年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

甲州トウモロコシ

2016-01-13 | 俳句&和歌
◇◇◇  甲州トウモロコシ
 新年早々「富士写撮会」の写真展にNさんの誘いがあって出掛けた。ネーミングの如く富士山を撮影するグループの写真展である。四季の変化に移ろう霊峰、黎明の輝き、昼下がりの雲との戯れ、夕焼けの赤富士と雄姿のシルエットとたたみ掛けてくるような作品に圧倒される。
 厳かな泰然としたMt.Fujiそのものを被写体とするグループのようで、それはそれで見応え充分なのだが、私的には共感しにくい作品もあった。以前、忍野村の近くで富士山を背に「甲州もろこし」を干している風景に出会いデジカメを向けたことがある。
  昔ながらの「トウモロコシの掛け干し」。冷涼で稲作が難しかった村で食料として栽培された恐ろしく固い甲州トウモロコシで粉にするために乾燥させる作業である。富士の裾野を駆け抜けてくる寒風の中に村人のつましい暮らしの歴史を感じさせたものである。
 今回、作品展に行く切っ掛けになったのは他でもないNさんから頂いていた、冠雪の始まった富士山を背景にした「大根の掛け干し」の写真である。それはタクアン用に掛け干しした真っ白い大根の写真だった。甲州トウモロコシを思い出した。
 子供の頃の話。タクアンは自家製で大根洗いは子供達の仕事だった。2本を葉のところをワラで縛って振り分けにぶら下げて干したのである。ほどよく萎びたところで粗塩だけで樽に漬けるのだ。重しの「沢庵石」を載せて終わりである。10日もすれば瑞々しい沢庵が丼一杯食卓にあがる。
 写真展にその作品は無かった。


 
   黎明の朝靄払い佇立する旭日一閃富士の肩より
 
  富士抱く清冽池もなんのその忍野の里は異国語の渦



 
    吊るし柿富士の冠雪真に受けて
 
    紅玉の歯にシャッキリと寒の入り
 
 
 
※甲州トウモロコシ=一時、姿を消したが、村おこしで栽培農家が増えきた。
※紅玉(こうぎょく)=小さくて酸味が強い真っ赤なリンゴ。

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