4月9日
イタリア文化会館
この日は星岡の日本料理講習会があった日ですが、前日イタリア文化会館より、キャンセルが出たという連絡が来て、夜の上映会に行くことができました。イタリア文化会館からはニュースレターの配信があってからすぐ申し込んでも大抵のものはキャンセル待ちです。
昨年の第77回ヴェネツィア国際映画祭において、黒沢清監督が「スパイの妻<劇場版>」で銀獅子賞を受賞したのを記念し、同作(英語字幕付BD)の上映会を開催します。
なお、上映に先立ち、監督とヴェネツィア国際映画祭ディレクターのアルベルト・バルベーラ氏によるトークがあります(日伊同時通訳付)。司会は古賀太氏(日本大学芸術学部映画学科教授)です。
監督:黒沢清
出演:蒼井優、高橋一生、東出昌大ほか
脚本:濱口竜介、野原位、黒沢清
音楽:長岡亮介
黒沢監督の映画は「岸辺の旅」しか見たことがないけれど、映像の美しさは今までの日本映画ではあまり感じたことがありません。日本映画でない感覚でヨーロッパの映画を連想させる。しかし黒沢氏自身は私は日本映画を撮っているとどこかのインタビューで答えていて、私にとっては意外でした。
アメリカ映画のクラシックを彷彿させるとバルベーラ氏が話していました。ヒッチコックという名前も挙がっていました。
第二次世界大戦下の戦争に巻き込まれていった普通の人たちを描いてみたかったとどこかで話していました。それがかえってすぐそこに存在しうるような感覚でした。戦時下の日常の中で描くサスペンス。
最初の場面で舞台は日本でなく、上海かどこかのような感覚でしたが、まるでアイヴォリー監督の映画を見ているようでした。見ているうちにそこが神戸だったことがわかりました。主役の二人もすごく良かったです。特に蒼井優はお見事でした。大河ドラマの「龍馬伝」でいい女優さんが出てきたと思っていましたが、ますます成長したような感じでした。ちょうどこの会が開催されたころNHKでメイキングについてのドキュメンタリーを2本放送して、蒼井優を絶賛していました。
映画の中で印象に残った言葉をメモしておきます。特に妻の最後の言葉が力強くて凄味がありました。
あなた方の普通が誰かにとって批判や攻撃の対象になる
僕はコスモポリタン、万国の共通の正義のために忠誠を誓う
不正義の上の幸福は幸福ではない
私は正常です。狂っていないということが、この国では狂っていることなのです。
私も長く生きてきてしまいましたが、この戦争が終わったのがまだ生まれる数年前です。この映画はリアリズムでありませんが、戦争の空気を肌で感じることができる映画でした。そのときの個人と正義、人間の尊厳など考えさせられる映画でした。
当日イタリアと日本をつないだ対談では同時通訳のイヤホンを渡されて聴いていたのですが、途中で入らなくなり、最後のところだけ何を言っているのかよくわからなかったので、イタリア文化会館のYouTubeチャンネルで対談をアップしてくれたのは助かりました。
「スパイの妻<劇場版>」 黒沢清監督とアルベルト・バルベーラ氏によるトーク 日本語同時通訳版
"Moglie di una spia". Conversazione tra Kurosawa Kiyoshi e Alberto Barbera イタリア語版
April 9 2021 Kudan
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