梅雨

　この時期、南から順に雨季に入る。ずっと雨が降り続いているイメージの梅雨だが実際には、そうずっと降っているわけでもない。だがぐずついた天気は確かに続く。

　鬱陶しい気もするが、雨が降ってくれるお陰様で、田植えも出来るし夏野菜も育つ。恵みの雨、恵みの季節なのだ。関東では7月の中旬から下旬、ちょうど中学高校の夏休みが始まる頃、梅雨明けとなる。夏休み期間と梅雨の期間が重なっていたら本当につまらないことになっていただろう。神様は味付けが上手い。

　梅雨は植物だけでなく動物にとっても成長の季節だ。春、卵からかえった昆虫をはじめ小動物たちは豊富な餌を食べて急速に大きくなる。その小動物を食べて食物連鎖の上位の者たちももりもり育つ。多くの生物にとって大人として送る最後の夏を前に青春の時を過ごすエネルギーに溢れた季節だ。人も同じ。鬱陶しい時期なのになぜかうきうきして夏が待ち遠しい。

　誰かと出会うならこの時期が良いように思う。男女の出会いなら特に。

　年間通して考えてみても、夏が過ぎて気持ちが急速に寂しげになってしまう秋や冬の時期より、今この時期、初めてのことにチャレンジするのがオススメだ。

　企業の営業なども同じことが言えるだろう。皆が前向きな気持ちになっている時期に売り込みをかけると、たとえ即時結果が出なくてもお互いに良いイメージを持った関係が出来上がり易い。次に繋がる可能性は高い。

　ただし、いきなりこの時期にやみくもな活動をしても大した結果には繋がらないかもしれない。それ以前の時期、つまり秋から冬の時期に次の季節の計画を立て、しっかり準備をしておかなければならない。ちょうど生物の営みに近い。次の夏のために前の世代が必死に命を繋いでいる。

　だが、準備が整っていようがいまいが、この時期は動き回った者にチャンスが訪れるのも事実だ。最近会っていない人に声をかけ近況を話し合うだけで新しいアイデアが生まれてくる可能性は高い。秋や冬だと出てくるのは愚痴ばかりという場合もあるから季節が運んでくれるラッキーはうまく利用したい。

　今年から新しい組織、学校や会社などに加わった皆さんは少し周囲が見えてくる頃だろう。あこがれて入った所だったのに想像していたのと大きく違う、と落胆している人もいれば、思いのほか楽しかったり興味深かったりして想像していた以上に前のめりに没入している自分を見つける人もいるだろう。どんな状況であろうとも、自分の状況をネタにして、これまで話したこともないような人たちと話しをして新しい関係を築く事が出来るチャンスの季節だ。自分の中に自分を閉じ込めたままにしていてはもったいない。
　
　古い、と若い人たちには嫌われてしまうかもしれないが、新しい出会いはできればネットを使ったサイバー空間でのことではなくリアルな世界で実施することをお勧めしたい。もちろんネットを使って広く世界中の誰かと会話を始めるのは素晴らしい。だが目の前にいる熱いやつが全身から発する言葉は自分の中の何かを確実に変えて長く残る。もらった熱は自分の言葉に変えて今度は誰かに伝えよう。そうやって繋がって行く夏が面白い。（三）
　
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