下の機械は、デジタル録音機のDAT。前にポータブルのDATを紹介したが、とうとうDAT専用テープの国内生産は終わってしまった。アナログをデジタル録音でき、しかも標準で2時間も録音出来た。光ケーブルをつないで、完全なダビングも出来た。 どんどん、古い名器はこの世から去って行く。そうなると、いい音は直接コンサートに出向かなければ聞けない事になる。インターネットの音楽配信は便利だが、1/10に圧縮された音の輝きはさみしい。ストックされたDATのテープを大事に使うしかない。 でも、カセットテープはまだ販売している。悔しい。ならばオープンテープも製造して欲しい。 やはり40年から50年経つと用済みらしい。おっと、それを過ぎた自分は、用済みという事か。Helene Segaraの甘い歌声がDATから流れいる。風の音が時折聞こえてくる。
「源太郎と絵理香」登場人物や設定はすべて架空です。
源太郎は自転車から藁草履を持って絵理香の元に戻った。そして、婆さんから「山で怪我をしたら綺麗な水で足を洗わないと、破傷風にかかる」といつも聞かされていたので、足を洗わせることを考えた。しかし、道から沢までは五間程あり、途中は歩きにくい笹が生えていた。源太郎は絵理香の前に中腰になって、「背負うから乗れ」といった。彼女は少し躊躇したが言われるままに源太郎の背中に身を委ねた。「しっかり、掴まれ。転けたら危ない」というと、絵理香は必死に捕まった。
源太郎は絵理香を背負ったが、そう言ったものの、女の子を背負う事など初めてだった。
自分の汗の匂いに混じって、美恵子の髪の毛からいい匂いがする。そして手を回した腰は男と違い初めての感触だった。笹を分けながら、沢まで降りて、縁の綺麗な石の上に絵理香を座らせ、片方のサンダルも脱がせ、両足を綺麗な水につけさせた。雨が降った後だが、流れる湧き水は透き通り、そのまま飲める綺麗な水だ。当たり前だが山葵はそんな綺麗な水でなければ育たない。
「冷たい」と絵理香がいうと、「我慢しろ」と言って、綺麗に傷周りを洗い、傷の状態を見た。たいしたことはないが、一応、腰につけていた洗濯したての手拭を切り割いて、足に包帯のように巻いた。白い手拭だが彼女の足の方が白かった。
「足あげてろ。今履かせてやるから」と言って、少し大きいが、足に草履をあてがい手早く結んだ。「これでいい。痛くないか」と聞くと絵理香は「痛くない」と答えた。ただ足のやり場がわからない彼女はどういいかわからなかった。仕方なく、源太郎は再び彼女を背負って道まで登った。絵理香は嬉しそに、「このまま小屋まで行くの」と聞いた。
源太郎は女の体を感じながらそれでもいいと思ったが、「馬鹿いえ。道にいったら歩くんだ」と言い返した。道に戻り、彼女は足を地につけて、初めて草履の感触を味わった。「初めてだわ。少しむず痒い」「まあ、すぐ慣れるよ。河原はこれなら滑らない。いいだろ。ところで痛くないか」と再び足を心配した。絵理香はゆっくり歩き始め、源太郎もその歩調に合わせた。
小屋に着くと、奴らはすでに鰍を探し、山葵の間を右左に忙しく歩いていた。
「馬鹿野郎。そんな歩き方じゃ、山葵がだめになる。まずは、葉との間に、足をいれて、絶対に足を動かすな。根が切れたら終わりだ。そして、ゆっくり小段の石の水を見てみろ、いいか動くなよ。鰍が見えるだろ」と源太郎は言った。その通りに男たちは動いた。
「いたぞ」
「採った」
「いい形だ」
「やっぱり源太郎は名人だな」と男友達は喜んだ。
源太郎は、絵理香に沢に入らずここで見ていろと言って、空き缶を持って山葵田に入って行った。しばらくすると、空き缶の半分程に小さい沢蟹の子供を入れて戻った。そして彼女に「これが沢蟹の子供だ」と見せた。彼女は驚きもせず、小さいが本当に沢蟹の形をしている姿を見て、面白がった。
小屋の前には焼け焦げた石が転がっている。源太郎たちがいつも釜戸を作る石だった。その石を集めると巧みに組み上げ即席の釜戸を作り上げた。空気取りの小窓も開け、上に鯨の空き缶が置ける様になっている。雨が降った後だが、小屋の軒下の乾いた小枝を揃えて、同じ方向に釜戸にくべ、杉の乾いた葉で火を着けた。杉葉は燃えながら線香の香りがした。その手際の良さに絵理香は驚いた。
源太郎は小枝に火がしっかり着くの確認して、少し湿った杉の太い枝を平鉈で切り揃え、火の上に被せた。一旦火の勢いは下がったが、パチパチという音がして、見ると火が大きくなった。山葵の葉を八枚、茎から手折り持ってきた。葉の根元から丁寧に茎を離し、その茎を手際良く平鉈で刻んだ。そして、持ってきたアルマイトの弁当箱の蓋を開け、その蓋に入れた。
男友達に声をかけ、鰍を何匹採ったと聞き、彼らが六匹と答えると、それで十分と答え沢から上がってくるようにいい、鉈をもって細い竹を切り、串と箸を作った。魚籠の中には形の良い鰍が入っている。男友達はこれでいいかと源太郎に了解を求めたが、源太郎は一匹だけ小さいと言った。「小さい鰍は採ったらダメだ。何度もいうが、採る時に考えろ」と戻るなり源太郎は怒った。男友達は解ったと言って頭を下げた。ここでは、絶対の指揮権が源太郎にある。源太郎は学校では手も挙げず、勉強は全く出来ない男と思っていたが、絵理香の知らない世界では先生のように振舞っている。源太郎が不思議な存在に思えた。
源太郎は、いよいよ調理にかかった。はじめに鰍は竹串に刺し火口に立て掛け、火との間合い決め、均等に焼ける様にした。そしていく度となく熱の受ける面を変えた。男友達はだだ見ている。程なく鰍の表面が香ばしい焼けてきた。少し火から串を離して、「よし」と独り言をいって、さっき採ったばかりの綺麗な山葵の葉を持ってきて、切株に置くと飯を均等に盛り付け、殻になったアルマイトの弁当箱の中枠を切株に置くと、もう一つの空き缶に沢の水を入れて、火に掛けた。みるみる水は沸騰した。この空き缶には蓋は切り取られずに残っている。それも缶切りの刃で切った残りは、水の入った缶を持ち上げるに十分なようになっていた。
源太郎は、沸騰した水をアルマイトの山葵の茎に注ぎ、中枠で蓋をして湯を切り、大きく何回も降った。そして手早く、飯の横に盛り付けた。それから、沢蟹の入った缶に男友達が持ってきた小瓶から醤油を注ぎ火にかけた。沢蟹はすぐに動かなくなった。醤油が煮詰まり始め、いい匂いがしてきたところで竹箸を使って煎り始めた。
「おい。いいだろ。食べるとしよう」
葉っぱの皿で、しかも生の竹箸。絵理香は驚き、源太郎や男友達の仕草を見ていた。
「絵理香。食べろ。山葵は殺菌作用がある。安心しろ」
彼女は言われるままに、山葵の茎に手を伸ばし食べてみる。ツンと山葵特有の刺激がある。
「源太郎と絵理香」登場人物や設定はすべて架空です。
昔話を徒然に書いてみます。田舎の雰囲気が伝わると嬉しい。登場人物は前回の腰折れ文で読んで頂いた方に人気だった源太郎と絵理香(文字を変えました)にいたしました。
田圃の稲が青々していた頃だった。父親はウンカという害虫が発生しているから、農薬を撒布しないと我が家の田圃がやられると朝から道具を準備していた。あの農薬は白い粉で、手動でファンを回転させる背負いの機械からもうもうと粉が噴出された。そして粉まみれになり、臭かった。
夏休みを前にして源太郎は勉強をする気は全くなかった。男友達と荷物も運べるしっかりとした鉄製の自転車を走らせて、精一杯走って行ける距離を自分たちの世界だと思って遊んでいた。行く場所に困った時は山葵田の渓流に行き、沢蟹を捕まえて、石を積んで火を起こし、空き缶に醤油をいれて沢蟹を煮しめて持っていった米飯にかけて食べた。腹がいっぱいになると、渓流の綺麗な水に目を凝らして鰍をとった。そして遊び疲れると、自転車にまたがり、渓流沿のガタガタ道をスピードをあげて、競争して下って行くことが楽しみだった。その谷の出口には同級生の絵理香が住んでいた。ハイカラな名前の庄屋の娘で、着ているものや持っているものは、それは源太郎が生活で触れることはないものばかりだった。
絵理香は、学校の成績がずば抜けて優秀で、特に英語が得意だった。字も綺麗で大学ノートに書いてある揃った字をいつも源太郎は覗き見していた。彼女は教室にはいると、クラスの誰にもでも丁寧に朝の挨拶をして席に座った。しかし、源太郎には微笑むだけだった。スラリと伸びた足には真っ白いハイソックスを履き、近所の女達とは全く異なっていた。源太郎達は普通靴下など履かなかったし、彼女のような革靴など履いた事などない。もう八十近い婆さんが編み上げた藁草履で日頃遊んでいたから、革靴の履心地などは解りはしなかった。
源太郎と絵理香は喋った事など無かった。その彼女が突然話しかけてきた。
「ねえ、源太郎くん。先週の日曜日に山葵田にいたわね」
源太郎は黙って、聞こえない振りをしていた。
「ねえ、何をしていたの」と再び彼女が聞いたので、源太郎はやっと答えた。
「あっ、何って、沢蟹を採っていたのさ。あの日は鰍を捕まえようと思ったがダメだった」その山葵田は絵理香の家のものだったから、何か怒られると源太郎はふと思った。
「そうなの、私も沢蟹を採って見たいわ。今度誘ってくださる」と予想外の言葉が返ってきた。源太郎は彼女に関わりたくなかったので、ぶっきらぼうに返した。
「ダメだね。お前の親父さんに怒られるぞ。俺たちは採った沢蟹を食べるんだぞ」
「沢蟹を食べるの」と絵理香は首を傾げた。
これ以上話したら、彼女に何を言われるか解らない。源太郎は突き放したように言い返した。
「沢蟹と言っても、雌の子どもを抱いている蟹を採るんだ。美味いんだが女の食いもんじゃない」
「そうなの。少しかわいそうだわ」と彼女は言って、それでも一度見て見たいと言った。
その話を聞いていた男友達は、彼女がどんな顔をするか見てみようと囃し立てた。源太郎は仕方なく、来週の日曜日にまた其処に行くから、見たければ付いてきてもいいと言った。
その日から絵理香は通学途中でも、学校でも源太郎の顔を見かけると、話しかけてくるようになった。源太郎には幼馴染の多恵子という女友達がいたが、多恵子は彼女が何故近頃源太郎に話しかけるのか不思議だった。その度、源太郎に何故と聞いたが、「あいつはお嬢様だから、考えていることが解らない」と答えたていたが、源太郎も正直解らなかった。
日曜日の朝、いつものように自転車に、釜から残った飯を詰めたアルマイトの弁当箱と、鯨の缶詰の空き缶を二つ麻袋に入れ、替えの藁草履、平鉈とモリとタモを荷台に縛って山葵田に向かった。昨日の夜に少し雨が降ったので足元の雑草は濡れていた。絵理香の家の前に着くと源太郎と同じような格好をした男友達が二人待っていて、源太郎に「俺たちは苦手だから」と、絵理香に声をかけてくれと言った。彼女の家に入ったことは無かったので源太郎も躊躇したが、約束だったので玄関を開けた。そして声を上げた。
「おはよう。絵理香。行くぞ」
すると、奥で「絵理ちゃん、お友達が来ていますよ」と言っているのが聞こえた。彼女は走って玄関先に出てきた。源太郎はその姿を見て呆れた。
「お前そんな格好で行くのか。汚れるからせめてスボンにしろ」
絵理香はスカートに白っぽいブラウス姿だった。
源太郎に言われ、彼女は奥にいる母親に聞こえるように「スボンにしなさいと言われたの。着替えるわ」と言いながら、戻っていった。
あれから20分ほど待たされた。玄関先で、自転車を押したり、引いたりしていると、髪を束ね、帽子を深く被りズボン姿の彼女が「お待たせと」と言って現れた。いつものスカート姿の絵理香と違って、もう大人のような雰囲気に気を取られ、足元のなどは気にせず、「行くぞ」と言って、山葵田に向った。
絵理香は自分の家の山葵田だが、見るのは初めてらしく、周りをキョロキョロしながら、時折遅れそうになると小走りで男たちについていった。ところが、作業小屋の手前で彼女が足が痛いと訴えた。源太郎が押していた自転車のサドルを立てて駆け寄った。みると、右足のサンダルの紐がきれてしばらく裸足同然で歩いていたようで、擦りむき血が滲んでいた。
「馬鹿だな。そんな靴でくるからだよ」と強く言うと、どうしていいかわからず涙ぐんでしまった。「待っていろ」と言って、源太郎は自転車に戻り、男友達に「すぐにいくから小屋に行って、沢蟹を捕まえてろ」といった。そして「もしかすると、今日は少し水が多いので、鰍も捕まえることが出来る」と言うと二人は、小走りに小屋に向かっていった。
暑い日でしたが。木陰は涼しく、山歩きには良かった。足尾銅山や草木ダム湖で昼食する小学生の遠足に多く出会った。日光から抜けてきたのだろう。楽しい遠足は天気でよかった。 特急でこれから都内に戻る。都内は真夏日だったらしい。
iPhone/Jerry Emma
憧れのブエノスアイレスから吉報が届く。地球の裏側からリアルタイムで映像が届く。あの東京オリンピックの感動がまた味わえると思うと不思議だ。 スーツに付けていたバッチもお疲れさん。あと七年。楽しみに頑張ろう。
先ほど、雨が降る前の栗木の下草と枝の間に、烏瓜の実を見つけた。普通は、冬に周りの木々の葉が落ち、真っ赤な実が枯れた弦にポツンと付いていることで見つけることができる。でもまだ若々しい実を探すのは、緑の中の緑色だから難しい。プチ幸せだ。
この烏瓜は深夜に、細管の花を咲かせる。そして、朝になると小さくしぼんで見つけにくくなるので、あまり気に留める人はいない。だから昼間注意して見ないと小さな実は見つけられない。
まあ、この実は食べれない。烏瓜というから烏が好きかというと、食べられていないのできっと嫌いなはずである。「不味渋瓜」とでも書いたほうがいいが、冬なら「美赤瓜」とでも表現してやってもいいだろう。日の丸構図の写真だが、瓜が草むらに隠れているのが伝わったらうれしい。
やっと週末。少しゆっくり寝たがそれでも6時前には起きてしまった。全天雲が厚く、富士山は見えないと思ったら、ほんの30分ほど顔を出してくれた。でもパソコンを立ち上げている時間に雲に覆われてしまった。
ブログを見ていただいている方から、先日の大雨で京都まで8時間かけても行けなかった人のことをお聞きした。その方は大変だったでしょう。私も結局自宅には帰れなかった。ただ都内の友人の家に泊めていただき、何とか翌日朝の仕事に穴を空けずに済んだ。友人に感謝です。
新幹線は便利で安全で何も言うことはない。ただ、便利すぎるために私たちは、あのピークには3分間隔発着の新幹線に仕事を合わせてしまっているように思えてならない。一昔、京都なら一泊して会議しただろう、前の晩はその町で食事。だからお金が日本中回っていた。それが、結局今では、朝食や昼食はコンビニで済まし、帰りは新幹線が居酒屋になっている。
Uは先日、北斗星で寝台特急に乗ったことのない友達をアテンドして、札幌にいった。寝台特急が観光という考えが不思議た。昔いやいや、前泊できずに寝台特急で九州によく行った。寝台特急は辛いサラリーマンの移動手段だった。前泊して郷土料理でお酒を飲むのが出張の基本だ。今もそう思っている。現実どんどん離れていくのがさみしい。
ちょっと顔をだしてくれた富士山をどうぞ。