近研ブログ

國學院大學近代日本文学研究会のブログです。
会の様子や文学的な話題をお届けします。

2019年5月13日 谷崎潤一郎「痴人の愛」読書会

2019-06-05 19:06:39 | Weblog
あげるのを忘れて掲載が遅くなりました。大変申し訳ございません。
5月13日に行われた谷崎潤一郎「痴人の愛」の読書会報告をさせていただきます。司会は3年佐々木です。
「痴人の愛」は大正13年3月20日から6月14日まで『大阪朝日新聞』に連載し、中断後に雑誌『女性』で大正13年11月号から大正13年7月号まで掲載されました。単行本は同年7月に改造社より刊行されました。

読書会では主に奈緒美について議論が発展しました。
最初に譲治は生活の変化を求めたという目的が本文から読み取れるため、その意味で奈緒美に生活の主導権を取られたというのは譲治の目的が達成されているとみれる。特に自分の物になりきらない魅力というのは多くの読者は共感し、ナオミズムと呼ばれ流行したのではないかという意見や、ナオミはこのように生きていくことしか出来なかった、ナオミはただ譲治の欲望に従順に応え続けただけという意見、先行論でみられる西洋拝跪、白人拝跪などを踏まえこのように読める部分は日本の上面だけの西洋化に対しての批判なのではという意見なども出ました。
また「痴人の愛」という題名からエロさを感じるのは何故なのか、「痴」という漢字には愚か者などの意味しかなく、エロに関連しそうな意味はない。「痴人の愛」と聞いた時にエロをすぐ連想してしまうことが、今の「痴」にエロを連想してしまうことに繋がっているのではないかという話も出ました。

「奈緒美」は恐らくカフェで働いている時の源氏名であり本名ではない可能性があるが、この作品の中では終始ナオミであり続けた。「私」が「夫婦」を語ることが出来ると思うと思っている。物語れると思うことがナオミを下にしている暴力性を感じるという意見を先生からはいただきました。

全体としてただのSMということではなくこの時代にあって、ナオミの出自も考えてみるとナオミは生きていくために譲治に必死に応えているのではないかいう考えにも納得がいきました。
次回は5/20芥川龍之介「雛」の研究発表になります。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿