i氏の海外生活体験記

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原発大国から地熱大国へ

2012-05-15 02:31:26 | 下北の地熱発電
5/8ビデオニュース・ドットコムが伝えておりました。

-村岡洋文:原発大国から地熱大国へ-

 日本は天然資源に乏しい国と言われて久しいが、実は世界有数の天然資源がある。それが地熱だ。環境学者のレスター・ブラウン氏は、活発な火山帯に属し強度の地震が多発する日本には原発は適さないと断じる一方で、地熱発電には絶好の条件が揃っていると指摘し、まったくその逆を行く日本のエネルギー政策を訝った。
  
 実は日本はアメリカ、インドネシアに次いで世界第3位の地熱源を保有する地熱大国なのだ。ところが、実際の地熱発電量を設備容量で見ると、日本は現在世界で第8位に甘んじており、こと地熱発電量では人口が僅か30万余のアイスランドにさえも遅れをとっている状態だ。しかも、地熱のタービン技術に関しては、富士電機、三菱重工、東芝などの日本メーカーが、世界市場を席巻しているにもかかわらずだ。
  
 長年、地熱開発研究に携わってきた弘前大学北日本新エネルギー研究所の村岡洋文教授によると、日本で地熱発電が遅れた理由は明らかに国の政策が影響しているという。2度のオイルショックの後、 日本でも一時、地熱発電を推進する政策が取られたことがあった。しかし、1997年に地熱は「新エネルギー」から除外され、その後、地熱の技術開発に対する公的支援も完全にストップしてしまった。
  
 村岡氏はその背景として、景気後退による財政難と同時に、政府による原発推進政策があったとの見方を示す。出力が安定的なためエネルギーのベースロードを担うのに適している地熱は、ベースロードを原発で賄うエネルギー政策を選択した政府にとって、不要かつ邪魔な存在だったというのだ。また、日本の地熱源の多くが、開発の禁じられている国立・国定公園内に集中していることも、地熱開発の足かせとなった。
  
 しかし、今年3月27日、環境省自然環境局通知により、国立・国定公園内の開発制限が緩和され、公園内の地熱発電所の設置が可能になった。また、4月 25日には経産省の委員会が、地熱によって発電された電気の買取価格が1.5万kW以上の発電所で1キロワット時あたり27.3円、買取期間も15年とする案が出され、それがそのまま実施される可能性が高まっている。上記の2つの条件が揃えば、日本でも地熱発電が15年ぶりに大ブレークする可能性があると、村岡氏は期待を寄せる。
  
 日本で地熱開発が進めば、天候に左右されるほかの自然エネルギーと異なり、24時間安定的に供給が可能な自前のエネルギー源を持つことができる。村岡氏は日本がその潜在力をフルに活かせば、原発に代わる電源となり得ると言う。日本の地熱研究の数少ない専門家の一人である村岡氏を迎え、神保哲生と宮台真司が地熱発電の可能性について議論した。


地熱発電の“失われた15年”

神保: 日本は国際的に見ても地熱発電への適性が高いが、真面目に取り組んでこなかった。しかし、原発事故を受けて再生可能エネルギーが注目され始め、地熱も話題に上るようになりました。
  
 そんななか、4月25日、発電方式ごとの買取価格と買取期間をまとめる調達価格算定委員会が、最終的な価格を出しました。朝日新聞の夕刊で「太陽光、42円」というタイトルの記事が出ており、小さく「地熱も42円」と書いてある。太陽光と同じ価格で、買い取り期間は15年です。こうした状況から、地熱発電が盛り上がる可能性が出てきたのではないかと思います。そこで今回は、地熱発電の現状、課題、可能性について、しっかりと議論しておきたい。ゲストには、日本では数少ない地熱の専門家である、弘前大学北日本新エネルギー研究所教授の村岡洋文をお招きしました。
  
 このテーマを論じるにあたって、地熱の専門家を探しましたが、村岡先生以外にはなかなか見つかりませんでした。日本は地熱の可能性を持っている国なのに、これはなぜでしょうか?
  
村岡: 2度の石油危機を経て、政府が再生可能エネルギーに力を入れるようになり、新エネルギー技術の研究開発を行う「サンシャイン計画」を立ち上げました。その際に、「工業技術院サンシャイン計画推進本部」というものが発足し、実は地熱にもかなりの投資をしてきた。しかし、97年に突然、新エネ特措法(新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法)ができ、施行令で地熱が外されてしまった。それ以来、日本の地熱対策は政策的には行われていません。そのため、新しい専門家が生まれず、先日、日本地熱学会に参加すると、残念ながら年寄りばかりでした。
  
 日本の地熱発電の容量は、70年代にグッとの伸び、しばらくは微増を続け、90年代前半には研究開発の成果が出て、一気に飛躍しました。
  
神保: 日本の地熱発電の容量の推移を見てみると、70年代にグッと伸び、しばらくは微増して、90年代前半に一気に飛躍しています。これは、どういう経緯だったのでしょうか?
  
村岡: 90年代前半から、研究開発の成果がぐっと出始めました。それまで、地熱発電で生産される電力の総量が21万キロワット程度だったところが、7基、8基と地熱発電所ができたことで、一気に53万キロワットほどに成長。ところが、97年に新エネから除外されたことで市場は冷え切り、発電量は横ばいどころか、減少傾向にある。研究開発・技術開発においても地熱は見捨てられ、2002年を持って国の政策的な技術対策はなくなりました。
  
神保 なるほど。この15年で、日本の地熱開発は世界に遅れをとってしまったということですか。
  
村岡: その通りです。一方で、幸いにして、日本製のタービンが世界中で使われており、メーカーだけは活躍を続けています。国内の市場が冷えきっていても勝負できている、ということです。


エネルギー自給の希望の星「温泉発電」

神保: さて、地熱発電とは具体的に、どんな方法で行われているのでしょうか?
  
村岡: 日本の国土は断層だらけで、雨が降ると、その水が地下に浸透していきます。それがマグマなどに温められ、熱水対流系ができる。高温のときには熱水に溶け込んでいた成分が、冷やされると沈殿し、「キャップロック」という水を通しにくい地層を作ります。この下に「地熱貯留層」が滞留することになり、ここから熱水を汲み出して発電する、という方法です。
  
神保: 基本は、熱でタービンを回すという、原子力や水力と仕組みと同じなんですね。
  
村岡: 私たちが2007年くらいから提案しているのが「温泉発電」です。日本では別府のように100度の温度があっても、浴用にしか使っていなかった。つまり、結局は50度くらいまで冷まして利用している。ここで無駄になっている温度を使って発電するのが、温泉発電の考え方です。
  
神保: 地熱発電のメリットについても教えてください。村岡さんは、電力供給の安定性を評価しています。
  
村岡: 自然エネルギーは、基本的に太陽に依存しています。風力だって、大気循環がポイントになるから、結局は太陽の影響を受けている。ただ、地熱だけはユニークで、天候に影響を受けず、24時間稼働させることができます。
  
神保: さらに、CO2排出量が少ないことですね。
  
村岡: 火力に比べて非常に少なく、クリーンな発電だと言えます。さらに、冒頭から申し上げているように日本は三大地熱大国のひとつで、持続可能な資源を持っている、ということも大きいです。
  
神保: お話を聞けば聞くほど、なぜ地熱発電に注目しないのか、と考えてしまいます。地熱開発の障害は、結局のところどこにあるのでしょうか。自然公園の開発制限が緩和されれば、かなりの問題が解決するということですが、コストについてはどうですか?
  
村岡: 燃料が不要なので、運転中は時々、補充井を掘るコストがかかるくらいです。しかし、初期コストの問題は小さくない。地下開発部分が大きいため、そこにはリスクがあります。井戸を掘るのは意外にコストが高く、またよく調べた上で、「10本掘って7本あたる」という世界です。
  
神保: 初期投資で5億円ほど、という報道を見ましたが、やはりそれくらいはかかるものなのでしょうか?
  
村岡: それくらいはかかると思います。よく「5万キロワットの発電所を作るのに500億円かかる」と言われており、そう考えると、それほど高くはないとも考えられますが。


出演者プロフィール

村岡 洋文(むらおか・ひろふみ)弘前大学北日本新エネルギー研究所教授
1951年山口県生まれ。75年山口大学文理学部卒業。77年広島大学大学院理学研究科博士課程前期修了。理学博士。工業技術院地質調査所、新エネルギー・産業技術総合開発機構、産業技術総合研究所地熱資源研究グループ長などを経て2010年より現職。IEA地熱実施協定日本代表。共著に『日本の熱水系アトラス』など。
  
宮台 真司(みやだい・しんじ)首都大学東京教授、社会学者
1959年仙台生まれ。東京大学大学院博士課程修了。東京都立大学助教授、首都大学東京准教授を経て現職。専門は社会システム論。(博士論文は『権力の予期理論』)著書に『民主主義が一度もなかった国・日本』、『日本の難点』、『14歳からの社会学』、『制服少女たちの選択』など。
  
神保 哲生(じんぼう・てつお)ビデオジャーナリスト/ビデオニュース・ドットコム代表
1961年東京生まれ。コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。AP通信記者を経て93年に独立。99年11月、日本初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を設立。著書に『民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?』、『ビデオジャーナリズム─カメラを持って世界に飛び出そう』、『ツバル-温暖化に沈む国』、『地雷リポート』など。

-引用終わり-

タイトルが「原発大国から地熱大国へ」とあります。私の気持ちとしては「原発半島から地熱半島へ」です。

村岡先生に大いに期待しております。
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