年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

絆 そして家族

2015-11-29 | 俳句&和歌

◇◇◇   絆 そして家族
 

今年は紅葉が遅いと云う。それでも緑を残しているイチョウの大木は日射しの多い一角が黄色に染まり始めている。サクラ、ケヤキの落葉樹は一足お先にとばかりにひらりひらりと散って行く。
 緋鯉真鯉が悠然と泳ぐ庭園を囲む芝生では花嫁花婿が親族や友人たちとの写真に収まり、一言ごとに明るい笑いが巻き起こっている。ウェディングドレス組・振袖組と形は違えど晴れやかな門出に相応しい日和である。
 霜月下旬、大おじの身で新郎の結婚式に呼ばれた。小学生の頃に2、3度顔を見たぐらいの遠い関係、新婦側親族との出席人数のバランスでもあったのだろう。冠婚葬祭の冠婚の目出度い方で気持は軽かった。
 そして、今時の婚礼に頷かされた。コンセプトは「繋がる 絆 家族」である。仲人・媒酌人はなくご本人達による感謝の言葉で始まる。お色直しの中座の時も両親と手をしっかり握って退場するのである。親の挨拶も前後2回に及び家族の深い絆をアピールする。
 プロフィールビデオも3部作で3回上映。1部は誕生から高校生頃までで親や兄弟姉妹との肉親の絆。2部は卒業から職場、そして婚約までの仲間達との絆。3部は当日の式の映像が流され新郎新婦と列席者との絆。なるほど。
 Q最近の形ですか「3.11以降の傾向です。大変喜ばれています」スタッフは自信を持って胸を張った。

 


 宴闌けるワイングラスの温もりを幸多かれとひな壇に向け

 ラブレター憂いの君に決行す単線電車のお伽の頃に

 


  秋の陽を際立たせいる白無垢の

  花嫁の白冴えざえとチャペルかな

 

※闌(た)ける=たけなわになる


猫だまし

2015-11-25 | 俳句&和歌

◇◇◇   猫だまし

 何とも締まらない千秋楽だった。黒星の日馬富士が、「結びの一番」で白鵬の三連敗の黒星で賜杯が転がり込んでニンマリ優勝である。白鵬に土をつけた横綱鶴龍は何と9勝6負で辛うじて勝ち越した。疑惑の勝敗ではなかったのか。
 まあ、それは兎も角として今場所の話題は「猫だまし」である。小兵舞の海の得意技でお馴染みである。相撲の立ち合いと同時に、相手の目の前に両手を出して叩き、相手の虚をつく奇襲戦法。相手がウン?とまばたきする隙に、有利な体勢に持ち込む。格下力士が一か八かで行う立ち合いの戦法である。
 ドンとぶつかってバッシと四つに組むのを正々堂々の横綱相撲と云うなら「猫だまし」は姑息な、狡猾な立ち合いのイメージは避けられない。故・北の湖理事長は「前代未聞、横綱としてやるべきことではない」と即刻クレームをつけた。白鵬は「楽しんでいます」と切り返した。舞の海解説は「白鵬は話題づくりとして、ファンサービスとしてやったのかも……」。そもそも「猫だまし」というネーミングが面白い。ネコじゃらしを猫の目の前で振ると驚いた猫は突然、中腰に立って前足をばたばたさせる滑稽な姿から来たという。
  白鵬はテレビを通して全国の相撲ファンに「猫だまし」を喰らわせたのではないか。何かと相撲協会との確執が出始めている白鵬、「猫だまし」の真意は不明である

 


  背の砂に二すじ三すじ汗の川切る手刀にうねって光る

  日馬富士鶴竜白鵬本名を知る人ぞなしモンゴルの力士

 


     秋場所のクンロクかすむ猫だまし

     名も体も大砂嵐の角力こそ

 


※白鵬翔(はくほうしょう)=本名:ムンフバティーン・ダワージャルガル
※クンロク=9勝6敗 横綱鶴龍のクンロクは恥ずべき黒星
※角力(すもう)=相撲と同じ、秋の季語


憩いの紫煙

2015-11-19 | 俳句&和歌

◇◇◇   憩いの紫煙

 近所でマンションの建築工事が進んでいる。空高い秋の陽を浴びながら職人達が思い思いの格好で昼休みを憩っている。タバコの煙が影を作りながらゆっくり立ち上っている。穏やかな工事現場の一服の風景である。
 ところがタバコの健康への悪影響が明らかになり紫煙家が戸惑い始めた最中、受動喫煙の害悪が指摘され、タバコ族が社会の隅に追いやられた。喫煙者の激減であるが、全く意に介さない愛煙家も少なくない。
 命縮めても神さんと疎遠になっても隔離部屋に移されてもナンノソノ…。まあ、こうなれば個人の嗜好の問題、人生観の在り様として認めるべきだろ。だが、受動喫煙の原因となる副流煙を止める事は出来ない。
 「タバコは毒の缶詰」「スモークハラスメント」だ!お恐れながらとお上に訴え出る。マンション5階の女性が下の階のベランダでタバコを吸う男性を訴えた。名古屋地裁は5万円の賠償を命じた。初の原告勝訴で以後は概ねタバコ族の連敗が続いているという。
 厚生労働省は健康増進法(平成14年)を定めて、受動喫煙の防止を微に入り細にわたって述べ立てている。真剣に遵守されたら日本では喫煙が殆ど不可能となる。のだが、煙草税は2兆円を越えている。そう易々と完全に追放するわけにはいかない。


 

  騒音(おと)消えて工事現場に昼が来る先ずは一服いつもの通り

  重力の法則語るカリンの実地球目がけてゆらりと撓む


 

     冬構クレーンのワイヤー張りつめる

     自分史をこっそり変えて秋深む

 

※煙草税=2014年:2兆1300万円
※副流煙=主流煙よりニコチン・一酸化炭素など有害化学物が2~3倍も濃度が高い
※冬構(ふゆがまえ)=冬を迎える準備、晩秋


美白効果も

2015-11-09 | 俳句&和歌

◇◇◇    美白効果も

 深まる時雨に見舞われ鶴見川の土手も緑を失い、冬枯れの様子を見せ始める。そんな風景の中で黄色い泡を盛り上げるようにセイタカアワダチソウが悠然と揺れている。繁殖力が強く雑草の女王の風格で秋を彩る風物詩でもある。
 ところが、アメリカ原産で日本の侵略的外来種(日本生態学会)という恐ろしげな雑草に指定され、加えて、気管支喘息や花粉症の元凶だと云われたのだから、何ともイメージが良くない。現在では花粉症犯人説の疑いは晴れたが、刷り込まれた風評は消えない。
 侵略的外来種!とは大仰な。実は明治の中頃「代萩」とも呼ばれるように切り花用の観賞植物、「萩」の代用として持ち込まれたのである。そして、泡立草茶といえば草木の癒しレシピとしてのみならず、アトピー、喘息、さめ肌など、浄血を助け、細胞に活力をつける薬効、とりわけ発ガン抑制作用にメラニン形成阻害(肌の美白効果)とくれば泡立草権現様である。
 更に面白い事に、泡立草は周囲の植物の成長を抑える化学物質を出して大繁殖するのであるが、やがてその化学物質によって自らの繁殖をも抑えてしまうという。侵略は極めて限定的なのだ。


  侵略の泡立草に反撃す ススキ戦線陣地を進める

  ガード下ブルーテントを抱え込み背高泡立草群れて咲く

 


    朝焼けに泡立草が馥郁と

    里の道ススキと競う泡立草

 

 

※背高泡立草(セイタカアワダチソウ)=外来生物法は要注意外来生物に指定している
※化学物質=根から生長を抑えるシスデヒドロマトリカリアエステルを放出
※馥郁(ふくいく)=気品のあるさまにもいう

 


凡事徹底

2015-11-02 | 俳句&和歌

◇◇◇   凡事徹底

 ソフトバンクが4勝1敗で日本シリーズを制して今年の試合はすべて終わった。各球団は新体制の構想を模索しながら来期に備える。勝てば勝ったで、負ければ負けたで課題が尽きないのが勝負事の世界である。
 とりわけ、話題をさらった「横浜DeNA ベイスターズ」。前半首位に位置し、Aクラスどころか優勝かの話も出始めたが、終わって見れば62勝80敗の最下位で中畑監督退陣となる。ソフトバンクは90勝49敗だから並の負けっぷりではない。原因は評論家が様々に解説者しているが、凡ミスの積み重ねである。
 池田球団社長の「チームとして凡事徹底できない事に尽きる。些細なミスをしない事」の談話で奄美大島の秋季キャンプのスローガンは凡事徹底…<なんでもないような当たり前のことを徹底的に行う>ことである。プロ球団としては「華も無ければ凄み」もない。
 投手はミットに収まるように投げ、捕手はそれをキャッチする……笑っていけないけない。ベイスターズは「捕手の後ろに外野手を一人守らせろ」という指摘もあった。
 2013年、甲子園に初出場で初優勝を成し遂げた前橋育英高校(群馬)の荒井監督は「凡事徹底」を信条にチームづくりを進めたことで有名である。高校生との合同キャンプで凡事徹底を図るのもいいかも知れない。頑張れ ベイスターズ!

 


 慟哭に並ぶナインのベンチにも清しく流れる勝者の校歌

 嗚呼死球 振り逃げ暴投パスボール サヨナラ負けに溜息もなし

 


  プロ野球今年も終り夜半の秋

  神宮に鷹舞い終わるプロ野球

 

※凡事徹底(ぼんじてってい)=基本を極めるを意味する四字熟語
※荒井直樹(あらいなおき)= 日大藤沢高(神奈川)出身、2002年に監督に就任