので、階段も敵が入って来にくいように急勾配になっていました。
当時のまま残っている天守に入ったのは初めてなので、中々圧巻でした!

次に見学したのは、旧開智学校です。
なんでも明治期に造られた小学校らしいです。
小学校のわりに結構凝った装飾がされていて、天井の模様などもかなり作り込まれていました。

その後、昼食をいただきました。
この日はざるそばでした。
そばは当然美味しかったのですが、それより店内はクーラーがついていたのですごくありがたかったです。

昼食後は旧松本高等学校を見学しました。
ここは現在でも集会所として使われているらしく、見学しているときにオカリナの音が聞こえたりして風情がありました。

旧松本高等学校を見学し終えた後は前日と同じ民宿に帰りました。
この日は夕食の前に「千人風呂」と呼ばれる温泉に入ってきました!
名前の通りかなり広い風呂で、立って浸かれるぐらい深かったです。

民宿に帰った後、夕食をいただきました。
この日の夕食はすき焼きでした!
やっぱり肉は美味しかったです。

そして夕食後に2回目の読書会がはじまりました。
2日目は森鴎外の「蛇」です。
今回の読書会では、新しい価値観の象徴である妻と古い価値観の象徴であるご隠居との確執についてや、新しい価値観を持つ人々には拠り所となる精神的基盤がないことについて、議論がなされていたと思います。
妻とご隠居の確執は、妻が昔の思想を完全に否定していることが原因で起こったのであり、ご隠居との関係を悪化させながら発展させたことが失敗であった、ということらしいです。

3日目
いよいよ合宿の最終日になりました。
この日は3時間ほど電車で移動して小諸へ向かいました。
疲れていたのか移動中ほとんど眠ってました。

小諸に到着したときはもう午後になっていたので、まず昼食をいただきました。
この日のメニューは、郷土料理のおにかけうどんというものでした。
色々な具材が入っていてとても美味しかったです!

それから、懐古園に行きました。
ここは昔武田信玄の城があった場所で、現在は城跡や動物園などがあります。
園内では弓道の公開練習を見たり、草笛師匠(名前は忘れましたが戦前の方だったと思います)が演奏した童謡の録音を聞けたりできました。
別料金なので行かなかったのですが、あの「男はつらいよ」の寅さんの記念館もありました。
時間とお金があれば行ってみたかったです。

懐古園の次には、高浜虚子記念館に行きました。
記念館は住宅街の中にあり、高浜虚子の住んでいた家が綺麗に残っていて、中々良かったです。

この後、自由時間で小諸駅周辺を散策しました。
この日はお祭りだったらしく浴衣の人が多かったです。
色んな所を散策していると、なにやら道路の真ん中に和太鼓が並べられている光景が見えてきました。
どうやらちょうど和太鼓の演奏が行われるようでした。
路上で行われた和太鼓の演奏は、音に迫力があってかっこよかったです!

今回の合宿は初めて合宿委員として参加しましたが、雨も降らなかったのでとても良い旅になったと思います!
本当に皆さんお疲れさまでした!

2年 殿 (松尾)

【2013年 長野合宿】

2013-08-13 03:53:00 | Weblog

 合宿委員の熊谷です。

 はじめに、岡崎先生や参加して下さった会員のみなさんのおかげで、有意義な合宿になったことを、心よりお礼申し上げたいと思います。至らぬ部分も多く、ご迷惑をお掛けしてしまったことも、ここにお詫びしておきます。
 また、合宿委員の先輩方には、不慣れな部分をご指導していただき、大変お世話になりました。重ねてお礼申し上げます。

 今回の合宿は、僕の地元である、長野県で行われました。
 見慣れた景色や、訪れたことのある場所も、新鮮な気持ちで巡ることができたのは、研究会のみなさんと一緒だったからだと思います。

 月並みですが、日にちごとに順を追って書いていきたいと思います。

 【8月1日(木)】
 しばらく前から帰省していたため、最初はみんなと別行動、朝もゆっくり起きれば良かったのですが、明け方からの雨に、早朝より目が覚めました。日程の心配もしていましたが、家を出る直前になって急に雨はやみ、大げさですが今回の合宿は天も味方しているように感じました。
 上諏訪駅でみんなと合流し、荷物を民宿に預け、最初の目的地、高島城へ。そのころには太陽の光が矢を射るようにさしていました。道中、「このあたりは道が遠くまでまっすぐ続いている」とご指摘してくださった方がいて、なるほど確かにその通りだと思い、改めて考えてみると、歩いた場所は近代になってから埋め立てられたところで、あくまで私見ですが、ヨーロッパの街のように、ある程度の計画性をもって作られたのではないでしょうか。
 高島城内では、職員のかたのご好意で、お城の歴史などを説明していただきました。
 最上階から望む諏訪盆地はなかなか見事なもので、さわやかな風も吹き込み、しばし穏やかなときを過ごせました。午後に乗った遊覧船「おやこはくちょう丸」が諏訪湖上をぷかぷかと漂っているのも見られました。
 昼食をとったあとは、予定を前後させ、諏訪市美術館へ。一日目はしおりの通りに進まないことが多く、日程を立てた身としては、反省せずにはいられませんでした。幸い今井さんの臨機応変な対応により、大きな混乱もありませんでしたが、今後このような機会があったら、もう少し想像力をはたらかせ、机上のプランと実際の行動との乖離をなるべく減らせるように努力していきたいと思います。
 美術館では、諏訪出身の画家、藤森青芸(ふじもりせいうん)の企画展をやっていました。大胆で迫力ある絵、しかし一歩二歩近づいて見れば、非常に繊細な筆のタッチで描かれている青芸の絵は、目を引いてなかなか離しませんでした。また、同じく諏訪出身の、彫刻家細川宗英の展示もあり、こちらはシュルレアリスムを感じさせるような独特の抽象性を持った彫刻が多く、何かよくわからないままに作品世界に引き込まれてしまう印象でした。
 美術館を出たあとは、遊覧船乗り場へ。
 諏訪湖を一望できる遊覧船、おやこはくちょう丸は、混雑もなく、非常に快適な航行になりました。湖上の風を受けながら眺める街並みは絵葉書のようで、普段の生活が遠く感じられました。
 およそ30分の遊覧が終わり、まだ明るいうちに、民宿「すわ湖」さんへ。時代を感じさせる建物ながら、趣のある内装で、ご主人の丁寧な対応もあいまって、温かみのある宿でした。
 夕食後は諏訪湖上で15分間の花火大会があり、揃って見に行ったところ、同じように近場の宿から浴衣のまま観覧しに来た人が沢山いて、風情のある光景になっていました。花火が打上がるたびにその場の人がそろって歓声をあげるのも、おもしろいものでした。
 そして夜も更け、
   来ぬ人を待つとはなくて待つ宵の更けゆく空の月も恨めし〈有家朝臣〉

 【8月2日(金)】
 合宿2日目は松本へ。松本には僕の母校があり、個人的にはなじみの深い場所ですが、今回はまた新たな発見もありました。
 まず最初に訪れたのは、俗に烏城(からすじょう)と呼ばれている、松本市のシンボル、松本城です。以前訪れたときよりも階段が急に感じられ、やっと辿り着いた天守閣ですが、そこから見られる松本市街は、城下町らしく整然と建物が立ち並んでいました。松本市では、この景観を守るため、新しく建築される建物の高さに制限が掛けられていることをふと思い出しました。経済発展だけを考えれば、歓迎されることのない条例ですが、合理性だけを突き詰めて町を無機質なビル群にしてしまうよりは、はるかに人間らしい、良い取り決めだと思います。
 その後、徒歩で旧開智学校へ。すぐ裏手にある松本市中央図書館にはよく通ったのですが、旧開智学校には初めて入りました。建築費のおよそ7割が住民の寄付によるものだったということを知り、当時の、小学校に対する期待・教育に対する熱意を、あらためて感じられました。こうした広く開かれた小学校の存在が、日本の近代化に少なからず貢献したことは、言うまでもないと思います。幼い弟を背負ったまま教室で勉強している女の子の写真が、頭から離れません。
 昼食のあとは、旧制松本高校へ。北杜夫の企画展をやっていました。以前読んだ『どくとるマンボウ青春期』のころの展示が多く、若さとエネルギーに溢れた学生生活の様子が、より具体的に伝わってきました。
 駅周辺に戻ってからの自由時間では、お土産を買う必要もなかったので、懐かしい通りなどを歩いてみました。若干町の雰囲気が変わったように感じられたのは、建物や道が変わったのではなく、昔は意識もしていなかった路地裏の居酒屋やタバコ屋が目に入るようになったからかもしれません。その分、見えなくなったものもあるはずで、それを思うと少し寂しい気持ちになりました。
 電車に乗って、再び民宿へ。この日の夜の花火は、Billy Joelの『Piano Man』に合わせてあがりました。ちょうどこの記事を書いている喫茶店でも同じ曲がかかっていたので思い出しました。
 長い一日が終わり、
   ふたつなきものと思ひしを水底に山の端ならでいづる月影〈六帖一・新撰・貫之〉

 【8月3日(土)】
 最終日は電車を乗り継ぎ、小諸へ行きました。
 昼食をとり、まずは懐古園へ。藤村の『千曲川のスケッチ』にたびたび登場するので、どんなものか想像をふくらませていましたが、予想よりもだいぶ広くて驚きました。眼下に千曲川を望める場所もあり、昔の人も同じ景色を見ていたのかと思うと、感慨深いものがありました。一日中でも見て回れる場所なので、機会があったらまた訪れたいと思います。
 そのあとは、高浜虚子記念館へ。合宿最後の目的地です。
 展示自体は少ないものの、虚子の小諸時代の資料が揃っていました。かつての住居「虚子庵」も隣接しており、当時の生活の一端を垣間見ることが出来ました。
 帰る前の自由時間、小諸ではお祭りをやっていたため、出店を回ってみました。何年振りかに射的をやってみたところ、身長が伸びたためか、思いのほかうまく的に当たり、なかなか楽しめました。
 東京へ帰ってゆく先生や学部生のみなさんを見送り、電車の時間になるまで、ひとりで合宿の続きと言わんばかりに小諸を散策してみましたが、暮れてきた街に祭りの太鼓が鳴り響き、少し感傷的な気分になりました。


 今回の合宿では、思いがけず地元の観光をすることになりましたが、見知った場所の新たな一面が発見出来て、非常に有意義な時間を過ごせました。また、読書会ではあらためて自分の勉強不足を思い知らされました。記事で読書会のことを書かなかったのは、そのことも含め、少々思うところがあるためです。研究会として最も大事な部分を省いてしまったことを、ここにお詫び申し上げます。

 立秋を過ぎましたが、暑さが尾を引く、どころか、体ごとぶつかってくるような厳しい日が続いています。9月の勉強会でまた元気に会えるよう、どうかご自愛ください。

  一年 熊谷

長野夏合宿

2013-08-12 22:30:11 | Weblog
 8月1日から3日にかけて長野県へ合宿に行って来ました。合宿に参加するのは初めてだった上、合宿委員としてまだまだ未熟でしたが、大きな怪我や事故が無く合宿を終えることができてよかったです。これも合宿委員をまとめて下さった今井先輩と、たくさんフォローをしてくれた合宿委員の皆さんのお陰です。この場をお借りしてお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
 では3日間を振り返っていきたいと思います。


<8月1日>
 朝8時に新宿駅中央東口改札で集合しました。初めて新宿駅に行く私は電車の乗り継ぎや駅構内で迷うのではないかと不安でいっぱいでしたが、難なく辿り着くことができました。そして特急あずさに乗り1日目の観光地、上諏訪へ向かいました。

 はじめに高島城を訪れました。お城の際まで諏訪湖の水が迫っていたため、湖上にお城が浮いて見えたことから別名浮城と呼ばれていたそうです。写真で見ていたより、実際の高島城は小さく可愛らしかったです。

 お昼は割烹仙岳で頂きました。お弁当は見た目も美しく、味も素晴らしかったです。個人的にはお刺身が美味しかったです。1日目から豪華な食事のスタートが切れました。

 お昼の後は諏訪市美術館へ行きました。藤森青芸の企画展が開催されており、少し疲れてしまった私は一通り鑑賞した後、1番気に入ったトビウオの絵の前に置かれたベンチで休憩をしていました。

 1日目の最後はおやこはくちょう丸に乗って諏訪湖を遊覧しました。八ヶ岳と諏訪湖を取り囲む町並みを眺め、船内は窓から入ってくる風で涼しく快適でした。白鳥の形をした船に乗っているのを忘れるほど優雅な船旅でした。

 2日間お世話になる民宿すわ湖に到着し、お風呂と夕食を済ませた後、諏訪湖で行われる花火大会へ行きました。8月1日から9月8日まで毎日15分間花火が上がるそうです。とても近くで花火が上がっていたので、夜空から降り注ぐようでした。


 読書会では堀辰雄『燃ゆる頬』を扱いました。魚住は周囲から男らしさを偶像化され、それに応じるために仮面を被っていたのですが、三枝と私には仮面を外した少女のような一面を見せます。これは私の少年愛への目覚めを予感させるものだったと考えられます。やがて三枝と私は恋仲になり、旅行へ行きますが、そこで出会った声変わりのしている少女たちが私の愛を変えることになります。それから数年後、同性愛の時期を終えたと思い込んでいた私はサナトリウムで三枝と同じ脊椎カリエスに罹った少年を目撃したことをきっかけに大きな打撃を受けます。それは旧制高校特有の異性がいないために同性を愛していたのではなく、私は本当に同性を愛していたと改めて意識したことを意味していたようです。人間との関係性、特に性愛は単純なものではないと読者に意識させる物語だと岡崎先生からご指摘を頂きました。


<8月2日>
 2日目は松本市街を中心に行動し、まずはじめに松本城を訪れました。石落や狭間が数多く設けられており、戦国時代の鉄砲での戦いを想定して築城された様子が実感できました。

 次に旧開智学校へ行きました。擬洋風建築で内装1つ1つに凝った装飾が施されていて、当時の小学生達は学校で過ごすのが楽しかったのではないかと思います。私もこのような校舎で学んでみたいです。学習意欲が増しそうな気がします。
 お昼は蔵のむこうというお店でざるそばを頂きました。本場の信州そばはとても香り豊かで暑さでバテた体にもするする入っていきました。

 2日目の最後は旧松本高等学校へ行きました。ここは北杜夫の『どくとるマンボウ青春記』の舞台となった場所で、今回の合宿で最も私が訪れたいと思っていた場所でした。北杜夫の直筆原稿や辻邦生との往復書簡など北杜夫の松高時代と関係のある資料がたくさん展示してありました。本で知っていた場所を実際に訪れることができ、さらに北杜夫の魅力を知ることができました。 

 夕食後も花火が上がっていて、なんと部屋の窓から花火が良く見えました。少し得した気分です。


 部屋から花火を堪能した後は2日目の読書会をしました。森鷗外『蛇』を扱いました。新しい学問との差、そして新旧の価値観の差が話題の中心でした。妻が祟りだと思って発狂したことは、完全なる西洋などは無いという鷗外の皮肉が込められていたようです。また、語り手の変化に鷗外の気持を代弁する要素が含まれていて、東京の専門家に妻を見せたほうがよいと私が勧告するのは鷗外の中央集権的な政治を意図したものだというご指摘を頂きました。


<8月3日>
 合宿最終日は電車で2時間以上かけて小諸へ向かいました。12時過ぎに到着したのでまずはひしやへ行き、おにかけうどんを頂きました。醤油ベースのけんちん汁にうどんが入っていて、家でも真似できそうな味だったので今度挑戦してみようと思います。

 お昼の後は懐古園へ行きました。展望台から眺めた千曲川は雄大で島崎藤村がここで様々な作品を生み出したかと思うと時を超えた感慨深さがありました。

 3日間最後の目的地は小諸高浜虚子記念館でした。高浜虚子は戦時中に小諸に疎開していたそうです。小諸駅周辺でお茶と自由行動をした後、軽井沢から新幹線でお帰りになる岡崎先生とお別れをして、学部生は高速バスで東京へ帰りました。


 合宿前に3日間は長いな、と感じでいたのですが実際はあっという間に過ぎてしまいました。普段の学校ではわからなかった皆さんの新たな一面が垣間見れて親睦が深められたような気がします。また非日常を求めて皆さんと合宿ができたら、と思います。連日40度近い日々が続きますが、体調など崩さないようお気をつけください。


                                                    
2年田中宏実

2013 長野合宿

2013-08-10 19:09:30 | Weblog
8月1日(木)から3日(土)までの3日間、長野県で夏期合宿を行いましたので、そのご報告をさせていただきます。
まず、岡崎先生をはじめ、合宿にご参加くださった皆様、合宿委員のみんな、3日間お世話になり、ありがとうございました!


それでは、3日間を振り返ってみたいと思います。
・8月1日(木)
新宿駅に8時に集合し、特急あずさで上諏訪駅へ向かいました。初日の諏訪地方は雨だという予報で、特急の窓外も実際に雨や曇りが続いていたので、あーやっぱり予報通り雨かと残念に思っていました。けれど、気が付くと窓外に見える空が晴れて景色が明るくなってきていて、これはもしや…?と期待しつつ、目的地である上諏訪駅へ到着したのは11時過ぎでした。現地は期待通りに晴れ!夏らしい日差しが降り注いでいました。

最初は高島城へ向かいました。高島城はそれほど大きなお城ではありませんでしたが、天守からはこれから2泊3日の拠点となる諏訪の町と、その日行く予定の諏訪湖が眺められました。のんびりしていて、心の落ち着く景色でした。
昼食を割烹仙岳でいただき、諏訪市美術館で郷土作家の作品を見た後は、高島城から見えた諏訪湖でおやこはくちょう丸という白鳥の形をした遊覧船に乗りました。遊覧船に乗るのは初めてだったのでかなり楽しみにはしていたのですが、一方では、ここ数年で乗り物酔いし易い体質になってしまった疑惑を自身に感じていた私としては、何よりもまず船酔いするかどうかが心配でした。しかし、乗船してからは船酔いなど全く気にならず、船が動いて岸が小さく遠ざかっていくにつれて胸が高鳴りました。また、船尾側から船の通った水面に波がゆったり広がっていく光景は、見ていて大らかな気分になるものでした。そわそわ動き回ってばかりでしたが、ちゃんと大人っぽい楽しみ方もできました。
16時過ぎに民宿すわ湖に到着し、休憩と夕食を済ませた後、諏訪湖で行われたプチ花火大会を見に行きました。あんなに近くで見上げるようにして花火を見たのは初めてでした。

読書会では、堀辰雄「燃ゆる頬」を扱いました。司会は3年の能登さんでした。
私としては、脱皮前の少年時は神々しく美しい存在として精神的に好いていた三枝に、脱皮後の「私」がサナトリウムで見た少年を通して肉体的な性を見出す。そして少年時も無意識ではあったが三枝に肉欲を感じていたことや、三枝との間に確実に一過性の薄い感情ではない濃厚な感情を持っていた自分、少年時の三枝との関係が戻らないことに気付き、「大きな打撃」を受ける。「燃ゆる頬」というタイトルには、当時の「私」と三枝との純粋な恋愛を象徴するような意味があるのではないかと考えていました。
しかし、読書会の中で、脊椎カリエスを触る描写などから少年時から三枝に肉欲的・官能的なものを感じていたのではいないか、「大きな打撃」とは、同性愛から異性愛に修正されたはずの「私」が裸の少年のした動作をよく見ようとしてしまったことから、同性愛の気持ちを実は底に持っていたことに気付いたことによるのではないか、という意見などをいただきました。
他にも、魚住という存在の効果や異性愛に「私」が目覚めていく点、同性に対する描写と女性に対する描写の違いなどについても意見が交わされました。
岡崎先生からは、意識と無意識のレベルのズレが描き込まれている箇所のご指摘や新心理主義についてのお話をいただきました。

・8月2日(金)
この日は、松本を巡りました。最初に行った松本城は見晴らしがよく、天守を吹き抜ける風が涼しく心地よかったです。築城された当時はここまで高い建物はそうそうなかったと思うので、こんなに高い建物を作らせてそこから町を見下ろすというのは、単に私が今感じている景色の美しさや見晴しのよさによる感動とは別に、支配欲や自己顕示欲が満たされてかなりいい気分だったのだろうなと思いました。
旧開智学校では、素敵な雰囲気の校舎の中でゆっくりできました。こういうところで勉強出来たらいいなあと思いました。教室の中だけでなく、廊下や灯りまで装飾が施されている丁寧な造りでした。
蔵の向こうでざるそばをいただいた後に訪れた旧松本高等学校では、北杜夫の記念館や、一部公開されている復元教室などを見学しました。印象に残っているのは、復元寮室です。白壁に筆で直接力強く文字が描かれていました。ものすごい迫力で、ここで暮らしていた人達は日々どういう気分だったのだろうと想像して圧倒されてしまいました。

17時頃宿に到着し休憩後に夕食をいただいたのですが、この日のメニューはなんとすき焼きでした!お肉もたくさんで贅沢な気分を満喫できました!
夕食後は森鴎外「蛇」の読書会を行いました。司会は岩渕さんでした。
新旧の価値観が対照して描かれている点に注目した意見と、最後はあたかも「己」により一件落着したように語られている点に注目した意見が多かったです。

・8月3日(土)
3日目は小諸を廻りました。ひしやで郷土料理おにかけうどんを食べた後、懐古園や小諸高浜虚子記念館を廻りました。
懐古園は樹が多く植えてあり、濃い緑に目が潤されました。開けた展望スペースからは周囲の緑をよく見渡せ、山の風景を満喫できました。
小諸駅周辺でお土産を買った後、新幹線でお帰りになる先生とお別れをして、学部生は高速バスで帰りました。東京に着いたのは21時過ぎでした。


今回の合宿で、また会全体の親交が深められたと思います。皆様、ご協力ありがとうございました。
特に、合宿委員のみんなにこの場を借りてお礼を申し上げたいと思います。試験やレポート提出で忙しい時期にも関わらず、快く合宿委員を引き受け、現地でもよく気付き動いてくれてどうもありがとう。合宿を成功させてくれたこと、深く感謝致します。

次の活動は9月の夏季勉強会です。
では、厳しい暑さが続きますのでご自愛ください。

3年 今井