年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

五月晴れ

2015-05-28 | 俳句&和歌

◇◇◇     五月晴れ

 今日も真夏日です。「5月に2日間も真夏日があることは非常に、非~常に珍しいのです」NHKの天気予報士は感に堪えないという面持ちで言った。春なのに真夏日とは「これ如何に」予報士にすると大変なことなのだろう。
 しかし、素人には近年の異常気象でやたら観測以来とか記録更新の気象現象に驚かされているから、真夏日の2日間くらいでは驚く訳にはいかない。水分補給をまめにして熱中症の対策を自己責任で講ずる事だ。
 案の定、翌日、運動会の練習中に生徒十数名が熱中症で病院に搬送された記事があった。管理の厳しいおっかない先生で「咽が渇いた、水が飲みたい」を言い出さなかったのだろう。先生も全体行進の乱れが気にいらずイライラしていたのかも知れない。

 

 地下鉄の長い階段ドッコイショ五番出口は木漏れ日の中

 そーめんの青の幟に皺はなく初夏の街角パラソルふたつ


  潜り戸を一直線につばめ行く

  安倍総理昨日も今日も五月晴れ


※パラソル=日傘〈太陽を防ぐもの〉という意味のラテン語からきた言葉


春の暮

2015-05-17 | 俳句&和歌

◇◇◇      春の暮

 春夏秋冬、12ケ月を4等分すると3月4月5月が春という事になる。便宜的に言っているだけで春でも夏の気温を示すことがある。
 「お天気おじさん」最近は「お天気あねさん」が多くなっているが、魔法の杖をポンと叩くとギンギンの太陽が飛び出して「今日は夏日になります」と得意気に予報する。
 「昨今のこんな天候を俳句の世界では「春の暮」と呼んでいる。暮春、春の末、春暮れるの時季である。暖房・冷房の世話にならない寒からず暑からずの気候で高齢者には最適となる。散歩の途中で老々介護のご夫婦であろうか、妻を乗せた車椅子を夫が押し歩いているのに出会う。遠目には微笑ましく長閑に見えるが、近づくと夫も車椅子につかまって難儀しながら歩いているのがわかる。長生きも大変である。
 
 

 シネマ観てカフェなるものに気取ってもせわしいだけの場違いの春

 里山は萌える若葉のグランデーション薄き存在われも溶け入る

 

   孤独死を伝えるニュース朧月 


   車椅子押す老夫あり春暮るる

 

※朧月(おぼろづき)=靄などに包まれたほのかにかすんで見える春の夜の月
※春の暮=春が終わろうとしている五月中旬


竹の子

2015-05-10 | 俳句&和歌

◇◇◇   竹の子
 中学の同級生が横浜の郊外で農業を営んでいる。屋敷林に囲まれた広い敷地には農機具のガレージ、作業小屋、物置小屋など数棟が建ち並び農家の威容を誇っている。
 五月に入ると「竹の子狩り」が始まり、元同級生たちも語らって竹の子掘りで一日を楽しむ。「竹の子狩り」同級会のようなもので竹の子の煮物を肴にビールを楽しむ。サワサワと揺れる竹の葉の日陰での一杯は極楽である。
 今年は体調がよくないので欠席したら翌日宅急便で堀たての竹の子が届いた。

 一年も無沙汰重ねる玄関に友の顔のせ竹の子どっと

 竹の子のえぐい香りの皮はぎに戦後も遠くタケノコ生活

 小太りの重き竹の子断ち割れば春の大地の陽炎の香り


  筍は黒土つけて届けられ

  青竹に木漏れ陽一閃藪深し

 

 ※陽炎(かげろう)=太陽光線により空気が炎の様に揺らめく。
 ※筍(たけのこ)=タケノコの古名


卒塔婆

2015-05-04 | 俳句&和歌

◇◇◇   卒塔婆

 川崎市の多摩川河川敷で中学1年生のA君が殺害された事件からすでに2月半が過ぎている。A君の生活や人間像などが報道される一方犯行の動機や殺害手口なども報道され、大きな社会問題になっている。
 私が現場を伺って線香をあげていると某紙の記者が訪れ「今日はA君の14歳のお誕生日」だと教えてくれた。生きていれば中2の新学期、級友と談笑しバスケ部の部活で目を輝かせて動き回っていただろうに……。
 花束に囲まれた線香の煙は絶えることなく五月晴れの空に向かって立ち上っている。
 卒塔婆の脇で風車が川面の風を受けてし、ひたすらに唯ひたすらの回り続けている。 

 「何なんだ」問えど無言に陽炎へる殺害現場はあら草に萌える                                                                                                                  

  花々の笑顔の遺影寂しけれ助っ人いないこの世の悲しさ

  少年の足向かわせた強き磁場窺い知れぬ深き暗闇

 

  卒塔婆を映す川面にボラ跳ねる

 痕跡をさつき緑が柔らかに

 ※卒塔婆(そとば)=塔婆、供養のために立てる梵字を記した板