年百冊、何千冊の書籍、それも、文庫、雑誌、コミック、写真集などの区別なく持ち歩けて、いつでもどこでも読書ができる・・・電子ブックリーダーのコンセプトです。これが発表されたとき、読書のスタイルすら一変するかも知れない、そんな淡い予感がしたものですが・・・やはりそれは予感に過ぎなかったのかも知れません。
日本での電子ブックリーダー販売元であるソニー、松下両陣営は、電子ブックリーダー端末の販売不振により撤退を決定。日本においての電子ブックリーダーは、事実上終焉を迎えました。
電子書籍端末売れず──ソニーと松下が事実上撤退 ITmedia
国内メーカーは2003年ごろから電子書籍市場に本格参入したが、専用端末やコンテンツの価格が高すぎたり、利用できる書籍数が少なすぎるといった問題が改善されず、普及が進まなかった。その間に携帯電話向け電子書籍市場が成長。専用端末の“居場所”がなくなっていた。
日本で販売された国産電子ブックリーダーは、2004年から現在までに僅か3機種。お値段は全て4万円前後と高い上に、文庫本よりも大きく、重いため、電子化による手軽さが大きくスポイルされてしまっています。また、販売されている電子書籍も松下のサイトで一冊400円程度と、文庫本を普通に買うのと同じ程度。これでは、わざわざ高い端末を買って汎用性のないコンテンツを買うよりも、手軽に読みやすい文庫を買って鞄に突っ込んだ方が良い・・・そう判断されても仕方がないでしょう。
対して、アメリカではAmazonのKindleが売れているようです。
日本の状況とは対照的に、米国で昨年、Amazon.comが発売した電子書籍端末「Kindle」(339ドル)は発売から5時間半で売り切れる人気となった。
KindleはE Inkの電子ペーパーを採用するなど、技術や大まかなデザインはLIBRIeとそれほど変わらない。だが9万冊以上と数多くの書籍、雑誌、新聞などを、EV-DOネットワーク経由で直接ダウンロードできるという利便性が受けたようだ(“iPodっぽい”クールさも 米Amazonの電子書籍端末「Kindle」を触ってきた)。
399ドルという端末価格は、日本の電子ブックリーダーとほぼ同じかそれ以上の金額ですし、機能的にもネットワーク対応ということ以外には、ソニーのLiblieのデッドコピーみたいなもの。では、何で売れるのか。
記事をいくつか読んでみると、ネットワーク対応にしたことで、より手軽に書籍を手に入れることができるようになったと言うこと、そして扱う書籍の数が日本に比べて段違いに多いこと、新聞や雑誌を定期購読していれば、毎朝端末に自動配信されること。このような魅力的な・・・特に新聞と雑誌の自動配信はすぐにでも欲しい・・・サービスに加えて、書籍の価格が紙媒体に比べて60%以上ディスカウントされている事も大きいようです。
日本において、このようなサービスは、
「取り次ぎが絡む複雑な流通体系もあり、日本の出版社などが電子書籍向けにコンテンツを開放しないせいではないか」
というように、難しいようです。何というか、アメリカの著作権というとディズニーの横暴ばかりに目がいきがちですが、日本の著作権の実態はそんな物が問題にならないくらい、実はひどいのではないか?流通の仕組みを変えないことにはネットワーク型のコンテンツ流通が普及する日は来ないのではないか・・・そういったおぼろげな不安を感じました。
さて、現在日本の電子書籍は、携帯電話にプラットフォームを移しつつあるようです。携帯小説が流行っているように、携帯の画面でも十分に長文を読めるようですが・・・私は、せめてiPhone程度の大きさで読めるような端末が現れないか期待するところです。