MOVIE KINGDOM Ⅱ

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ポイントは★~★★★★★★

No.33 「アルキメデスの大戦」

2019-07-29 09:33:04 | 2019年劇場鑑賞




アポロシネマのスクリーン3はいつになくレイトながら沢山のお客様が入ってます
割と男性客が目立つのは戦艦大和がテーマだからでしょうか?
ま、私のその1人ですが…

日本帝国海軍上層部は世界に誇示する大きさを誇る大和の建造を支持するが、しかし海軍少将の山本五十六はこれかれの時代は航空母艦こそが主力となると対立
あまりにも安い大和の建造費の見積もりに疑問を抱いた山本は、大和の建造にかかる莫大な費用を算出し、大和建造計画の裏に隠された不正を暴くために名も無き
天才数学者の櫂直を海軍に招き入れて極秘任務にあたらせる

冒頭に大和の撃沈シーンが出てきます
唯一の戦闘シーンでありますが日本のCGの戦闘シーンはたしかに水準が上がりましたね
迫力のある戦闘シーンは見応えあります
最初にこのシーンを持ってきたのが意味があるんですよね
大和が撃沈されるという事実の元にその後のストーリーが12年前に遡るのがテーマとして生きてきます

海軍省の大きな壁が立ちはだかる中、大和の真の建造費を算出すべく、櫂直とそのお付きの田中の2人がまさに巻き尺片手に日本中を駆け回る
櫂直と柄本佑扮する田中のコンビがいい味だしてます
特に柄本佑は最初は「生意気なやつ」と思っていた櫂直を同行していくにつれ、その才能と仕事ぶりにだんだんと尊敬していき、やがて良き右腕となって行く田中の役を味わい深く演じてます
また菅田将暉はあの時代には居てなさそうな現代的な顔立ち(笑)ながらも天才という人によくある変人ぶりを好演してました
山本五十六役の舘ひろしは映画史上最も軽々しい山本五十六のように見えたが(笑)
他の役者もミスキャストもなく良かったと思いますが、特に橋爪功と田中泯の対照的な芝居惹かれましたね
まるで悪代官か悪徳商人のごとくの憎々しい大和推進派の嶋田を演じる橋爪功のキャラは名演!
嫌らしい笑い方やヒステリックにどなり散らすとこなんざ典型的な嫌われ役
それに対して同じ大和推進派で大和の設計者の平山を演じた田中泯はほとんど語る事無く寡黙で無骨な雰囲気を終始出していて、静なる存在感は圧倒的
そしてまさにこの役こそこの作品のテーマのキーパーソンとなるのです
ラストの櫂直に真実の大和の建造計画の真意語る場面は、それまで寡黙を通してきただけにせきを切ったように語りだす姿にこの平山という男の悲壮なまでの使命感を感じます

まるで池井戸潤さん原作のドラマのような展開で最後の会議のシーンでギリギリセーフの一発逆転!
で終わればスッキリ爽快ムービーで終わるところ、その後にこの作品の真のテーマが出てくる
大和建造を阻止するべく奔走していた筈なのに、気がつけば天才が故に計画以上の大和を作り出してしまったジレンマと切なさ
大和が沈み日本が敗戦すると言う現実があるだけに、完成した大和を通して日本の姿を見てしまう櫂直の複雑な心境が読み取れる
エンタメな展開のほぼ全編に終盤には反戦メッセージと言うよりは、当時の日本の在り方が現代から見たら歴史を知ってる分悲しく写るような展開に見えました



★★★★ 2019.7.26(金) アポロシネマ スクリーン3 21:00 D-2