年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

 縄文のビーナスは語る

2016-04-12 | 俳句&和歌
◇◇◇    縄文のビーナスは語る
            
 国宝・土偶「縄文のビーナス」が東京国立博物館で特別公開された。上野公園の桜吹雪の観光のついでか、多くの外国人が見入っている。彼等の目に奇妙奇天烈な縄文時代の土偶(どぐう)がどんな風に映ったのか、それはそれで興味がある。
 実は日本人にも確たる説明がついている訳ではない。人型の土の焼きもので女性像が多いことから多産と農作物の豊饒を祈る「地母神崇拝」の祭具と考えられている。祭場の呪術儀式で意図的に壊して大地に還したのか、破片残欠しか出土しない。
 稀に教科書でお目に掛かる青森県出土の遮光器土偶のような復元可能な土偶が発見される。今回公開された、山形県西ノ前遺跡から出土した土偶は調査員が奇跡的と驚く完形土偶である。
 高さが45センチという日本最大の土偶は均整のとれた八頭身の全身立像で「縄文のビーナス」と呼ぶに相応しい造形美を誇っている。土偶のイメージは乳房・正中線・妊娠した腹部・臀部などコロッと肉感感的に表現されたものが多いが、この山形の「縄文のビーナス」は違っている。
 筑前竹人形を連想させるようなシンプルな気品、洗練された格調を感じさせる見事な造形である。今から約4,500年前の縄文時代中期に製作されたものと説明されている。縄文人は自然物や自然現象に霊威が存在すると信じて呪術によって自然界からの多産と平穏を祈った。
 土偶はその祈りの為に一瞬に破壊された運命の祭具と考えられている。造形的な芸術品として制作された物ではない。しかし、その余りの優美にさに現代人を圧倒してやまない。

 
 
 

  静まった光の中で影創り土偶ビーナスただ悄然と
 
 
 
  誇り満つ乳房大きく腰丸く縄文人は母系をたどる
 
 
 
  過酷なる自然の霊威に畏怖深く果実の実りを厳かに祈る
 
 
 
  遠き遠き原始社会の人々の内なる心に想いを致す


 
 
 
    縄文のビーナス未だ春の夢

 
    目鼻無き影彫る土偶かげろいて

 
    散り散りの土器の残欠夕さくら



※遮光器土偶(しゃこうきどうぐう)=大眼鏡をのような大きな目に特徴がある土偶

最新の画像もっと見る

コメントを投稿