じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

中村文則「土の中の子供」

2018-05-26 11:48:21 | Weblog
☆ 中村文則さんの「土の中の子供」(新潮文庫)を読んだ。重い作品だった。重い作品だったが、一気に読み終えた。それだけ迫力のある作品だった。

☆ 少年は実の両親から放置され、遠い親戚に預けられたが虐待され、最後は土に埋められた。それで、この世から消えるはずだった。土と同化するはずだった。しかし、心の奥から湧き上がる何かに動かされて、土の中から脱出した。

☆ 少年を動かしたものは何だったのだろうか。幼い彼にはわからなかった。理屈ではない。言葉では表せない。土から脱出した彼を狙った野犬に向かって、彼は叫んだ。棒を振り回した。それは生への衝動としか言いようがない。

☆ 運命は卑怯だ。それは弱者を狙う。彼は弱者ではなかったのだ。


☆ 理不尽な暴力に耐える日々。彼は運命というものを感じた。それがモノを高いところから落とすという彼の性癖を形づくったのかも知れない。モノを落とす快感。手から離れたモノは運命に委ねられる。その運命を傍観する快感。神か悪魔か、人を、万物を支配する何者かの一端に彼は接したのかも知れない。
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