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ジェイエスピー社員が綴る日替わりブログ

桜の切株

2016-05-16 08:30:30 | 日記
 家を出て駅に続く坂道を降りる途中に桜の大木があった。大きくカーブして張り出した道の脇からはみ出すように、横浜の港を見下ろして、それ一本がどんと立っていた。崖の縁(へり)でもあり誰かが有効利用できる土地でもなかったのだろう、手入れがほとんど行われないまま周囲はちょっとした茂みになっており、雑草とともにツタが延びて大木のかなり上まで蔓が絡みついていた。
 
 この春、桜はこれでもかと言うぐらい見事に咲いて行き交う人を楽しませた。しかし坂の途中ということもあって、どっさり降り積もった花びらは、その上に体重をかけると滑って転倒する危険があり、咲いた花を見上げるより足元に注意を向ける人の方が多かったかもしれない。
 
 花が全て散って青々と葉が生い茂った頃、その桜の木の幹に横浜市から伐採の通知が張り付けられた。樹木診断の結果、内部に空洞ができており、強風などで倒れる危険があるという。
 
 通知が幹に張られてからほんの数日が過ぎた5月の連休の合間、トラックでやって来た職人さんたちの手際のよい作業で大木は枝を払われた後、根元近くでばっさりと切り落とされた。
 
 坂道のカーブの景色がやけにすーすーする。
 
 曲がり角には斜めに切り落とされた桜の幹のオレンジ色の切株がこちらを向いている。中央には確かにこぶし大の空洞がある、が太い幹からすると空洞は本当に小さい。来年からは坂道を登りながら桜を見上げることもないし、夏の暑さの中で坂を急いで下りながら桜の枝に張り付いた蝉の声のドップラー効果を楽しむこともできない。
 
 わが家周辺は戦後急速に宅地化され、当時夢にあふれて家を持ったカップルが住み始めた地域だ。それなりに広い庭のある住宅に最初に住み始めてすでに相当お年を召したカップルかそのお子さんとさらにそのお孫さんあたりまでが暮らす二世帯住宅や三世帯住宅が多い一方で、最初に住み始めた方々が高齢で亡くなられたか施設に入ってしまったかしたのを機に売りに出された後、土地が4分割されてそれぞれに戸建ての住宅が建っているかしている。最近は特に元の土地が4分割されて建売住宅が建つことが多い。
 
 道の造りは変わっていないが道の左右にある家並みの変化は速い。前からあった1軒家が無くなり急に4軒の家が出来ると、おおむねその4軒にはお子さんを持つ若い夫婦が住み始める。そのお子さんたちが大きくなる頃には、通りのあちこちで見事な花をつけている桜の大木はほとんど年を取って切り倒されていることだろう。

 少しずつ変わって行く街並みは町の持つ活力そのものだと思う。だが心なごます桜の古木を何の代替策も無しに安全の名目だけで次々と切って行ってしまっては、殺伐とした街並みが残るだけだ。今目の前にあるリスクや利益だけを重視するやり方が万延すると、コミュニティからうるおいが消え、やがてかつての活力も失われて行く。これは地域もチームも同じだろうなと坂の曲がり角から遠く見張らせる町の景色を臨みながら思う。(三)


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株式会社ジェイエスピー
  横浜に拠点を置くソフトウェア開発・システム開発・
  製品開発(monipet)、それに農業も手がけるIT企業
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