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第2次大交易時代

2020年04月20日 | 高3用 授業内容をもう一度
「第2次大交易時代」では西欧商人の交易活動によってそれまで分立していた地域が地球規模で結び付けられ、相互に影響を与える時代が始まったわけです。16世紀後半に武装化したポルトガル商人が大西洋からアジアの海域で活躍しました。南シナ海や東シナ海では中継貿易に参加しています。しかし紅海を遮断できなかったためマムルーク朝の交易活動を抑えることができなかったといえます。
南米ボリビアのポトシ銀山(1545年発見)やメキシコのサカテカス銀山(1548年発見)を発見したスペインはメキシコのアカプルコ港から太平洋を横断してフィリピンのマニラ市(1571年建設)経由で明に銀を持ち込みました。日本銀と合わせてメキシコ銀が世界に銀本位制経済をもたらしました。
17世紀アジア海域における「第2次大交易時代」の主役はオランダ商人です。1619年バタヴィア市建設、1623年アンボイナ事件、1624年台湾ゼーランディア城、1641年マラッカをポルトガルから奪取、1669年インドネシアのマッカサルもポルトガルから奪取し、南シナ海の香料貿易を支配しました。なお大西洋とアジア海域とを結ぶケープタウン建設は1652年です。また、オランダはバルト海を利用して東欧諸国と交易しています。穀物・帆布・木材・タールを西欧に持ち込みました。

1980年東大本試第1問 地理上の発見の世界史的意義

2020年04月20日 | 論述問題
1980年東大本試第1問

 いわゆる「地理上の発見」にともなうヨーロッパ人の海外進出は、世界の諸地域における変化・変動のきっかけとなったとみられている。このできごとの意義を世界史の観点からとらえ、進出をおこなったヨーロッパ、およびそれを受けたアメリカ、アジア等の諸地域における、16世紀末までの変化・変動について、650字以内で述べよ。


解き方
最初に、この問題が求めている問いを問題文から判断します。
①世界史の観点からみた地理上の発見の意義
②1492年~16世紀末のヨーロッパにおける変化・変動
③1492年~16世紀末のアメリカにおける変化・変動
④1492年~16世紀末のアジア等における変化・変動
ただし、②は「ヨーロッパ」とあるので西欧と東欧、③はアメリカとあるので北米と中年米・南米、④アジアなどとあるのでアフリカ、についても記述するべきだろうと考えます。ここが東大世界史を説く上での重要ポイントです。つねにリード文・問題文から考える姿勢です。東大世界史では無駄な文はないと考えたいところです。

次に字数配分を考えます。大きく4点書くのでそれぞれ150字ずつ。ただし650字以内とあるので書くことが多そうな②を200字としたらちょうど良さそうです。

解説
①世界史の観点からみた地理上の発見の意義:
 「地理上の発見」の意義を世界史の観点から書くので、「第2次大交易時代」として「地理上の発見」を捉える。商業革命のようなヨーロッパ商業活動の変化ではなく世界貿易の変化として捉えることです。
 以下は高校世界史の基礎知識です。
 世界の交易ははじめそれぞれの文化圏とその周辺海域に限られていました。その中でローマ帝国と漢王朝、アッバース朝と唐王朝が東西で繁栄した時期にインド洋と南シナ海を結ぶ「海のシルクロード」が存在しました。この時期の特徴は東西の文化圏が相互に影響しあう側面は小さく、物流が中心といえます。
「海のシルクロード」が発展的に完成したのは「第1次大交易時代」です。モンゴル帝国によってユーラシア大陸とその南方海域が一つの交易路として成立しました。ただし、この時期の交易活動は陸路ではジャムチが整備されていたものの、海路はアレクサンドリアやカイロのカーリミー商人がダウ船を利用して紅海からアラビア海で活躍し、ベンガル湾から南シナ海ではジャンク船を使った中国民間商人が活躍しました。しかしこの「第1次大交易時代」はモンゴル帝国の分裂と前期倭寇にともなう明王朝の海禁策で終焉しました。

さらに「第2次大交易時代」では西欧商人の交易活動によってそれまで分立していた地域が地球規模で結び付けられ、相互に影響を与える時代が始まったわけです。16世紀後半に武装化したポルトガル商人が大西洋からアジアの海域で活躍しました。南シナ海や東シナ海では中継貿易に参加しています。しかし紅海を遮断できなかったためマムルーク朝の交易活動を抑えることができなかったといえます。
南米ボリビアのポトシ銀山(1545年発見)やメキシコのサカテカス銀山(1548年発見)を発見したスペインはメキシコのアカプルコ港から太平洋を横断してフィリピンのマニラ市(1571年建設)経由で明に銀を持ち込みました。日本銀と合わせてメキシコ銀が世界に銀本位制経済をもたらしました。
17世紀アジア海域における「第2次大交易時代」の主役はオランダ商人です。1619年バタヴィア市建設、1623年アンボイナ事件、1624年台湾ゼーランディア城、1641年マラッカをポルトガルから奪取、1669年インドネシアのマッカサルもポルトガルから奪取し、南シナ海の香料貿易を支配しました。なお大西洋とアジア海域とを結ぶケープタウン建設は1652年です。また、オランダはバルト海を利用して東欧諸国と交易しています。穀物・帆布・木材・タールを西欧に持ち込みました。
以上のように「第2次大交易時代」がこれまでの時代と違うのは、西欧勢力が各地にそれまであった現地支配者を排除して要塞を建設している点でしょう。

「地理上の発見」を「第2次大交易時代」の幕開けとして捉え、各地域が西欧諸国によって地球規模で結び付けられ、相互に影響を与える時代の始まりと考えます。この問題では世界史の大きな文脈に位置付ける記述が求められています。

②1492年~16世紀末のヨーロッパにおける変化・変動
使用する用語:西欧について150字程度。商業革命とその影響・価格革命とその影響・覇権国家・中核国
使用する用語:東欧について50字程度。穀物供給地域として周辺国の地位に置かれた

③1492年~16世紀末のアメリカにおける変化・変動
使用する用語:北米について50字程度。インディアンを排除して東海岸にアングロサクソンが入植
使用する用語:中年米南米について100字程度。アステカ帝国とインカ帝国が滅亡・17世紀までエンコミエンダ制・カトリック布教・インディアンが激減しアフリカから黒人奴隷を持ち込んだ

④1492年~16世紀末のアジア等における変化・変動
使用する用語:中国について50字程度。1570年代に江南地方から一条鞭法が広がる(銅経済の両税法からメキシコ銀流入で経済規模か拡大し一条鞭法が採用され銀経済の時代に変化した)・銀と紙幣による経済活動・トウモロコシ栽培で人口が急増
使用する用語:日本について50字程度。鉄砲伝来により統一が早まる・イエズス会がカトリックを布教
使用する用語:その他の地域について50字程度。フィリピンがカトリック化・オランダが台湾や東南アジア各地に貿易拠点を建設し中継貿易を行った・
 
 














2009年東大本試第2問 北イタリア諸都市

2020年04月20日 | 論述問題
2009年東大本試第2問  

人口集中地としての都市は、古来、一定地域の中心として人々の活動の重要な場であり続けてきた。それらの都市は、周囲の都市や農村との関係に応じて、都市ごとに異なる機能を果たしてきたが、ある特定の地域や時代に共通する外観や特徴を示す場合もある。以上の点をふまえて、次の3つの設問に答えなさい。解答は、解答欄(ロ)を用い、設問ごとに行を改め、冒頭に(1)~(3)の番号を付して記しなさい。
 
問(3) 西ヨーロッパでは、11世紀ころから商業活動が活発化し、さびれていた古い都市が復活するとともに、新しい都市も生まれた。(a)地中海沿岸や北海・バルト海沿岸の都市のいくつかは、遠隔地交易によって莫大な富を蓄積し、経済的繁栄を享受することになった。(b)また、強い政治力をもち独立した都市のなかには、その安全と利益を守るために、都市どうしで同盟を結ぶところも出てきた。下線部(a)・(b)に対応する以下の問いに、冒頭に(a)・(b)を付して答えない。

 (a) 地中海における遠隔地交易を代表する東方交易について、2行以内で説明しなさい。
 (b) 北イタリアに結成された都市同盟について、2行以内で説明しなさい。


解き方と解説
(a) この問題では東方交易を「地中海における遠隔地貿易の代表」と位置付けています。つまり「地中海を舞台」とした「遠隔地貿易」という意味合いから「東方交易」を説明する必要がありそうです。 また「遠隔地交易によって莫大な富を蓄積し、経済的繁栄を享受することになった」とあるのでこれを具体化してルネサンス期の繁栄まで書く必要があると判断できます。
東大世界史ではこのように「何を書くのか?」を自分で判断せずに問題文から読み取ることが重要です。また、リード文から記述する時期がわかります。つまり11世紀から北イタリア諸都市が繁栄した15世紀くらいまででしょう。
つぎに60字以内の記述なので、3つ程度の重要語句を考えます。
交易の担い手:北イタリア諸都市とカイロのカーリミー商人
扱った商品の特徴:香辛料などの小さくて軽い付加価値が高い商品
交易の結果:ルネサンスの繁栄を築いた

(b) 高校世界史の知識からロンバルディア都市同盟を記述します。しかしすぐに書き始めずにもう一度リード文・問題文を見たいところです。東大世界史には模範解答が存在するようです。つまり解答は1つ。そのためには記述を限定する必要があります。そのためにリード文・問題文があるわけです。リード文に「周囲の都市や農村との関係」「共通する外観や特徴」とあり、問題文に「強い政治力をもち独立した都市」とあります。したがってこの問題が求めているロンバルディア都市同盟の説明は以下の点でしょう。
周囲の都市や農村との関係:コムーネ
共通する外観や特徴:都市を囲む城壁
強い政治力:都市貴族による共和制
独立した都市:ミラノを中心として神聖ローマ帝国皇帝に対抗して結成した