福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書 | |
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ディスカヴァー・トゥエンティワン |
先日東北旅行に行った帰りに寄った盛岡駅の書店に置いてあったものだ。さすが東北は地震関係の書籍が関東と比べて多い。この本は先頃話題になった原発事故の独立検証委員会の報告書である。
政府と国会で別々に検証を進めているが、この委員会はそれとも別の純然たる民間で検証したものだ。ただし東京電力の協力が得られないため、その部分は抜けている。
400ページに及ぶ厚い本だ。結構読むのに時間がかかった。エネルギー産業に働くものとして共通的なこともチラホラある。
私の感じたポイントは、以下の5点である。
(1)菅総理の初動措置、初めは全くの空回り、邪魔にさえなっていた。官邸には図面も通信機器もスピーディなどのシステムもない。ないない尽くしの官邸から現場の細かなことを指示してはならない。現場から見るとおかしな指示になる。しかし菅総理がトップと役割を果たしたのは、3月15日に東京電力本社へ乗り込んだ時、東電の対応を変えるターニングポイントになった、と委員会は評価している。
(2)菅総理が、海水を入れて冷却していて危険ではないかとの質問に、その怒鳴る勢いで、斑目委員長があり得ないことではないと答える。ほんとは問題ないのに怒鳴り声でそのような答え方をしたため、海水をストップすることになってしまった。これは指揮官におびえて間違って判断になってしまった、時折あるKY、空気の問題だ。
(3)海水注入の判断。官邸の指示を受けて、東電では海水注入を中止した、と思っていたら、現場の吉田所長は、継続していた。この種のおかしな指示とそれへの現場の対応は私も経験したことがあるが、吉田所長は黙って継続していた。報告書は一部に英雄視する向きもあるが、万一それが重要なことなら、日本国民全体に影響する話で、現場の所長レベルの判断ではない、と厳しく評価している。
(4)そして原発関係者の訓練、関係者は対応できるのもを選んで想定して訓練を行っていた。対応できないものは想定していなかった。だから想定外なのだった。ありそうな話である。
(5)最後にテロ対策、外国はテロ対策が必ず入るが、日本ではあまり考えない。原発再稼働の検証でもテロ対策はどうなってるんだろうか。しかしオウムのような者が原発にサリンをまくとしばらくは誰も何もできなくなってしまう。大丈夫なんだろうか。
この後、政府や国会の報告も出される。比較検討してみよう。