Reflections

時のかけらたち

吉右衛門と玉三郎 ・・・ Kichiemon & Tamasaburo, Kabuki actor

2020-09-15 18:53:59 | art


高校生の頃だったか、歌舞伎教室で国立劇場へ2回見に行った記憶があります。
1回は当時の三津五郎さんが解説するという贅沢なものでした。「義経千本桜」を見たのですが、あのキラキラさと
女形のかん高い声が苦手で、歌舞伎に行く気はずっとしていませんでした。

最近、能、文楽を日本の伝統芸能を見て行くうちに、歌舞伎も見てみようかしらということになり、機会があり申し込んだら
コロナで公演中止となってしまいました。また玉三郎の舞だけは見たいと思い、思い切って京丹後での公演を申し込んだら
これも中止。



先月から歌舞伎が再開されて、都民劇場の案内の中に抽選で行くことができる歌舞伎の案内があり、なんと玉三郎の鷺娘と
吉右衛門の舞台があったので、さっそく申し込んだら、当たり、昨日行ってきました。
大人になってからの初めての歌舞伎、歌舞伎座も初めてでした。コロナ予防のため、検温、消毒、座席は両隣は空席となって
密を避けていました。掛け声なども禁止。
コロナの後初めての鑑賞が日本の伝統芸となりました。クラシック音楽がとても聞きたくなっていましたが、最後に聴きに行ったのが
エサ=ペッカ・サロネン とフィルハーモニア管弦楽団のストラヴィンスキーとアンコールのラヴェル マ・メール・ロアからの1曲。
1月以来の生の舞台が日本の音楽だったことが何か感慨深いです。都民劇場は11月のコンサートもキャンセルとなり、11月の
ホセ・カレーラスは中止にはなっていませんが、どのような開催にするのか不安は残ります。

昨日は今にも雨が降りそうで、夜は雨の天気予報だったので、和服の場合は小千谷縮と思っていたのですが、午前中に
ヨガもあり、夕食の準備などして出かけるには和服は時間がかかりすぎるので楽な洋服にしました。今回は見るのに
とにかく集中したいという思いでした。

第三部
秀山ゆかりの狂言
双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)
引窓



髪長五郎             吉右衛門
南与兵衛後に南方十次兵衛    菊之助
平岡丹平             歌 昇
三原伝造             種之助
お早                雀右衛門
お幸                東 蔵

第四部
映像×舞踊 特別公演
口上(こうじょう)

口上               玉三郎

鷺娘(さぎむすめ)
鷺の精               玉三郎



第3部の幕が上がると三味線の音もきれいな音色で、以前の苦手感が消えました。
吉右衛門が若々しい声で驚きました。菊之助はさすが美しくせりふも型も素晴らしかったです。
文楽が下敷きになっているとどこかに書かれていましたが、人の気持ち、人情のやり取りが
描かれています。私はまずお能を見て、それから文楽を見て、最後に歌舞伎というコースなので
文楽の印象が強く、歌舞伎を見ても人形ではなく人間が動いていると思いました。
素晴らしいフォームと声とこれは日本のミュージカル。動きは舞のようです。

「打ち上げ花火に例えるなら、役者は花火師でも花火でもあります。舞台の上で花開かせ、皆さんに感動を
お届けしたい。9月は挑戦のような思いも、初舞台のような思いもございます」
と毎日新聞の記事で吉右衛門の言葉が紹介されていました。
中村吉右衛門さん 「双蝶々曲輪日記」を語る 義理とまことの親子の切ない情愛=完全版

一番最初に見るのは吉右衛門と思っていたので、彼らしい役どころで良かったです。菊之助もいい役どころで
役にもよるのでしょうが色気があります。この夫婦の成り立ちのストーリーはわからないのですが、やさしい心根の
妻も元遊女の設定。吉右衛門さんは通して上演したかったけれどこのご時世で一幕だけの上演になっています。
本来なら、罪を償わなければいけない立場の濡れ髪を周りの人達の思いが渦巻いて、彼を逃がしてしまうという結果。
皆が他の人を思いやるという気持ちが交錯するドラマです。いろいろな歌舞伎のパターンが見れて面白かったです。
今まであまり好きでなかった三味線の音が美しく響きました。

3部が終わって3階からエレベーターで降りるとき、中にいた老人が引き窓が一番良かったねと話していました。
菊之助のせりふもずいぶん通るようになったと。これからが楽しみな役者です。



  

でも圧巻は第4部の玉三郎でした。このシーンに立ち会えたことを嬉しく思いました。もう全部を通して踊ることは
難しいようですが、集大成を見る思いです。流れるように舞う姿が美しかったです。来月の楊貴妃のチケットも取れて
続けて玉三郎を見ることができます。武原はんさんの地唄舞は昔TVでしか見たことがありませんが、ああいう舞が好きです。

カーテンコールも何度もあり、人数を半分に抑えた観客でも拍手が響き渡りました。



参考)
引窓・角力場〜双蝶々曲輪日記【歌舞伎演目】のあらすじ、登場人物、見どころ紹介
劇評をどう読むか
2020年9月歌舞伎座 第三部、第四部 不思議な体験 渡辺保の歌舞伎劇評より






初めての歌舞伎座は残念ながら洋服で。せめて能登上布のような布で作ったジャケットをはおって。













































Sep.14 2020 Ginza



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2 コメント

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Unknown (香子)
2020-09-16 08:43:28
ご覧になられて良かったでした。
映像の頃のタマさまも100%動けていたわけじゃなかったですが
でも素人には十分過ぎるくらいでした。
滝夜叉姫や阿古屋も見られてワタシは目がハートでした♪
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歌舞伎 (カンカン)
2020-09-16 16:03:37
香子さま ありがとうございます。
映像と現実の舞台が交差しておもしろい演出でした。
玉三郎にはオーラがありました。
昔、ジョルジョ・ドンと確か当時の猿之助が「音楽の友」で対談をして、歌舞伎役者がいつまでも活躍できてうらやましいとバレエ・ダンサーであるジョルジョ・ドンが話していたことをよく覚えています。バレエより息が長いとはいえ、高齢になった玉三郎がこれだけ舞うことができるのはすごいと思いました。大きな感動をいただきました。
歌舞伎の世界、これから少しずつ楽しみたいと思います。これからもいろいろ教えてくださいね。よろしくお願いいたします。
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