i氏の海外生活体験記

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分かり易い脱原発経済論

2012-09-18 22:12:40 | 大間原発の中間貯蔵化
9/18WEDGE記事より紹介させていただきます。

-日本を貧しくさせるのは脱原発より再生エネルギー-
  原田 泰 (早稲田大学政治経済学部教授・東京財団上席研究員)

-脱原発にいくらかかるのか-
 経済、経営関係では、性急な脱原発はただでさえ不調な日本経済をさらに停滞させると論じる識者が多い。しかし、そもそも脱原発のコストはいくらなのだろうか。

 2011年3.11以前、2010年までの東京電力の売り上げは5兆円、エネルギー価格の変動と原発の稼働率変化を反映して燃料購入費は大きく変動しているがほぼ2兆円であるとみなせる(東京電力企業情報ヒストリカルデータ)。

 火力の比率が6割、原子力の比率が3割と見なせるから、原子力を火力に置き換えると火力の比率を9割にしなければならない。そのために必要な燃料費は1兆円である。すなわち、原子力を止めて火力にするコストは1兆円である。

 東京電力は、日本全体の3分の1の電力をまかなっているので、日本全体の原子力を止めて火力にすることのコストは1兆の3倍の3兆円である。もちろん、新たな火力発電所も作らなければならないが、すでにかなりの過剰設備があったので、それほど大きな投資はいらないようである。

 また、新たに火力発電所を作れば、それは当然にエネルギー効率の高いものなので、燃料費は節約できる。概算としては年3兆円で良いだろう(さらに厳密な数字で私の誤りをただしていただける方がいたらありがたい)。

 化石燃料はこれからも上昇していくのだから、3兆円ではすまないという批判があるかもしれない。しかし、シェールガスの採掘によって、化石燃料価格が今後下落する可能性も十分考えられる。

 日本のGDPは約500兆円だから、3兆円はその0.6%である。消費税1%分が2.5兆円だから、負担と言えば負担だが、何とかなると言えば何とかなるコストである。

 もちろん、消費税は国内の移転にすぎない。取った分は、現在、公共事業などに無駄遣いするか、将来の高齢化に備えて社会保障を維持するためかのいずれかに使われる(どうも前者になりそうだが)。いずれにしろ、国内で使われる。

 それに対して、燃料費が余計にかかるのは、全て国外に流出してしまうお金である。だから、消費税より経済悪化効果は大きいという批判があろう。批判は正しいが、どうしても負担できない金額ではない。要は、原発のリスクがどれだけ大きいかという判断の問題である。

 政府は原発の再稼働をしたいようだが、同時に、30メートル以上の津波が来るという予測も発表している(内閣府「南海トラフの巨大地震による津波高・震度分布等」2012年8月29日)。

 この予測がどれほど蓋然性が高いものか私には分からないが、これと原発依存とは矛盾していると思う。30メートルの津波でも大丈夫なような手段を取れば、原発はコスト高の発電手段になってしまわないだろうか。

 なお、脱原発には原発の廃炉コストを入れるべきだという方もいるが、これは間違いである。原発は永久に使えるものではないのだから、いずれ廃炉にしなければならない。コストとは、あることをすることによって追加的に必要となるコストである。脱原発をしようがしまいが、いつかは廃炉が必要になるので、これはコストに入らない。

-火力と原子力のコストの差は?-
 年3兆円とは、多少火力発電所を増設して、いますぐ脱原発をするコストである。危険な原発、事故が起きたときの被害が甚大な原発に順序を付けて、徐々に脱原発を進めていくコストはいくらになるだろうか。

 エコノミストにも事故が起きた時の被害がもっとも甚大なのは静岡市と浜松市に近い浜岡原発だと分かるが、どの原発がもっとも危ないかは分からない。しかし、一般に、古い原発ほど危険であろう。すると、耐久度の尽きた原発を順次廃炉にしていくことにコストはかからない。

 古いものは1970年代に建設されているから、40年後の2010年にはほぼ寿命が尽きるだろう。実際、廃炉にされたものもある。新しいもの、建設途中のものもあるので、40年後に脱原発とすれば、コストは3兆円ではなく、原発と火力の発電コストの差である。

 原発は建設コストが高いが燃料費が安く、火力は建設コストが低いが燃料費が高い。すでにある原発を使わなければ追加の燃料費すべてがコストとなるが、これから新しく火力と原発を造るのであれば、建設費(の減価償却費と金利分)+燃料費が比較すべきコストとなる。

 火力を使えば、燃料費は余計にかかるが、原発のような巨額の建設費はかからない。原発は安いと電力会社は主張してきたが、火力との差は1割程度にすぎないようだ(エネルギー・環境会議コスト等検証委員会報告書2011年12月19日)。

 しかも、ここには使用済核燃料の処理コストが十分に反映されていない。青森県六ヶ所村の核燃料再処理工場は、7600億円で建設できるということだったが、トラブル続きで現在までに2兆1930億円かけていまだフル稼働にいたっていない。今後もコストが膨らむのではないだろうか。

 なお、政府は、2030年時点の発電量に占める原発の割合について「0%」「15%」「20~25%」の選択肢を示しているが、これは訳が分からない議論である。危険な原発、事故が起きたときの被害が甚大な原発に順序を付けて(もちろん、絶対に安全な原発を新たに建設しても良いが)、順番に廃炉にしていく結果、原発の割合が決まるのであって、比率が先に決まるはずはない。

 こんな訳が分からない話をしていれば、討論型世論調査をしても、政府の思惑とは違って「0%」派が増えるのは当然だろう。さて、話を、順序良く脱原発を行うコストに戻す。

 前述のように、東電の売り上げは5兆円、同社の売り上げは全国の3分の1だから、日本全体の電力の売り上げは15兆円である。そのうち3分の1が原発の電力売り上げである。これが1割高くなると年5000億円である。5000億円で日本経済は大して停滞しない。

 今すぐ脱原発を行えば、年3兆円のコストがかかるが、40年後なら年5000億円である。今すぐと40年後の間のどこで脱原発を行うかによって、コストはほぼ比例的に変化するだろう。20年後の2032年なら脱原発のコストは1.75兆円ということになる。

-わざと高くみせている?-
 脱原発派は、当然原発が嫌いであるが、火力も嫌いなようである。火力のコストは原発の1割増し程度のようだが、再生可能エネルギーのコストは4倍である(前述のコスト等検証委員会報告書によると、地熱は2割高程度だが風力は2倍、太陽光は4倍以上)。

 日本全体の電力売り上げは15兆円、原子力で作った電気の売り上げは5兆円であるから、すべてを太陽光エネルギーに置き換えるコストは45兆円、原子力分だけを置き換えるコストは15兆円である。これは脱原発よりも日本経済に大きな打撃を与える。

 政府も脱原発のコストが巨額であるとしているが、実は、このコストの大部分は、原子力を再生可能エネルギーに代替するコストであって、火力に置き換えるコストではない。例えば、再生可能エネルギーのために2030年までに50兆円の投資が必要であるとしている(国家戦略室「エネルギー・環境会議」経済産業省提出資料、2012年9月4日)。

政府は脱原発をしたくないようであるが、そのための理屈付けは再生可能エネルギーが高く付くことである。

 これは奇妙なことである。脱原発のコストは、本来は原発を火力に置き換えるコストである。ところが、原発を再生可能エネルギーに置き換えないといけないとして、脱原発のコストをとてつもなくコスト高に見せている。

 私は、CO2を削減しないといけないという議論は、原発促進派が支持することによって強力になったのではないかと憶測したくなる。

 そうは言っても、CO2を削減しなければならないし、海外のエネルギーに依存していて良いのか、原発がなければ核技術を維持できないという議論もあるかもしれない。

 まず、CO2をどうしても減らす必要があるなら、日本で減らさなくても、地球全体で減らせばよい。幸か不幸か、日本のまわりには中国やロシアのようにエネルギー効率が悪くてCO2を大量に排出している国がある。これらの国に技術援助してCO2排出量を減らせば、地球全体ではより低いコストでCO2を減らせる。

 何で中国やロシアに援助をするのかという方もいるかもしれないが、援助しないで高いエネルギーを使えば、日本の国力を低下させるだけだ。

 海外のエネルギーに依存しないために原発を使うとしても、電力の25%しか賄えない。他のエネルギーはどうなるのだろうか。最後の核技術だが、北朝鮮はおもちゃみたいな濃縮工場で核開発をしている。どうしても必要なら、原発を一つだけ残しておけば良いのではないだろうか。

 日本経済は、脱原発では大きな打撃を受けないが、再生可能エネルギーに転換することで大きな打撃を受ける可能性があるという結論は変わらない。

-引用終わり-


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