年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

地熱発電

2013-08-26 | フォトエッセイ&短歌

 原発事故の収束宣言が出されてから1年が経つが、事態は悪化の一途である。原子炉の危機的状況は不明で避難している元住民の帰村の目途は全くたっていない。冷却汚染水の処理が出来ず海に流失していた事も判明した。それでも原発再稼働は政府の方針として強引に進められている。
 あれこれの理屈を並べても「原発は原爆」で稼働はするべきではないし、廃棄するしかないのである。原発廃止、脱原発を基本国策として叡智を結集すれば不可能ではない。電源を自然再生エネルギーに転換する国家プロジェクトを立ち上げて電力を確保していくのである。
 太陽光・風力などは風景としても知られて来たが地熱発電も火山国日本の魅力的な電源エネルギーである。仕組みは簡単で地下から噴き出す熱水と蒸気でタービン発電機を回転させ電気を発生させるというものある。いわば火力発電のボイラーの役目を地熱(地熱貯留層)が果たしている。
 まあ、ここまでは素人にも理解出来るが、地熱発電が環境に特段の優位性を持っているのは何かとなると分からなくなる。実は復水器という装置があってタービンを回し終わった蒸気を水に戻し還元井(かんげいせい)を通して地下に戻すのある。つまり地熱は仕事を終わると地下に帰り、再び熱水となって蒸気を噴出するという半永久的に得られる電源なのである。
 鬼首地熱発電所を見に行ってが、工事中とかで中には入れなかった。守衛のおじさんがスミマセンネと言ってパンフを渡しに来てくれた。パンフレットには「地熱エネルギーの有効活用は第4の発電方式として今注目を集めている。現在、全国に200ヶ所以上の地熱地帯があり、およそ2000万キロワットの資源が存在すると」
 鬼首地熱発電所は宮城県の鳴子温泉のさらに奥まった深山の中にある。深い緑に中に蒸気が白絹のように地下のエネルギーを噴出させていた。

仕事を終え蒸気を地下に戻すための復水器を望む

 

  山深き峠の雨滴は佇みぬ奥羽山脈分水嶺なり

  緑濃き樹上揺るがす真っ白の蒸気噴きあぐ地熱発電所

  夏深し緑も重し峠越え地図なき道も日本海に至る

  地獄谷入れば蝉の音消え絶えて硫黄の匂い炎暑に籠もりて

  原発を圧倒するのか噴煙はマグマの怒りか地底の幸か

  鬼首地熱発電所は深山なりマグマの蒸気は地球の呼吸か


丑の日

2013-08-02 | フォトエッセイ&短歌

 8月に入り猛暑一段と厳しさを増し、熱中症による死者が出るニュースが後を絶たない。3日(土)は土用の丑の日(二の丑)で滋養強壮の栄養価が高いウナギを食べて夏バテ解消をするか!と思うがウナギが激減し庶民の口には入らなくなった。
 この30年間で河川のウナギ漁獲量が90%も減少したというから限りなくゼロである。ところが、ビニールハウスでウナギの養殖に成功して事なきを得て来たが、今度は養殖用のシラスウナギが獲り過ぎによっていなくなってしまったのだ。学者先生は原因が不明だと言うが、要するに獲り過ぎたのである。鉱物資源と同様に水産資源も乱獲すれば枯渇するのだ。
 河川の自然のウナギを食い尽くし、養殖ウナギを食い尽くすなど、ニホンウナギ(日本鰻)を絶滅に追い込んでしまった。今度はアメリカウナギ・ヨーロッパウナギ、果ては東南アジアのウナギモドオキにまで手を伸ばし始めている。世界のウナギを食い尽くすという恐るべき魂胆である。                                              
 ニホンウナギをレッドリスト(絶滅危惧種)に指定して保護していく必要性のあることは20年も前に指摘されていたにもかかわらず一向に対策を講じなかった。ウナギ漁やウナギ食の文化を持った日本がその先頭に立たなければならなかった。
 日本人はウナギとの古い付き合いの歴史を持っている。1万年も前の縄文人はウナギを食っていた。貝塚から夥しいウナギの骨が出土している。それから現在まで鰻は日本の食文化の王道を歩いてきた。
 私は鶴見川の上流の田舎育ちで、文字通り天然の鰻を捕って食った世代である。夕方、ミミズをエサにした1m位の竿を川の土手に10本くらい挿しておくのである。早朝、竿を上げに行くと3日に一度くらいはウナギが掛かっている。爺さんが頭にクギをトンと打ち込み捌いて炭火で焼く。夏休みの楽しみの風景であった。鰻が川から姿を消してしまうなど誰が想像しただろうか。
 どうも、土用の丑の日に大量にウナギを食う食文化が一般化したのは江戸時代ではなく最近のビニールハウス・ウナギが出始めてからだという。本当に日本鰻が美味いのは9月、10月の落鰻が旬味だというのだが、やはり“鰻は土用の丑の日”に限るか!

鰻の香りが伝わって来るようだ。

  三寸の隙間つくりて芳ばしい薫りと煙り路地に流して

  昼下がり蒲焼き「いかが」と紺暖簾炎暑にゆらりウナギの如く

  丑の日に梅干す母の丸い背を蒲焼きの香りに淡く思いいる

  濡れ縁に広げた梅の強き香に染まりし母の土用の仕事

  油照り駆け込みビールの喉越しに苦みも引き立つゴーヤーチャンプルー