年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

大暑の候

2015-07-26 | 俳句&和歌

◇◇◇  大暑の候

 大暑の候。「梅雨明け十日の猛暑」で熱中症の注意予報が連日出されている。昔は熱中症がなかったのか、騒がなかったのか、体力があったのか、などと思いながら、身の置き所もなくウロウロしている。そうだ、図書館に行こう!役所の窓口に行こう!病院の待合い室に行こう!あっちこっちと大汗かくことになる。
『冷房を切らずに小まめに水分を摂りましょう』とは言うが、この年齢の世代にはつまらぬ抵抗感がある。午前中から冷房などガラガラ回して電気を使っていいのか。
 朝起きれば家中の戸や襖を開ける。風は土間から縁側から入って部屋中をめぐって流れ去っていく。キュウリやトマトを井戸に放り込んで置き、粗塩を振ってかじる。夜は蚊取り線香を焚いて、蚊帳を吊って寝る。カエルがブオウーブオウーと鳴いて、ホタルが舞い込んでくる。そんな里の暮らしを思い出しながら猛暑・酷暑に絶えてる生活が続くのだ。
 殺虫剤もクーラーもなかった。スマホもコンピュターも無かった。良かったのか、悪かったのか、少なくと熱中症で病院に行ったなんて話は聞いた事がなかった。


  暮れなずむ春日神社の宵の宮CDお囃子キリリと締める

  ローマ字に漢語も混じるひらがなもあなおもしろき日本語の妙


  壊憲に汗噴く国会酷暑かな

  緑陰を無断借用書斎かな

  土砂降りに目を覚ましたか石地蔵

 


※お囃子(おはやし)=太鼓、笛、カネなどの演奏
※壊憲(かいけん)=憲法の条文をかってに解釈して改悪してしまう事
※宵の宮(よいのみや)=宵祭り。神社の本祭りの前夜祭


コールドゲーム

2015-07-20 | 俳句&和歌

◇◇◇  コールドゲーム

 夏の甲子園大会の県代表決定戦が行われている。正式には第97回全国高等学校野球選手権 神奈川大会で186チームによるトーナメント形式で戦う。
 部員100名を越え専用グランドを持ちプロ選手を輩出している超有名校もあれば、2校の部員で頭数を揃えた「連合校」もある。太陽が西から出ても甲子園に出られない弱小クラブである。だが彼らにも目標がある。1回戦2回戦を突破したいという壮大な夢である。
 もう一つは9回まで試合をやるという特別な内なる闘いもある。コールドゲーム(Called Game)である。高野連の通達によって「5回で10点、7回以降は7点以上の点差がついた場合」試合が打ち切られる。その背景は1998年の青森県大会での東奥義塾対深浦高校の122対0の試合、止めさせる試合の規定がなかったのである。
 10点差ゲームを見ている観客は応援の虚しさに哀れを誘われて眼を反らせたくなる。しかし、高野連はそいう理由で点差コールドゲーム制を取り入れたのではない。時間がかかり過ぎるからである。健康管理の問題と次の試合の時間が無くなるからである。ガンバレ弱小軟弱球児!コールドをゆるすな!
 因みに、県の決勝戦と甲子園大会ではコールドゲームがない。理由は実力が伯仲しているからそんな点差が開かないという前提からである。

 

  コールドの惨敗ゲームでケリがつく夏期ゼミが待つ戦いあらた

  外野席芝青々と静かなり弱小クラブの初戦の試合


   夏草に埋もれ隠れる水難碑

   昼顔の儚き吾れの足もとに

   古茶入れてペットボトルを仕込む朝

 

※東奥義塾(とうおうぎじゅく)=打者149人、ヒット86、四死球36、本塁打7、盗塁78、三振1で122点
※古茶(こちゃ)=初夏に出回る新茶に対する前年の茶


かたつむり

2015-07-16 | 俳句&和歌

◇◇◇  かたつむり

 小糠雨の日比谷公園でアジサイの葉に揺れているカタツムリに出会った。
 久しぶり、何十年振りかのカタツムリにしばし足を止めて眺めた。太鼓のような殻の模様が鮮やかに濡れている。角だか目玉だかを精一杯に伸ばして辺りを窺うように身体を伸縮させて動いている。
 子どもの頃の思い出。横浜の片田舎ではデンデンムシとよんでコンクリートの塀に這わせて競争させて遊んだものである。♪♪でんでん虫々 かたつむり、お前のあたまは どこにある。角(つの)だせ槍(やり)だせ あたまだせ♪♪ 大声で歌いながら!
 軟体部を密着さて角を振りながら進む姿は滑稽というより憐憫を感じさせ余り気持ちの良いものではない。フランス人はデンデンムシを食料とすると聞いて衝撃を受けしげしげと眺めたものである。雌雄同体で雌雄の二つの生殖器を持ち自ら交尾を行うとある。
  フランス料理、エスカルゴを食べることもなく生涯を終えそうだ。
 蝸牛が、かたつむりの漢語的表現であることを知ったのはそれからずっと後の事である。

 

  かたつむり退化も進化も未だせず猿滑の幹にまったりと

  「シニアです」「確認するモノ御提示を」チケット嬢の眼鋭し

 

     七十路の蝸牛の歩み振り向かず

  かたつむり建屋背負いて茎渡る

 

※猿滑(さるすべり)=サルスベリ、百日紅のこと
※蝸牛(かぎゅう=)かたつむり、出ん出ん虫、マイマイツムロのこと


台風の目

2015-07-09 | 俳句&和歌

◇◇◇  台風の目

 鹿児島は台風銀座のメッカである。強力な9号11号二つの台風が九州を狙っている。そんな梅雨空の中で川内原発1号機に核燃料を入れる作業が開始された。火山・地震研究者や市民の反対をよそに安全が確認されたので問題ないと8月には予定通り運転を始めるという。
 今でも日常的に火山活動を繰り返し噴煙を上げている桜島とはわずか50kmという指呼の距離である。口永良部島では爆発的噴火があったばかりで全島避難が続き帰島の見通しも立っていない。鹿児島は霧島火山帯の上にある火山活動が極めて活発な地域である。
 自然の猛威を人間は謙虚に学ぶべきだ…、東日本大震災による津波にの壊滅的な被害、福島第一原子力発電所の手の付けられない過酷な惨状から大きな教訓を学んだのではなかったのか。
 規制委員会も九電も活断層に問題がないとOKを出しているが、台風に火山に地震などの複合災害が想定される「原発には最も不適切」な条件下にあるのが川内原発であるといえる。今、何故時代物の川内原発の再稼働を急ぐのか。?5コである。
 原発ゼロを国策とする閣議決定をする時である。安全保障関連法案などにうつつを抜かしている時ではないだろう。
 波浪高く太平洋を北上する二つの台風の目が不気味である。

  渓谷の落石注意の標識にアクセル踏めば速度落とせの

  左寄りエレベーターは長々と一列にして地底に向かう


   潮騒に沈みし村の軒低く

   川内に台風ふたつ怒髪かな


※怒髪(どはつ)=怒りにさかだっている髪の毛
※川内原発(せんだいげんぱつ)=鹿児島県薩摩川内市の原子力発電所。
      運転開始から31年が経つ老朽機で検査のため4年2カ月間停止している。


文月

2015-07-03 | 俳句&和歌

◇◇◇  文月

 旧暦の和風月名で7月は文月(ふみづき)である。7月7日の七夕行事に「織女:おりひめ」と「牽牛:ひこぼし」の2星に詩歌を献じたり、書物を夜気にさらす風習から文月になったという高尚な一説がある。
 しかし、暦と米作り文化の深い関係から稲の穂含月(ほふくみずき)とする説の方が納得がいく。若葉萌える頃の早苗が初夏の日射しに力強く成長し稲穂を茎の中に膨らます「含月(ふくみずき)」。草木は緑を濃くし枝を伸ばし緑陰を作る。
 根は地中深く張り巡らすが、一部は地表に沿って走るように伸びている。「走り根(はしりね)」と言われる。敷石の下に走り込んだ根は30年50年、石を持ち上げコンクリを砕き樹木の生命力の強力を見せつける。
 古刹の参道には走り根がとぐろを巻いて圧倒的な時空を醸している。

 えだ豆派そら豆派かと居酒屋は老人達の蘊蓄賑わう

 敷石を持ち上げ砕く走り根を金剛力士の眼光が射る

 

   朝顔は花を咲かせず出窓まで

  切り株に瞠目深く猫涼む

  走り根を踏みとどめるか仁王様

 

※古刹(こさつ)=古寺。漢語的表現
※蘊蓄(うんちく)=自分の持っている溜め込んだ知識