年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

俳句の受難

2015-06-28 | 俳句&和歌

◇◇◇   俳句の受難
 沖縄には梅雨明け宣言が出されたが、関東は深い梅雨の中にある。1年前「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」という俳句をめぐってのいざこざがあった。作者は銀座で女性たちのデモを見かけ、親近感を覚えて詠んだのだという。作品の優劣は兎も角として、情景は単純明快で取り立てて問題になるような句ではない。
 さいたま市の三橋公民館に俳句会があり、その俳句の中から選ばれた一句を公民館月報の俳句コーナー掲載していた。ところが「世論を二分するテーマ」だから「やまれぬ公共的利益のため」に不掲載にされた。何とも大人げない対応であるナ~…。今後、俳句の一句一句に行政が「世論を二分するテーマ」であるか、どうか検閲して掲載の諾否を決めるという事になる。
 とまあ、忘れていたとこる、先日、作者が月報への掲載と損害賠償を求め、さいたま地裁に提訴するというニュースがあった。提訴側は表現活動に突然、公権力が介入したとして「民主主義の根幹を揺るがしかねない重大な問題が潜んでいる」と法廷闘争を始める。
 司法は「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」が「世論を二分するテーマ」で公序良俗に反する句かどうか審議審判するのか。何ともおかしな世の中になってきた。

 人影の絶えて久しい門柱の鉄条網に昼顔が咲く

 ポツダム宣言つまびらかには読んでない 況や憲法前文をや

 

  9条が窮状となるBaiuかな

  廃校の石段占める破れ傘

 

※Baiu=梅雨(ばいう・つゆ)。中国でも梅雨(メイユ)
      現在、BaiuはSuShiやKaraokeなどと並ぶ国際語として使用されている
※破れ傘(やぶれがさ)=キク科の多年草で、葉は掌状に深く裂け破れた傘を思わせる

 


深慮遠望

2015-06-23 | 俳句&和歌

◇◇◇  深慮遠望

 NHKのドル箱の一つ、トレンディな情報ドキュメンタリー「クローズアップ現代」が
「横浜DeNAベイスターズ」と取り上げた。ベイスターズファンはオッという感じである。最下位常連の球団が貯金10で首位独走という快挙だからニュース性はあるのだが…。
 その原因を若手の経営努力と選手の才能・育成の観点から迫った内容で、もし仮に放送の段階でも独走の勢いがあったなら、極めてインパクトの強い番組になっていたはずである。しかし、交流戦は3勝14敗1分で最下位・勝率は1割7分と誠にお粗末な目を覆う負けっぷりで、ドキュメントの内容と試合結果がかみ合わなくなっていた。
 コメンテーターを務めた野球評論家の小宮山氏も言うべき言葉もなく「勝過ぎた反動、もがき苦しむ時期だ」などと茶を濁すばかりで解説が出来なかった。想定外の事態だった。
 実はこれで終わった訳ではない。その三日後には横浜球場の「ベイスターズVS広島カープ戦」を地上波で放送し、その合間に女優の清水富美加の始球式を映し、ゲスト出演までさせている。この時期、始球式入りの実況放送は異例である。ところが、嗚呼~ 悲しいかな4-8のボロ負けで横浜ベイ12連敗!
 キーワードは清水富美加である。彼女はNHK連続テレビ小説『まれ』でヒロインの親友・蔵本一子役を演じている。『まれ』は横浜にあるフランス菓子店に舞台が移り、ゲスト出演の中で「頑張ってます。見てくださいネ」だった。
 横浜ベイスターズの破竹の勢いにあやかりたかったNHKの壮大な『まれ』CM作戦、深謀遠慮は想定外の12連敗で散ったのである。『まれ』の視聴率 (>_<)


 「赤とんぼ」聞きて噴水フッと止まる 飛沫の子等の声高々と

 かにかくに戦争無縁の我が世代平和憲法いまさらに沁む

 


  野仏に雨ひとしきり苔の花

  梅雨深く「悲」「喜」こもごものノーゲー


 

※飛沫(しぶき)=飛び散る水滴、水遊びの子どもたち
※苔の花(こけのはな)=梅雨の頃、苔に咲く白や赤などの小さな花のごときもの
※ノーゲーム=得点に関係なく、雨のため試合が出来なくなり中止する(5回)

 


お孫さん

2015-06-17 | 俳句&和歌

◇◇◇  お孫さん

 新聞の投稿欄に80歳を越す男性が、10年以上継続し楽しみにしている同窓会の思いを書いていた。長く続いた秘訣は「孫の話題」は遠慮するという暗黙の了解だという。
 私には頷けるものがあった。決めた訳ではなく、何となく「孫の話題」には触れないようにしてきたと言うのが面白い。実は全くのところ「孫の話題」には辟易とさせられる。ご丁寧に写真を回し見せる者もいる。ニコニコ顔で写真は手にとるが胸の内は穏やかではない。
 「あなたのお孫さんが、いかに賢く可愛くてジイジに似ていようともワシには関係ないし、かといってどうでもいいとは云えないし、孫のいない者のひがみとも思われたくないし、風深だろうと花子だろうと名前の由来を得々と解説されてもナ~」
 こんな話題で盛り上がって散会ともなれば次回の同窓会には二の足を踏む事になるのは必定である。
 私が密かに恐れている3点セットがる。その一つがこの「孫の話題」であり、他の二つは「世界漫遊記」と「家庭菜園」である。「世界漫遊記」と「家庭菜園」の悩ましさについてはまたそのうちにと言うことで!

 今年竹葉ずれの音もぎこちなく猛者を凌ぎて天突く勢い

 尼二人千鳥ヶ淵の墓苑背に問う人あれど身じろぎもせず

 犬乗せた車椅子押す老人あり我にもワンをしなさいと諭す

  

  ベランダに雑草一本夏は来ぬ

  補聴器を決断したと奔り梅雨

 

※今年竹(ことしだけ)=竹の子から成長した一年目の竹。新竹。
※雑草(あらくさ)=荒草、ざっそう。


シャーロット

2015-06-06 | 俳句&和歌

◇◇◇     シャーロット

  時にしばしば、面白いというか、首を傾げたくなる事件が報道される。高崎山の子ザルに英王室の王女の名前にあやかって「シャーロット」と命名したところ批判が舞い込んだという。大分市は在日本英国大使館にお伺いを立てたところ「特段の抗議がなかった」と「シャーロット」に決定したが、「英王室に失礼」「国際関係に影響する」など厳しい批判が続いたという。
 皇室と王室を同じように考えた人達が違和感を持ったのかも知れないが…。文化の違いもさることながら、イギリスの王室は長年にわたって激しい「王位争奪の戦い」「領地拡大戦争」を繰り返して来た。子ザルの名前に「シャーロット」をつけた位で国際関係がねじれるほど柔な女王国ではないだろう。
 日本の「万世一系ノ天皇コレヲ統治スル」皇室とは基本的に違うのである。イギリス大使館にお伺いをたてて一件落着させているのも如何にも日本的である。内親王殿下の青いタンクトップに、ブラジャーの肩ひもが見える「見せブラ」ファッションが「事件」として報道されている。青梅の収穫を迎える夏近し、肌あらわな服装の時季である。騒ぎすぎ!

  コーヒーの香りに混ざる新聞のインキの匂い朝の静寂に
                                         
  駆け込めば激しく呼吸する五臓六腑 身はしおれても生命抗う


   ネギ坊主子らを頂き馥郁と

   山盛りの青梅キリリッと店先に

※殿下(でんか)=男性とは限らず、皇族の身位の敬称
※馥郁(ふくいく)=よい香りが漂う。豊かな満足気な様子。


衣替

2015-06-01 | 俳句&和歌

◇◇◇     衣替

 6月、水無月(みなづき)である。「水の月」で田植えの準備で水を田に注ぎ入れる月の意味とある。春から夏へ、生きとし生けるものは季節の変化に対応していく。萌える若葉は緑を強め緑陰を作り、ヤマユリの花が脹らみ始める。
  学園は冬服から夏服への衣替えとなり何となく新鮮な雰囲気を醸しだす。今は少なくなったが、黒の詰襟学生服の男子校では純白のワイシャツになる訳だから目映いばかりだ。 ところが、学生服の黒い一団がいる。体質的に寒がりという理由で「異装許可証」を取って「黒色団」をつくって学園を闊歩する。冬服になると暑がりという理由で「白色団」をつくって差別化を図った。一部の教師は、反体勢とか、個性的とか、天の邪鬼とかいっていたが…、どうも私にはその見方は馴染めなかった。力を借りて周囲を畏怖させるガキ集団ではなかったのかと。
 そういう連中に限って社会人になると体制派となり管理社会大好き人間になって、いち早く中間管理職に就いている。彼らには弱者への眼差しや、想像力が欠如していたように思えてならなかった。


  引きこもり抱えし友はつくづくと一人暮らしが羨ましいと

  細き腕ルーペ頼りて「歌壇」読む眼疲れてヒジしびれ来る

 

   ガンガンとビルのリニューアル衣替

   五月闇ひといき休めと議事堂に


※眼(まなこ)=目、目玉。眼球
※衣更(ころもがえ)=初夏の時期、夏用の衣服に替える
※五月闇(さつきやみ)=五月雨の降る頃の陰鬱とした昼なお暗き曇り空