2月13日
私学入試で連休だった長男を連れて、京の冬の旅の特別公開を見に行きました。
今年は大政奉還150年とかで、幕末関連の史跡を中心に企画されているようです。
近頃めっぽう興味のある島原と壬生に行きました。
(次回には壬生を紹介するつもり)
幕末といえば、私は完全に長州びいきで、新選組などは「幕末のテ〇リスト集団」と位置づけていたのですが・・・
(本来の毛利の本拠地広島の出身で、戦国~幕末までの壮絶な歴史を知ってしまったら、ひいきにならざるを得ません)
夏休みに長男の読書感想文課題だった「燃えよ剣(作・司馬遼太郎)」(新選組と土方歳三の話)を読んでから、
少し新選組の見方が変わり(拷問とか陰惨な影の部分の描写が出てこないせいもありますが)
年末には「壬生義士伝(作・浅田次郎)」(盛岡藩を脱藩し、新選組隊士になった男の話)を読み、
猛烈に壬生に興味がわきました。
そして、すっかり「壬生義士伝」ロスになった私は、この小説とともに浅田次郎の幕末三部作といわれる「輪違屋 糸里」をもとめ、読み始めました。
いまも読んでいる最中ですが、本の舞台の真ん中に来ることが出来るなんて、なんたる幸せ
周りから見たら、何の変哲もない通行人ですが、(多少写真を多く撮っているだけ)
心の中は創造と空想が入り乱れ、大変なことになっているのです。
穏やかでない心中を押し隠しながら、島原の旧花街の入口・大門に入ります。
場所は、京都駅の西側JR丹波口の近く。
いつも野菜を買いに行っている京都中央卸売市場の線路挟んで反対側です。
だから車で行くのも心配なしなんですが、ゆっくり訪れるのは初めてです。
この先に花街の置屋や揚屋があって、往時は賑やかだったそうです。
(新選組が暴れたせいか、地理的に中心地から離れているせいか、次第に衰退、昭和後期にお茶屋組合を解散したそうです)
花魁のいる遊郭と混同されますが(私も小説読むまで勘違いしてました)
島原の太夫には官位の正五位が与えられるほど格式高い場であると同時に、老若男女を問わず気軽に訪れることのできる場所で、江戸の文化サロン的役割を果たしていたそうです。
(文化人が田舎のお母さんを招いて、歌詠みの会などを一緒に楽しむ、的な)
この大門も閉ざされることもなく、芸妓さん(島原では傾城と呼ぶ)も自由に出入りできたそうです。
読んでる小説の舞台「輪違屋」もあります。
島原で現在も唯一営業している置屋だそうです。
見た目は普通サイズの町家ですが、奥行きがものすごく広い建物です。
門が閉ざされていましたが、特別公開されたこともあるそうです。
時期を見逃さず、行ってみたいです。
観覧謝絶の戸にくくられた謎の五円玉 ↑
小説の主人公 島原傾城の天神(太夫の次の地位)糸里は、実存した人物で、
新選組勘定方の平間重助(芹沢鴨率いる水戸派の一人)のなじみだったそうで、芹沢暗殺の現場に居合わせた記録が残っています。
おそらく、このただ一行の史実から構想を膨らませたであろう物語です。
大門から西へ。
午後の西日が逆行となっております。
「京の冬の旅」に合わせて組まれたツアーかな。
賑やかしいのが嬉しいですね。
みやびな赤壁。
なんとなく遊宴のイメージが強いですが・・・
色のついた壁、というのは、色を問わず格式の高さをあらわしたものだそうです。
そういえば、倉敷の美観地区にも不思議な色の旧宅(たしか緑がかった屋根にほんのりオレンジ調の壁)がありましたが、そういう感じの贅を尽くした建物なのでしょうね。
庶民はナチュラルな色の土壁で精一杯だったでしょうし。
現在の料理旅館でも大いにあることでしょうが、
こちらの角屋さんも、お店の隆盛に伴なって、増築を重ねてきたそうです。
受付を過ぎて、お客様向けの玄関の向かいに、この大きな木。
ツケを払わず出入り禁止になった新選組隊士がつけた刀きずが玄関横に残っています。
玄関前を通り過ぎて、台所に・・・
天井が高いです。現代でも、そのまま素敵に活用されそうな建築。
江戸時代までに培われた伝統文化を凝縮したような場所です。
大変萌えるかまどですし、たまらないのは、石造りの流しです。
ここに住みたいです。
↑ 長男 大きくなったでしょう。(参照:古い投稿をご覧ください)お父さんの背を越しました。
きのう「あんたは乾パンに似ている」と言ってやりましたが、そういう人です。16歳にして苔むしています。
さて、角屋で目玉の一つとして公開されている「奥の間」にて、ガイドさんのお話を聞きました。
「京の冬の旅」では、公開されている文化財にはガイドさんが常駐しています。
それが大好きなところです。
すてきな坪庭に・・・
景色を邪魔しないよう、できる限り柱を取り除いた屋根。
天秤の原理をつかって支えているそうです。日本人すごい!
メインのお庭。ちなみに、むかって右側の茶室の横はJR高架。
こんなに風雅なのに、5分おきくらいに電車が通る面白い場所。
小さい子も退屈しないかもしれません。
さて、この奥の間は、芹沢鴨が暗殺をされる直前、最後の宴会を楽しんだ場所なのだそうです。
芹沢鴨は、「狙われて当然」「天下の大悪人」的なキャラとして描かれることが多いですが、
「輪違屋糸里」では、多少温かみのある部分も描かれていて、どんな人だったか、ここに残る残像に尋ねてみたくなります。
刀箪笥。
一般市民のいる建物では腰のものを預けてから入るのが、最低限の武士のたしなみであったようです。
角屋拝観では、本来の目的をすっかり忘れ、素敵な建築と調度品に心を奪われました。
ここ住みたい~また来たい~と言ってました。
(長男には聞き流されるんですけどね。)
また、知らなければ「きれいな建物」としてのみ記憶に残る建物ですが、
ここで様々な境遇を持った人が行き来していたかと思うと、何とも言えない気分になるのでした。
「小説バンザイ」です。