北海道の富良野演劇工場で倉本聰演出の「明日、悲別で」を見てきました
(あらすじ)
二十年前に閉山した炭坑の町、悲別。散り散りになった若者たちは、2011年大晦日、閉山の日の約束を守って今や破綻寸前のこのふるさと に集ってくる。
彼らの交した約束とは、大昔この炭坑の第一坑道の地下三百メートルの地底に先人達が埋めたという「希望」を封印したタイムカプセルを、みんなで探しに潜ろうということ。
だが二十年の歳月は、若者たちを変えてしまっている。
福島の原発労働者となって津波と爆発に遭遇した者、懸命にふるさとにしがみつき空しい町おこしに励む者、そしてこの町の町会議員になり、原発汚染の福島の瓦礫を引き受け、廃坑の地下一千メートルに石棺に入れて閉じ込めようと策す者。
三百メートルの地下に希望があり、千メートルの地下に今絶望を埋めようとしている悲別。
約束を守った二人の若者が、空しくしか思えない希望を求めてかつてのなつかしい第一坑道へ二人っきりで入って行った。
この芝居は深く重いテーマを半分近く暗転の中で演じられてる
それは炭鉱後に入った3人の男が体験する絶望と希望を客席で追体験してるかのような臨場感があります
希望が埋まってると言われるタイムカプセルを探しに行く二人の元炭鉱夫と新聞記者
落盤事故に遭い生き埋めに合うがそこで繰り広げられる三人のドラマをほとんど暗転の中で描く演出は、より人間味が出て良かった
そんな彼らを救おうとかつての仲間が事故現場に入っていく場面は実に感動的で、特に役者が一斉に動きを止める中ただ一人だけゆっくり動くスロー&ストップモーション的な演出が効果的に感動を盛り上げている
オープニングでもストップモーションが使われるがその完成度に舌を巻く!まさか舞台でこういう効果が生きるなんて・・・
20年前の約束はいつしか風化し時の流れがそれぞれの環境を変え、人を変えてしまう そんな中一つの出来事により結果的に約束通りみんな地下に集まっていく・・・運命と言えば運命かも知れないが様々な事情の中でも、かつての仲間の窮地に己の事は後にして飛び込んでいく姿に胸を熱くさせられる
時折、前衛舞踏のような亡者たちの踊りが挿入されるが、まるで空しくまさに死んでしまったかのような町とそこに渦巻く人々の怨念のような怒りというもの感じさせて少し怖いくらいです
原発事故により福島の町はこの悲別のように寂しく悲しい運命を辿ってしまうのか・・・老婆が叫ぶ「神様はいるのかよ、とうに神様なんていやせん・・・」まるで現実を思わすようで胸にグサリとくる
それだけに人間の心の大切さ、人間の力というものを見なおさないといけないと思わせてくれる
ただ重いテーマが幾重にも重なってるようで見ていて疲れました
「帰国」のように一つテーマ絞れてる方が判り易かったかな・・・?
★★★ 2012.6.11(月) 富良野演劇工場