チャカチャンチャンチャン♪
「はい。ざんねーん」
つかみに躓くと鐘を鳴らされた。
「ちゃんと聞いてください!」
つかみ、引っ張り、揺さぶって、落とす、準備はすべて整っていた。トータルで判断すべきではないか。
「いえ、もう結構ですから」
結末まで聞かせるつもりだった、俺の心は折れかけていた。
「1度の躓きくらいで、俺のすべてを否定するんですか」
「そういう大会です」
「本当にそういう世界でいいんでしょうか」
「そういう大会ですから」
「それでは話が通らんでしょう。こっちはもっと聞かせたいんだ!」
最後まで聞けば納得する話を持ってきたのだ。
「どうかお下がりください」
「チャンスは2度ある! そう聞いたことはないですか」
「いえ、この大会は1度切りですので」
「ローカルルールでしょう。例外はないんですか」
「平等に1度切りです」
「世知辛いですね」
話す機会を奪うことは聞く人の楽しみまでも奪うことだ。
「そういう大会ですから」
「さっきからそればっかりだな!」
「どうしてもお下がりいただけないのでしたら……」
「残念だな」
そして客は目の前から消えた。
きっと俺の方がいなくなったのだ。
競技志向を離れ、俺はストリートに立っている。
ここには躓いたくらいで鐘を鳴らすような者はいない。客席もなく、観客もいない。時々、猫がやってきて物欲しそうな顔をしてみせる。
「お前の望みは何だ?」
俺の望みと交換しようか。未来の風景はいつだってわからない。風が次々と落ち葉を運んでくる。次の瞬間、誰かが足をとめてもおかしくはない。