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TPPもダメ、北方領土返還もダメ。米、中、露の新三角関係を見守るしかない日本。

2016年11月23日 13時03分46秒 | 日記
 次期米国大統領になるであろうトランプ氏に、早々と面談の機会を持った安倍晋三首相だが、トランプ氏が就任前であるという理由で、会談内容はオープンにされていなかった。

 TVメディアの解説者には、いかにも講談師のように、まるで会談に立ち会ってTPPの推進やアジア地域安定のために、日米同盟の重要性を、安倍首相がトランプ氏に要請したと、まことしやかに話すのを聞いて、筆者は思わず笑ったよ。

 あの顔ぶれの会談写真を見ると、せいぜい土産に持って行ったホンマのゴルフドライバーの話題と、次回顔を合わせた時には、ぜひゴルフをやろうとか、大統領に就任した後で再度の会談を行おうというのが、精いっぱいだったと筆者は思うヨ。

 安倍首相のトランプ氏の印象を記者団から聞かれ、「同盟というのは信頼がなければ機能しない。トランプ氏は信頼することができる指導者であると確信した」と述べていたが、トランプ氏が大統領に就任して最初に取り組む仕事は、直近のビデオメッセージでは、「TPPからの離脱である」と明言しているではないか。

 安倍首相は完全に足元をすくわれた感じだ。 いくらTPPを推進したくても、もはや米国抜きでは効力を発揮しそうもない。

 安倍首相とプーチン大統領との会談も、ペルーのリマで行われたが、北方領土の返還も期待できない。しかも国後、択捉にロシアの最新鋭のミサイル基地整備を行うというから、根から返還する気はないのだろう。

 ロシアのプーチン大統領に秋波を送るトランプ氏に、中国 習近平最高主席は、トランプ氏を歓迎しながらも、ロシアと米国が親密になることに、外交戦略の対応を練り直しているという。 米、中、露の大きな新三角関係に注意を払うべきだと、日経の編集委員 中沢克二氏が指摘しているが、まあ新聞メディアとしてはまっとうな見方だと筆者も思った。
 

(日本経済新聞 電子版より貼り付け)

習主席が警戒するプーチン氏の「トランプ傾斜」
編集委員 中沢克二
2016/11/23

 米大統領、オバマの任期中最後となるお別れの米中首脳会談が、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を開いたペル-のリマであった。 中国国家主席の習近平は、米国の次期大統領に決まったトランプとの電話会談を話題にした。

 「私はトランプ氏と共に努力し、グローバルな問題まで含めて建設的に意見の違いをコントロールし、衝突せず、対抗しないという方針の下、両国関係を新しい起点から進展させたい」
 国営メディアが伝えた習近平のオバマへの言葉は、きわめて立派な抱負だった。

■中ロの「準同盟」に変化も

 だが、リマで習近平が一番、気にしていたのは、直前に会談したロシア大統領、プーチンの今後の動向だろう。 なにせトランプは、オバマとは打って変わって、プーチンを「強力な指導者」と高く評価してきた。ロシアとの関係改善も視野に入れる発言だった。

 中国共産党機関紙、人民日報傘下の国際情報紙である環球時報は11月半ばの社説で、トランプ体制始動後の国際関係の変化を論じた。
 「ロシアと米国の関係改善で、ここ数年間に築いた中ロの親密な関係に影響が出るのではないか」と懸念を表明したうえで、「中国、米国、ロシアの大きなトライアングルの中で、中ロ関係は未来に向けて最も安定した2国間関係であるべきだ」と主張している。

 中国紙としては珍しい率直な物言いだ。まるで恋人の変心を予感し、つなぎ留めるためのラブコールを早々に送ったかのようである。それは、習近平の心の内の代弁でもあった。
 
 ウクライナ問題の衝突で米ロ関係は悪化した、中国の方は、同じ時期に南シナ海問題で米国と厳しく対峙した。中ロは対米けん制という同じ目的で一段と関係を深めていった。

 中国は「非同盟」の立場を取るが、最近は中国の学者でさえ「中ロは事実上の『準同盟関係』だ」と表現するほどの蜜月ぶりだった。 習近平とプーチンは、きわめて頻繁に顔を合わせている。 だが、プーチンがトランプに接近すれば、習近平はロシアカードを使えなくなる。 それは大きな痛手だ。

■日ロ接近にも警戒、安倍首相と突然会談

 習近平は日ロの接近も気にしている。 リマでプーチンは日本の首相、安倍晋三とも会談した。しかも、通訳だけ残した2人だけの長い“密談”もあった。 安倍は会談後、世界の視線も意識して「2人きりで話をすることができた」と、あえて強調した。

 日ロの領土交渉は、きわめて難しい。 一方、ロシアにとって極東での日本との経済協力は重要だ。 対日関係が改善すれば石油・天然ガスなどエネルギーの売り先が多様化し、中国に価格面で一方的に買いたたかれるリスクも減る。

 日本にとって注意を要するのは、ロシアが対米関係を修復すると、日本を使って米国をけん制する意味合いが薄れてしまう点だ。 プーチンが対日関係で譲歩を決断する動機が消えかねない。

 安倍はペルー入り前、ニューヨークに立ち寄って、外国首脳として初めて当選後のトランプと会談した。 APEC首脳会議の合間の雑談で、安倍は今のトランプの意向を知る男として「引っ張りだこ」だった。
 安倍・トランプ会談の内容は伏せられている。当然、日ロ関係、そして米ロ関係の今後も話題になったに違いない。

 しかもプーチンは12月中旬、安倍の地元、山口県を訪れ、膝詰めで会談する。 温泉宿でともに湯につかる。 安倍はプーチンを「ウラジーミル」とファーストネームで呼ぶなど、個人的な関係も演出している。

 習近平としては「蜜月関係」の相手の今後への関心は高い。 そこで習近平は意外な行動をとった。 APEC会場で安倍との短時間会談に踏み切ったのだ。 10分間の着席会談だった。

 9月に中国・杭州で開いた20カ国・地域(G20)首脳会議で習はホストだった。 安倍と会談するのは礼儀でもあった。 今回は違う。 中国は南シナ海問題で正論を吐き続ける安倍を攻撃してきた。 その立場からすれば、会談に応じる必要はない。 習の動きは方向転換と言ってよい。

 トランプの今後の対中スタンス、日ロ接近など、不透明な要素は多い。 そこでひとまず様子見のため安倍と接触し、フリーハンドを確保することが重要だった。 首相の李克強が日中韓首脳会談で訪日するという課題も残っている。

 ただ、中国当局は習近平と安倍の接触について、きちんとした「会談」と認めていない。 報道も中国の一部メディアが「日本側の要請に応じた短時間の会話」に触れただけだ。 あくまで半身の構えを崩していない。 一筋縄でいかないのは、毎度のことだ。

■ロシアがG8に復帰も

 ロシアは、ウクライナ問題を巡る対立で、2年前に当時の主要8カ国(G8)首脳会議の枠組みから外された。 いまはG7だけの首脳会議が続いている。 しかし、米ロ関係が修復軌道に入り、日ロ関係も変化するなら、問題は欧州だけだ。 数年以内にロシアがG8に復帰する可能性も出てくる。

 中国は、新興国を含む20カ国・地域(G20)の枠組みに重きを置くだけに、ロシアが元のさやに収まってしまっては困る。 せっかく中国を外す環太平洋経済連携協定(TPP)の命脈が断たれそうなのに、また別の中国外しの枠組みが復活するのでは意味がない。

 習近平も負けてはいない。 リマのプーチンとの会談では、なんとか一つ、2017年に向けた布石を打った。 同年5月に中国で開く「新シルクロード経済圏」構想に関連するイベントに出席するため、プーチンが訪中する約束を取り付けたのだ。

 米国、ロシア、中国の「大三角形」は常に不安定だ。 世界の大国間のパワーバランスを変えかねないトランプとプーチンの今後は、日本の将来に大いに関わるだけに注目したい。(敬称略)
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中沢克二(なかざわ・かつじ) 1987年日本経済新聞社入社。98年から3年間、北京駐在。首相官邸キャップ、政治部次長、東日本大震災特別取材班総括デスクなど歴任。2012年から中国総局長として北京へ。現在、編集委員兼論説委員。14年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞

(貼り付け終わり)