年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

表参道

2011-12-28 | フォトエッセイ&短歌

 12月は一年の終わりでアレモコレモと何かと皆が忙しく、師匠と言えども趨走(すうそう=ちょこまかと走る)するというので「師趨:しすう」となり、これが師走となったとか。今は師走といっても昔のように忙しい訳ではないが、クリスマスと歳末商戦で何かと盛り上げてくれる。クリスマスイルミネーションもその一つであろうか。
 参道のケヤキ並木を飾る電飾も20周年。今年は東北大震災支援で「原宿 表参道から日本各地へ感動と元氣と笑顔を発信」するのだと、温かみのある電球色のLED65万球がが彩っている。
 原発災害は原因も復旧も未だ闇の中だが、地震・津波による復旧の槌音は確実に響き始めている。イルミネーションの輝きが復興の一里塚を照らすとすれば幸である。東北の雪の便りを聞きながら表参道の雑踏を歩いた。では今年はこれまで、よいお年を!

表参道の並木を飾るクリスマスイルミネーション

  電飾が輝き続く雑踏を思うことなく流れに任せ

  節電をものともせずに彩りて表参道は無為に煌めく

  歳重ね月日の刻み速きことページを記すことも叶わず

  年くくる「絆」一文字悩みける孤独死いじめ「絆」絶たれて

  指折りて今年のニュース振り返るまだ終わりなき原発の惨


日蓮

2011-12-26 | フォトエッセイ&短歌

 師走の夕暮れ時、峰の端が薄い夕日に隈取られ裸木が揺れている。何とも侘びしい思いで家路に向かった子どもの頃を思い出したが、本門寺の日蓮像は威風堂々と絶叫している。
 激しい宗旨である。法華経こそが諸宗の王であり『念仏者は無間地獄 禅宗は天魔の行為 真言は亡国の悪法 律宗は国賊の妄説』と辻説法を展開して追放された。
 その波瀾万丈の人生も晩年には病の人となり、常陸(ひたち)の湯に入ろうと、身延山を出て東に向かったが、武蔵国(大田区池上)の池上宗仲(いけがみむねなか)の屋敷にて入滅。死因は大腸癌

<仁王門手前に建つ、南無妙法蓮華経を唱えるアルミニウム製の日蓮像>

  日蓮の荒き辻説法迷いなし念仏無間真言亡国

  武士の世で布教説法を庶民にも貴族社会の月陰る刻

  教科書の鎌倉仏教難字多く期末試験の策は漢字だ!  

  道元は只管打坐を教え説く槍傍らに武士らも坐禅


五重塔

2011-12-23 | フォトエッセイ&短歌

 神社仏閣の境内に五重塔(五重の屋根を持つ仏塔)があるとそれだけで歴史を感じ、故事来歴を覗きたくなるものであが、その説明に納得できた事はない。大宗な権勢家が心願成就し発願、**聖人**僧が開山、様式は二重平行垂木・唐様の扇垂木・高欄付廻縁云々…ここらで断念する事になる。
 本門寺の五重塔は関東に現存する最古の五重塔。スリムに天空に伸び上がっているのだが、悠然とした安定感が煩悩を引き受けてくれる、そんな吸い込まれるような安らぎと安心感を与えてくれる。
 全面、ベンガラ(弁柄:べんがら)で被われた仏塔が弱い西日を照り返してに重い赤褐色の蔭をつくっている。

 <池上本門寺五重塔は高さ31.8メートル、初層は和様、二重から上は禅宗様>

  暮れなずむ五重塔のベンガラが西日に燃えて阿修羅の如く

  北に向く天差す九輪は遙かなり被災地遠く祈り届くか

  創建は慶長の年と路盤銘 移築再建経て現在(イマ)に至る

  屋根五つ重ねし塔は棟梁の匠の技に揺らぐことなし


紅葉の遅れ

2011-12-20 | フォトエッセイ&短歌

 紅葉の異変が起きている。師走も中旬を迎えるのに紅葉黄葉の見頃を迎える。今年は紅葉日の記録的な遅れで、秋を象徴するイベントである「紅葉祭り」も各地で12月までずらせ込ませているという。
 鎌倉の長谷寺の紅葉ライトアップは18日までというから、さしずめ「紅葉狩り」は冬の季語になるかも知れない。凛とした空気の中で冬日を受けるカエデを樹下から眺めると朱の葉が透けて輝く。木漏れ日も朱に染まって降り注ぐ絶景である。
 環境気象学の専門家は紅葉は気温の指標「地球温暖化の影響を無視できない」となれば絶景を愛でてばかりはいられない。

<宮が瀬ダムの湖面に臨む冬日に輝く雑木の紅葉たち>

 

  秋遅く途惑いて衣更え湖面に映し色合いを見る

  温暖化遅い紅葉の秋が征く京都会議の行く末や如何に

  華やぎて錦繍を着る遅き秋来る冬の日の装いを想う

  ガス規制COPも停滞す温暖化 師走の紅葉鮮やかに照る

  古稀過ぎて湖畔の旅も忘却の姿形の像も結ばず


虹の大橋

2011-12-15 | フォトエッセイ&短歌

 全く気が付かなかった。湖面の重い青を撮ろうと愛用のデジカメを構えると、西に傾き始めた陽が大橋の影を湖面に投げかけていたのだ。澄み切った山の空気が鮮やかに影を作っている。
 袂の親柱を見ると「虹の大橋」とある。設計者はこの橋の影が虹のようにアーチを湖面に描く様子を知っていたのか、あるいは、後に橋の影を見て「虹の大橋」と名前を付けたのか。いずれにしろ、絶好のロケーションである。
 湖畔園地のクリスマスイルミネーションの幻想的な雰囲気は師走の人気の観光スポットであるが、宵闇も待てないので「大橋の虹」を見て引き上げてきた。

神奈川県相模原市緑区宮ヶ瀬湖に架かる64号線の<宮ヶ瀬虹の大橋>

  津久井湖は村を沈めて造られし寄るさざ波は湖底の民か

  影長く師走の空の昼下がり湖面に映す己が艶姿を

  さざ波に虹のアーチを描ききる深山の精は筆を使わず

  瞬間に虹の大橋過ぎ去りぬサイドミラーに朱色輝く

  つづら折り湖畔に沿うてハンドルを切る我が腕の確かさに笑む


銀杏並木

2011-12-12 | フォトエッセイ&短歌

 明治神宮外苑の黄葉日を迎えたイチョウ並木は見事である。300メートル程のイチョウ・トンネルは絵心にブキッチョな私でも絵筆を握ってみたくなる。冷え込んだ透明な秋の陽に照らされる盛り上がる黄葉イチョウは神々しいばかりだ‥‥‥という事になるはずだったのだが、枝がきれいに切り落とされて真っ直ぐに空に向かって突き出ている。毛を毟ったニワトリの首を連想させられた。管理が良すぎるのも一考か!
 枝振りの見事な盛り上げるような樹姿が佳いのだが、それでも黄金に染まる絨毯となった歩道をゆっくりと歩けば、木洩れ日に輝いてヒラヒラと舞い散る落葉が眩しい。

神宮外苑のイチョウ並木<恒例のいちょう祭りは11/18~12/11>

  寄り掛かる公衆電話にいちょう散る目にハンカチ耳にケイタイ  

  寒々と枝打ち落とされ曇天に聳ゆる公孫樹は鳥肌の如く  

  外苑のイチョウ並木のトンネルもスケスケにして雲走り行く  

  イチョウ舞う公衆電話に足を掛け荒き言葉をケイタイに吐く  

  舞い狂う外苑の銀杏君知るや学徒出陣のありし歴史を


和賀江島

2011-12-09 | フォトエッセイ&短歌

 鎌倉も世界遺産に参戦するとかで賑やかであるが、史跡都市としてのダイナミックな迫力が感じられない。小町通りの喧噪と大仏通りの交通渋滞にはウンザリである。
 若宮大路を海岸に向かって進む。材木座海岸である。源頼朝が鎌倉幕府を開くと物資を積んだ船舶の出入りが激増した。ところが、由比ヶ浜の海は遠浅で波濤荒く、多くの船が破損する。そこで往阿弥陀仏が幕府に申請して島を築いたので「鎌倉の海の玄関口」として栄えた。これが和賀江島(わかえじま)である。現在は干潮の時にその港の遺構が残骸となって姿を現す。史跡都市としての名が泣くといういうものだ。

「和賀江島は我国に現存する最古の築港遺跡」の碑。

  和賀江島波に洗われ砕け散る藻くずと散りて波間に消ゆる 

  午後の海汐影に残る和賀江嶋行き交う舟の在りし日を偲ぶ  

  歴史めく材木座あり サーファーは潮風に乗り和賀江島を越ゆ  

  坂東の武士(もののふ)立ちて旗挙げる王朝の代に鬨(かちどき)の声   

  由比ヶ浜出船入船活況の八重の潮路の鎌倉幕府


大内宿

2011-12-04 | フォトエッセイ&短歌

  師走の入りを待ち構えていたように大陸から寒気が押し寄せ、真冬のような寒さである。会津西街道の大内宿も薄っすら雪をかぶって時代劇のセットのようなたたずまいだ。三船演じるワケありの素浪人が会津藩若松城に黙々と草鞋を運ぶ‥‥そんな雰囲気である。
 「重要伝統的建造物群保存地区」という重々しい旧跡になっているが、江戸時代の宿場町が開発から取り残され奇跡的に茅葺きの家並みが残ったのだ。現在は会津西街道の歴史に触れる観光地として人気がある。地区として保存されているので集落の暮らしがそのままに営まれている。単なる見世物観光地に終わってないのがとても良い。
 有名なのは「高遠そば」、箸の代わりにネギ一本で食べる蕎麦である。蕎麦好きの私には‥‥ウ~ンということろだが、マア 思い出に。

<福島原発事故で放射能汚染の風評被害で客足激減し宿は静まる>

  浮世絵の淡い風情をかもし出す大内宿は晩秋の中

  暮れなずむ大内宿に灯が入る行商人の声土間に高く

  ネギ一本蕎麦からませる板の間で囲炉裏の煙も香りとなりて  

  「放射能安全です」の高札に読む人もなく今日も暮れゆく