ないものがあったのだがそれがなんだったかを思い出せないということがあった。
「あれ、なんだったっけ。えーと」といくら考えても、それがなんだったのか出てこない。
ようやく、洗面所で使うもの、というところまでは思い出せたのだが、そこまで。
ひげ剃りの刃、シェービングフォーム、整髪料・・・、ほかに何があっただろう。
そのうち「ないものがあるのに思い出せない」という言い方が矛盾しているようだけど正しいことに気がついた。
だじゃれのようだが、日本語の特徴を表していて面白い。
「これはいったいどういうことだ」と、考えはこっちの方に移ってしまった。
歩きながらだったので、どうやら音だけで考えを巡らせていたのが良くなかったのではないかと思って、漢字に直してみた。
「無い物がある」。
ないものを、足りなくなった物、とか使い切った物、とかいえばいいのだが面倒だ。
また、「ある」を「有る」として、「無い物が有る」とすると完く矛盾してしまうような気がするので、「ある」はひらがなのままのほうがいいだろう。
などとやはり歩きながら考えていたら、ドラッグストアの前にさしかかった。
さっき、洗面所で使うものが無いと思っていたけど、なんだっけ。危うく忘れてしまうところだった。
と、急に「あ、アフターシェーブローション。」
店に入り、無事、いつものものを探し出すことができ、翌朝のひげ剃りは事なきを得た。