10/20河北新報WEBが伝えておりました。
-第10部・潜む活断層(2)「値切り」/過小評価、次々と露呈-
<卒論がきっかけ>
中国電力島根原発(松江市)の南約2.5キロを走る活断層が実際より短く評価されていたことに気付いたのは、地理学を学んでいた広島大文学部の学生が2001年1月に提出した卒業論文がきっかけだった。
当時、同大教授だった中田高氏(現名誉教授・変動地形学)は、近くに原発があるという意識もなく、断層がどこまで続いているか見落とさないよう学生に指示した。
活断層の想定距離はどんどん伸び、18キロに及んだ。中国電が1998年、島根原発3号機増設に向けた地質調査で確認したのは8キロ。その倍以上になった。
活断層の長さから予想される地震規模はマグニチュード(M)7.0。中国電が耐震設計で考慮したM6.5を超えた。
中田氏らは06年、活断層があると思われた場所に試掘溝(トレンチ)を作り、存在を実証した。
だが、島根原発3号機はその前年、活断層の規模が過小評価されたまま国の設置許可を受けていた。国や中国電は08年になって、活断層の長さを22キロに修正。東京電力福島第1原発事故の影響もあり、3号機はいまだ運転を開始していない。
中田氏は「地形を注意深く見れば、学部生でも気付く断層。国と電力会社による安全審査に疑問を持つようになった」と振り返る。
<対策費用に直結>
「値切り」。研究者たちは活断層評価で特に長さを過小に見積もることを、こう呼ぶ。金銭を連想させる響きがあるのは、評価結果が想定すべき地震の規模を決定づけ、電力会社の耐震対策コストの多寡に直結するせいかもしれない。
島根原発で「値切り」が発覚して以降、各地の原子力施設周辺で活断層の過小評価が明らかになり、国や電力会社の調査結果が疑問視された。原子力規制委員会があらためて審査する原子力施設は計11カ所に上る=表=。
東北の原子力施設も例外ではない。青森県東通村の東通原発は、敷地内に活断層がある疑いが強まり、規制委の調査が続く。東北電力は、敷地内の地層のずれは特定の層が地下水を含み、膨らんだためだとする「膨潤説」を主張し、活断層の存在を否定する。
2012年12月に開かれた規制委の有識者会合では東北電に鋭い質問が飛んだ。
「膨潤説を長く提唱していますが、世界中を探して実例を見つけることができましたか?」(有識者)
「住宅が岩盤の膨らみで倒れたと聞いたことはありますが、現象を系統的に報告した論文などはありません」(東北電)
原子炉設置審査で国の許可を得た際の論拠の一つともなった「膨潤説」は、今や劣勢だ。
<「建設が大前提」>
同じ青森県の六ケ所村にある使用済み核燃料再処理工場の敷地内に活断層があることを指摘する専門家もいる。規制委はことし8月、下北半島周辺の地下構造調査に乗り出す方針を決めた。
二つの原子力施設に影響しかねない長さ80キロの巨大な「大陸棚外縁断層」。「日本の活断層 分布図と資料」(80年、東京大学出版会)や海上保安庁の海図にも明記される活断層だが、原子力業界の中では両端の一部だけが活断層とされる。
10年に東通原発と再処理工場の耐震審査を担当し、外縁断層の活動性を指摘した東大大学院の池田安隆准教授(変動地形学)は「国や電力会社は原子力施設を造ることが大前提。そこから逆算し、活断層の長さや存在の有無を決めているとしか思えない」と批判する。
-引用終わり-
-第10部・潜む活断層(2)「値切り」/過小評価、次々と露呈-
<卒論がきっかけ>
中国電力島根原発(松江市)の南約2.5キロを走る活断層が実際より短く評価されていたことに気付いたのは、地理学を学んでいた広島大文学部の学生が2001年1月に提出した卒業論文がきっかけだった。
当時、同大教授だった中田高氏(現名誉教授・変動地形学)は、近くに原発があるという意識もなく、断層がどこまで続いているか見落とさないよう学生に指示した。
活断層の想定距離はどんどん伸び、18キロに及んだ。中国電が1998年、島根原発3号機増設に向けた地質調査で確認したのは8キロ。その倍以上になった。
活断層の長さから予想される地震規模はマグニチュード(M)7.0。中国電が耐震設計で考慮したM6.5を超えた。
中田氏らは06年、活断層があると思われた場所に試掘溝(トレンチ)を作り、存在を実証した。
だが、島根原発3号機はその前年、活断層の規模が過小評価されたまま国の設置許可を受けていた。国や中国電は08年になって、活断層の長さを22キロに修正。東京電力福島第1原発事故の影響もあり、3号機はいまだ運転を開始していない。
中田氏は「地形を注意深く見れば、学部生でも気付く断層。国と電力会社による安全審査に疑問を持つようになった」と振り返る。
<対策費用に直結>
「値切り」。研究者たちは活断層評価で特に長さを過小に見積もることを、こう呼ぶ。金銭を連想させる響きがあるのは、評価結果が想定すべき地震の規模を決定づけ、電力会社の耐震対策コストの多寡に直結するせいかもしれない。
島根原発で「値切り」が発覚して以降、各地の原子力施設周辺で活断層の過小評価が明らかになり、国や電力会社の調査結果が疑問視された。原子力規制委員会があらためて審査する原子力施設は計11カ所に上る=表=。
東北の原子力施設も例外ではない。青森県東通村の東通原発は、敷地内に活断層がある疑いが強まり、規制委の調査が続く。東北電力は、敷地内の地層のずれは特定の層が地下水を含み、膨らんだためだとする「膨潤説」を主張し、活断層の存在を否定する。
2012年12月に開かれた規制委の有識者会合では東北電に鋭い質問が飛んだ。
「膨潤説を長く提唱していますが、世界中を探して実例を見つけることができましたか?」(有識者)
「住宅が岩盤の膨らみで倒れたと聞いたことはありますが、現象を系統的に報告した論文などはありません」(東北電)
原子炉設置審査で国の許可を得た際の論拠の一つともなった「膨潤説」は、今や劣勢だ。
<「建設が大前提」>
同じ青森県の六ケ所村にある使用済み核燃料再処理工場の敷地内に活断層があることを指摘する専門家もいる。規制委はことし8月、下北半島周辺の地下構造調査に乗り出す方針を決めた。
二つの原子力施設に影響しかねない長さ80キロの巨大な「大陸棚外縁断層」。「日本の活断層 分布図と資料」(80年、東京大学出版会)や海上保安庁の海図にも明記される活断層だが、原子力業界の中では両端の一部だけが活断層とされる。
10年に東通原発と再処理工場の耐震審査を担当し、外縁断層の活動性を指摘した東大大学院の池田安隆准教授(変動地形学)は「国や電力会社は原子力施設を造ることが大前提。そこから逆算し、活断層の長さや存在の有無を決めているとしか思えない」と批判する。
-引用終わり-