★ 城山三郎さんの「逃亡者」(新潮文庫)から表題作を読んだ。
★ ある大工場に刑事がやってきた。戦前、その工場が軍の燃料廠であった時、徴用工として働いていた朝鮮人の男を探しているという。その男は、戦時中、窃盗と国家総動員法違反で逮捕、拘留中であったが、空襲に紛れて脱走したという。
★ 戦後、その工場は払い下げられ、所有者が転々。かつての時代を知る者は、もはやいなかった。隻腕の守衛の男を除いては。
★ 刑事、守衛の男、彼らの教師だった男と三者の話を通して、彼らにとっての戦争、そしてその状況下でのそれぞれの立場が話される。
★ 「戦争というのは、男も女も血まみれになって、空へ吹き飛ぶことなんだよ。人間が生きながら燃えるということだよ。残った人間も、ぼろぼろになってしまうということなんだ。そして、中将だけが、馬に乗って颯爽と女の家へ通い、軍人恩給でぬくぬくと余生を送ることなんだ」(162-163頁)
★ 印象に残る文章だ。戦争の実相が描かれている気がした。
★ さて、「逃亡者」はどうなったか。もはや彼を裁く意味がなくなったらしい。守衛の複雑な思いも印象的だった。
★ ある大工場に刑事がやってきた。戦前、その工場が軍の燃料廠であった時、徴用工として働いていた朝鮮人の男を探しているという。その男は、戦時中、窃盗と国家総動員法違反で逮捕、拘留中であったが、空襲に紛れて脱走したという。
★ 戦後、その工場は払い下げられ、所有者が転々。かつての時代を知る者は、もはやいなかった。隻腕の守衛の男を除いては。
★ 刑事、守衛の男、彼らの教師だった男と三者の話を通して、彼らにとっての戦争、そしてその状況下でのそれぞれの立場が話される。
★ 「戦争というのは、男も女も血まみれになって、空へ吹き飛ぶことなんだよ。人間が生きながら燃えるということだよ。残った人間も、ぼろぼろになってしまうということなんだ。そして、中将だけが、馬に乗って颯爽と女の家へ通い、軍人恩給でぬくぬくと余生を送ることなんだ」(162-163頁)
★ 印象に残る文章だ。戦争の実相が描かれている気がした。
★ さて、「逃亡者」はどうなったか。もはや彼を裁く意味がなくなったらしい。守衛の複雑な思いも印象的だった。
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