何かあって4階から7階に引っ越したあとだった。目覚めた時、布団は少し人の形をしていたが、姉はもういなかった。
「……さん」外から大家さんが呼ぶ声がした。
ドアを開けると両親が立っていた。父と母が突然たずねてきたのだ。しばらく会っていなかったが、あまり歳を取っているようには見えなかった。母の手を取って、中に招き入れた。父は手にペットボトルの水を持っていた。何もないと思って買ってきたのだろうか。僕は慌てて余計な物を寄せてスペースを作った。カーテンを開け窓を開けた。父はグラスがほしいのだろうか。僕は冷蔵庫を開けてみた。
「私たちはこれから食べに行くところだから」
私たち……
(いい言葉だ)
2人は何をしに来たのだろう……。
積もる話もあるだろうに。
はっとして、僕は目を覚ましてしまった。