シングル・モルト・ウイスキーの蒸留所が数多く存在するIslay(アイラ)という名前の島が、スコットランドにある。私はそこの土地の権利(私が死んでも家族友人に譲渡は出来ない)を手に入れた。面積は1平方フィートに過ぎない。今から8年前の話である。。画像は私宛に発行された貸借契約証書を額装したもので、我が家のダイニング・ルームの壁に飾られている。
このDistilleryとやりとりすると、まずはいきなり私がその土地の権利者となってしまう。この証書を読むと、私に対し土地の年間賃借料を1杯のLaphroaigで支払うことを、Distilleryが約束している。ということはこの証書が表す貸借契約においては土地の賃貸人は私であり、私はLaphroaig Distillery(香りの強さというか臭さで有名なシングル・モルトの蒸留所)にその土地を転貸していることとなる。
その証書の内容はおおよそ以下のとおりである:
○○○○(解説:私の名前)は生涯にわたり、我々Laphroaig Distilleryに記録された未登記の区画の土地の・・・我々は年間賃料を、実際にあなたが当地に現れ我々に要求すれば、一杯のLaphroaigで支払うことに同意する・・・勝手にその土地でピートを掘ったり羊を飼ったりしてはならず・・・到着されれば、我々はあなたの区画がどこであるかを示すに十分な地図とアイラ島のひどい天候と異常なまでのワイルド・ライフからあなたを守るウェア類を提供する。加えて土地区画を確定するのに必要なメジャーにもなるサイズ12のウェリントン・ブーツ(解説:デタラメに大きい。12のサイズの靴の外形の長さは約1フィートなので、1平方フィートの土地区画を測るのに最適なのである)。さらには低く飛ぶガチョウからあなたの頭を守るヘルメット、スコットランド名物の冷たい霧に耐える分厚いコート、突風で海に飛ばされることを防ぐ命綱とアンカー、まとわりついて来るテンの侵入を防ぐためズボンの裾をしっかりと結わえる紐、人懐っこいカワウソのなんとも迷惑な歓迎に出会ってしまった場合にあなたの体を拭くタオル・・・土地区画番号148443、2001年5月9日、Iain Henderson, Laphroaig Distillery
証書の下端にある私の区画番号とHenderson氏のサイン(↑)だ。実はシングル・モルトが好きな人なら、たいていこのサービスを知っている。つまりはLaphroaig Distilleryの冗談のような約束なのである。この蒸留所は壮大なユーモアのセンスを持っている。世界にはこのユーモアを喜んで受け入れ、私と同様に、しかし異なる区画番号の土地の権利を持つとされる人々が何十万人もいるらしい。
このLaphroaigが生産されるアイラ島には行ったことがない。あまりに遠いからだ。しかしスコットランドの他の地域は2度行ったことがある。1度は長い旅だった。1987年のことで、その時はスコットランドをぐるっと回った。私にとって2台目のクルマであるボロボロのBMW320iに乗って、画像のような草地と岩山と入り江あるいは湖ばかりでやたら静かな土地の安宿に泊まりながら、ゆっくりと移動した。私は元々暑いのが嫌いで寒いのが好きで、どちらかと言うと明るいのより少々暗めが好きである。7月の終わりなのに分厚いセーターが手放させず、曇天か小雨の続く荒涼とした景色のスコットランドから帰りたくなくなってしまった。
アイラ島から比較的近いスカイ島(画像)には行った。巨大な蕗の葉を見た。あまりに巨大で驚いたが、形からしてどう見ても日本の蕗と同じ形だった。アザラシ・ツアーに参加してなんとも友好的なアザラシを多数見た。アザラシもこちらを見ていた。ダンヴェガンという名の城があり、そこの城主だったMacleod族の歴史を知り、多くのMacナントカという苗字やスコットランドのクランに興味を覚え、ついでにアイルランドにやたらあるO'ナントカ(オニールとかオマリーとかオハラとかオコナーとか・・・)という苗字にも興味を持つようになった。
未体験の方は、是非スコットランドを訪問されると良い。静寂とは何か、長年にわたり持続可能な生活とは何かを考える良い機会である。掲載した画像の岩山や島のような静かな景色の中に、いきなり巨大でど派手な色彩を使った看板が現れることもない。音楽が流れることもない。日本の田舎は美しい景観や静寂を破壊する看板、建物、騒音が溢れている。日本以外の先進国でも、都会では視覚聴覚の刺激が多少は避けられないものだが、日本のそれは都会も田舎も暴力的なものが多い。それが許されるということは、つまり我々日本人の視覚聴覚、あるいはそれに係る文化があまり鋭いモノではないことを示すのであろう。
最近「地区計画についてのアンケート」を実施した西武七里ガ浜住宅地の皆さん! 是非スコットランドにしばらく滞在してみて、「視覚・聴覚の観点から維持されるべき環境や景観について考えるツアー」を企画しましょう!・・・無理か。
さてやっと話がウイスキーにたどり着いた。ご覧の画像がLaphroaigのボトルである。中身の香りは薬品臭のようだ。クレオソートのような香りと言えば、かなりぴったり来る。
この画像はラベルを拡大したモノだ。中央にあるのはチャールズ皇太子の紋章だ。あの国では紋章を一人一人決めて行く。1行目右端に「Prince of Wales(チャールズ皇太子のこと)」とあるでしょう。なぜイングランドの皇太子がウェールズの皇太子と呼ばれるのか?・・・長くなるので、関心がある方はご自分で調べて欲しい。さてこの紋章があるということは、つまり王室御用達なのである。「ウェールズの皇太子」と呼ばれるイングランドの皇太子が指定するスコットランドの酒だ。これで北アイルランドが加われば、UKとして完璧なのだが。同じくアイラ島にあるライバルのLagavulin(ラガヴーリン)蒸留所と同様、強烈にスモーキーな香りがLaphroaigの魅力である。ウイスキーに慣れぬ人が飲むと、美味しいとは思わないことだろう。
昔、鉄の女(英国首相サッチャーのこと)が来日して日本産のウイスキーを飲み「日本の高い関税のせいで、スコットランドのもっと美味しいウイスキーが日本に輸入されない。日本は関税を下げろ」と言った。後年それについて、サントリーの社長だった佐治敬三氏が日本経済新聞の「私の履歴書」欄に書いていた。「そうは言っても、日本のウイスキーの多くはスコットランドのそれとは異なる飲み方をするのである。水割りにして和食を食べながら飲んだりもする。飲む時は口に含み、舌や歯茎に滲みわたらせ、その味や香りを楽しみながら飲むのである。彼の地のように口からのどに短時間で放り込み、残った香りだけを楽しんでいるのではない。風味が異なるのは当然だ」と、そんな趣旨の文章だった。
私は佐治社長の主張を理解する。最近のサントリーやニッカが供給する高価なシングル・モルトは別にして、日本の多くのウイスキーは意図される使い方が別物であると考えた方が良い。前回こちらで書いたマーマレードの話と同じである。同じ名称だが、材料や作り方や気候や文化や歴史に少しずつ差があり、その結果出来上がったモノは、微妙にあるいははっきりと別物になるのである。コーヒーも同様だ。日本人なら誰もが口に含み「おいしい」と感じそうなコーヒーを、ある英国人が「妙な味だ」と言うのを聞いたことがある。場所が違えば、そこで正統とされる味や香りも異なる。日本人も世界中の料理を勝手に変えて広く楽しんでいる。カレーライスはその典型だ。
私は、Laphroaigに限らずそれぞれの主張があるシングル・モルトを水割りにして飲む英国人を見たことがない。上の画像はストレート。ただし水滴を2~3垂らしたものである。Laphroaigくらいに強烈で個性的なシングル・モルトになれば、水で薄めて和食を食べながら飲む人もあまりいないだろう。
私は個性を尊ぶ精神とユーモアのセンスが大事であると思っているが、Laphroaigは個性もユーモアも持ち合わせている。さあLaphroaigのボトルを一1本買って、あなたもFOL(Friends of Laphroaigの略)の一人になろう。サントリーの資本が入ってからは、日本でもかなり買いやすくなった。詳細はウェブサイトから。ものすごく楽しいサイトだ。
http://www.laphroaig.com
このDistilleryとやりとりすると、まずはいきなり私がその土地の権利者となってしまう。この証書を読むと、私に対し土地の年間賃借料を1杯のLaphroaigで支払うことを、Distilleryが約束している。ということはこの証書が表す貸借契約においては土地の賃貸人は私であり、私はLaphroaig Distillery(香りの強さというか臭さで有名なシングル・モルトの蒸留所)にその土地を転貸していることとなる。
その証書の内容はおおよそ以下のとおりである:
○○○○(解説:私の名前)は生涯にわたり、我々Laphroaig Distilleryに記録された未登記の区画の土地の・・・我々は年間賃料を、実際にあなたが当地に現れ我々に要求すれば、一杯のLaphroaigで支払うことに同意する・・・勝手にその土地でピートを掘ったり羊を飼ったりしてはならず・・・到着されれば、我々はあなたの区画がどこであるかを示すに十分な地図とアイラ島のひどい天候と異常なまでのワイルド・ライフからあなたを守るウェア類を提供する。加えて土地区画を確定するのに必要なメジャーにもなるサイズ12のウェリントン・ブーツ(解説:デタラメに大きい。12のサイズの靴の外形の長さは約1フィートなので、1平方フィートの土地区画を測るのに最適なのである)。さらには低く飛ぶガチョウからあなたの頭を守るヘルメット、スコットランド名物の冷たい霧に耐える分厚いコート、突風で海に飛ばされることを防ぐ命綱とアンカー、まとわりついて来るテンの侵入を防ぐためズボンの裾をしっかりと結わえる紐、人懐っこいカワウソのなんとも迷惑な歓迎に出会ってしまった場合にあなたの体を拭くタオル・・・土地区画番号148443、2001年5月9日、Iain Henderson, Laphroaig Distillery
証書の下端にある私の区画番号とHenderson氏のサイン(↑)だ。実はシングル・モルトが好きな人なら、たいていこのサービスを知っている。つまりはLaphroaig Distilleryの冗談のような約束なのである。この蒸留所は壮大なユーモアのセンスを持っている。世界にはこのユーモアを喜んで受け入れ、私と同様に、しかし異なる区画番号の土地の権利を持つとされる人々が何十万人もいるらしい。
このLaphroaigが生産されるアイラ島には行ったことがない。あまりに遠いからだ。しかしスコットランドの他の地域は2度行ったことがある。1度は長い旅だった。1987年のことで、その時はスコットランドをぐるっと回った。私にとって2台目のクルマであるボロボロのBMW320iに乗って、画像のような草地と岩山と入り江あるいは湖ばかりでやたら静かな土地の安宿に泊まりながら、ゆっくりと移動した。私は元々暑いのが嫌いで寒いのが好きで、どちらかと言うと明るいのより少々暗めが好きである。7月の終わりなのに分厚いセーターが手放させず、曇天か小雨の続く荒涼とした景色のスコットランドから帰りたくなくなってしまった。
アイラ島から比較的近いスカイ島(画像)には行った。巨大な蕗の葉を見た。あまりに巨大で驚いたが、形からしてどう見ても日本の蕗と同じ形だった。アザラシ・ツアーに参加してなんとも友好的なアザラシを多数見た。アザラシもこちらを見ていた。ダンヴェガンという名の城があり、そこの城主だったMacleod族の歴史を知り、多くのMacナントカという苗字やスコットランドのクランに興味を覚え、ついでにアイルランドにやたらあるO'ナントカ(オニールとかオマリーとかオハラとかオコナーとか・・・)という苗字にも興味を持つようになった。
未体験の方は、是非スコットランドを訪問されると良い。静寂とは何か、長年にわたり持続可能な生活とは何かを考える良い機会である。掲載した画像の岩山や島のような静かな景色の中に、いきなり巨大でど派手な色彩を使った看板が現れることもない。音楽が流れることもない。日本の田舎は美しい景観や静寂を破壊する看板、建物、騒音が溢れている。日本以外の先進国でも、都会では視覚聴覚の刺激が多少は避けられないものだが、日本のそれは都会も田舎も暴力的なものが多い。それが許されるということは、つまり我々日本人の視覚聴覚、あるいはそれに係る文化があまり鋭いモノではないことを示すのであろう。
最近「地区計画についてのアンケート」を実施した西武七里ガ浜住宅地の皆さん! 是非スコットランドにしばらく滞在してみて、「視覚・聴覚の観点から維持されるべき環境や景観について考えるツアー」を企画しましょう!・・・無理か。
さてやっと話がウイスキーにたどり着いた。ご覧の画像がLaphroaigのボトルである。中身の香りは薬品臭のようだ。クレオソートのような香りと言えば、かなりぴったり来る。
この画像はラベルを拡大したモノだ。中央にあるのはチャールズ皇太子の紋章だ。あの国では紋章を一人一人決めて行く。1行目右端に「Prince of Wales(チャールズ皇太子のこと)」とあるでしょう。なぜイングランドの皇太子がウェールズの皇太子と呼ばれるのか?・・・長くなるので、関心がある方はご自分で調べて欲しい。さてこの紋章があるということは、つまり王室御用達なのである。「ウェールズの皇太子」と呼ばれるイングランドの皇太子が指定するスコットランドの酒だ。これで北アイルランドが加われば、UKとして完璧なのだが。同じくアイラ島にあるライバルのLagavulin(ラガヴーリン)蒸留所と同様、強烈にスモーキーな香りがLaphroaigの魅力である。ウイスキーに慣れぬ人が飲むと、美味しいとは思わないことだろう。
昔、鉄の女(英国首相サッチャーのこと)が来日して日本産のウイスキーを飲み「日本の高い関税のせいで、スコットランドのもっと美味しいウイスキーが日本に輸入されない。日本は関税を下げろ」と言った。後年それについて、サントリーの社長だった佐治敬三氏が日本経済新聞の「私の履歴書」欄に書いていた。「そうは言っても、日本のウイスキーの多くはスコットランドのそれとは異なる飲み方をするのである。水割りにして和食を食べながら飲んだりもする。飲む時は口に含み、舌や歯茎に滲みわたらせ、その味や香りを楽しみながら飲むのである。彼の地のように口からのどに短時間で放り込み、残った香りだけを楽しんでいるのではない。風味が異なるのは当然だ」と、そんな趣旨の文章だった。
私は佐治社長の主張を理解する。最近のサントリーやニッカが供給する高価なシングル・モルトは別にして、日本の多くのウイスキーは意図される使い方が別物であると考えた方が良い。前回こちらで書いたマーマレードの話と同じである。同じ名称だが、材料や作り方や気候や文化や歴史に少しずつ差があり、その結果出来上がったモノは、微妙にあるいははっきりと別物になるのである。コーヒーも同様だ。日本人なら誰もが口に含み「おいしい」と感じそうなコーヒーを、ある英国人が「妙な味だ」と言うのを聞いたことがある。場所が違えば、そこで正統とされる味や香りも異なる。日本人も世界中の料理を勝手に変えて広く楽しんでいる。カレーライスはその典型だ。
私は、Laphroaigに限らずそれぞれの主張があるシングル・モルトを水割りにして飲む英国人を見たことがない。上の画像はストレート。ただし水滴を2~3垂らしたものである。Laphroaigくらいに強烈で個性的なシングル・モルトになれば、水で薄めて和食を食べながら飲む人もあまりいないだろう。
私は個性を尊ぶ精神とユーモアのセンスが大事であると思っているが、Laphroaigは個性もユーモアも持ち合わせている。さあLaphroaigのボトルを一1本買って、あなたもFOL(Friends of Laphroaigの略)の一人になろう。サントリーの資本が入ってからは、日本でもかなり買いやすくなった。詳細はウェブサイトから。ものすごく楽しいサイトだ。
http://www.laphroaig.com
最初のHPでありました『O'ナントカ』とはなんと読むのだったのでしょうか?
確か最後のほうのスペルがqueだったような。。。
「O'」にはどのような意味があるのでしょうか。
そして失礼かもしれませんが、おちゃさんの最初のHPが面白くてユーモアいっぱいなので、私は『茶楽』と『オチャラケ』をひっかけた素敵なハンドル名と思ってました。
お茶を飲んで楽々生活、という伊豆の
夫婦の話を聞いて「お茶楽」という
名前がいいと思い、でもどこの名前かよく
わからんのがいいと思い、O'Charaqueとして
オチャラクと読んでもらいました。
そのとおりオチャラケともひっかけて
ました。
O'はいろいろあるようですが、ほぼ
「of」と思えば良いようです。例えば、
O'Connor(オコナー)は「of Connor」。
Hiroshi O'ConnorはHiroshi of Connorと
同義で、「コナーさんの」という意味です。
「コナーさんちのひろしさん」くらいの
感じでしょうか。
やっぱりそうでしたか。
O'Charaqueさん、素敵です。
O'がofとは勉強になりました。
トーマス・オマリーさんはマリーさんのトーマス坊ちゃんということでしょうか。
なかなか面白いですね。
明日は珍しく東京出張です。
年に1回ぐらいでしょうか。
その頻度で召集されます。
雨だったらじゃまくさいなあ。
暖かい一日でしたでしょ。しかし
また明日は寒くなりそうです。
O'なんとかも、今ではそれも含めて
普通の苗字になっているのでしょうけどね。
いろいろと面白いですね。
O'Haraなんて、日本の名前と同じような。