ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2015.6.23 70年の時を経て17歳の詩を想う

2015-06-23 20:05:13 | 日記
 今日6月23日は、戦後70年という節目の年の沖縄戦犠牲者を悼む沖縄慰霊の日だ。
 県平和祈念資料館が募った「平和の詩」2,274点の中から選ばれたという高校3年生、17歳の知念捷(まさる)さんの詩。これを、ご本人が戦没者追悼式で読んだという。
 その「みるく世がやゆら(今は平和でしょうか)」に圧倒されたので、下記に転載させて頂く。

※    ※    ※(転載開始)

『みるく世(ゆ)がやゆら』  知念 捷

みるく世がやゆら
平和を願った 古の琉球人が詠んだ琉歌が わたしへ訴える
「戦世(いくさゆ)や済(し)まち みるく世(ゆ)ややがて 
嘆(なじ)くなよ臣下(しんか) 命(ぬち)ど宝(たから)」
70年前のあの日と同じように
今年もまたせみの鳴き声が梅雨の終わりを告げる
70年目の慰霊の日
大地の恵みを受け 大きく育ったクワディーサーの木々の間を
夏至南風(かーちーべー)の 湿った潮風が吹き抜ける
せみの声は微かに 風の中へと消えて行く
クワディーサーの木々に触れ せみの声に耳を澄ます
「今は平和でしょうか」と 私は風に問う

花を愛し 踊りを愛し 私を孫のように愛してくれた 祖父の姉
戦後70年 再婚をせず戦争未亡人として生き抜いた祖父の姉
九十歳を超え 彼女の体は折れ曲がり ベッドへと横臥する
1945年 沖縄戦 彼女は愛する夫を失った
一人 妻と乳飲み子を残し 22歳の若い死
南部の戦跡へと 礎へと
夫の足跡を 夫のぬくもりを 求め探し回った
彼女のもとには 戦死を報せる紙一枚
亀甲墓に納められた骨壺には 彼女が拾った小さな石

戦後70年を前にして 彼女は認知症を患った
愛する夫のことを 若い夫婦の幸せを奪った あの戦争を
すべての記憶が 漆黒の闇へと消えゆくのを前にして 彼女は歌う
愛する夫と戦争の記憶を呼び止めるかのように
あなたが笑ってお戻りになられることをお待ちしていますと
軍人節の歌に込め 何十回 何百回と
しだいに途切れ途切れになる 彼女の歌声
無慈悲にも自然の摂理は 彼女の記憶を風の中へと消していく
70年の時を経て 彼女の哀しみが 刻まれた頬を涙がつたう
蒼天に飛び立つ鳩を 平和の象徴と言うのなら
彼女が戦争の惨めさと戦争の風化の現状を 私へ物語る

みるく世がやゆら
彼女の夫の名が 二十四万もの犠牲者の名が
刻まれた礎に 私は問う
みるく世がやゆら
頭上を飛び交う戦闘機 クワディーサーの葉のたゆたい
六月二十三日の世界に 私は問う
みるく世がやゆら
戦争の恐ろしさを知らぬ私に 私は問う
気が重い 一層 戦争のことは風に流してしまいたい
しかし忘れてはならぬ 彼女の記憶を 戦争の惨めさを
伝えねばならぬ 彼女の哀しさを 平和の尊さを

みるく世がやゆら
せみよ 大きく鳴け 思うがままに
クワディーサーよ 大きく育て 燦々と注ぐ光を浴びて
古のあの琉歌(うた)よ 時を超え今 世界中を駆け巡れ
今が平和で これからも平和であり続けるために
みるく世がやゆら
潮風に吹かれ 私は彼女の記憶を心に留める
みるく世の素晴らしさを 未来へと繋ぐ

(転載終了)※    ※    ※

 たとえ何があっても再び戦争を起こしてはならない。
 平和は決して当たり前のものではない。先の戦争で尊い命を一体どれだけ失ったのだろう。平和は失ってからその尊さを思い知るものであってはいけない。
 母になって改めて思う。一体どこに自分の愛する子どもたちを戦争にやりたい親がいるだろう。
 大人たちは、未来を担う若い人たちを戦地に送るような馬鹿げた真似だけは決してしてはいけない、と強く思う。

 10代で戦争を経験した両親も80歳を超えた。唯一の孫である19歳の息子が、彼らから戦争の話を聞かせてもらったという記憶はない。
 私自身、子どもの頃の夏休み、戦争に関する本を読んだのをきっかけに、母が祖母の故郷に疎開した話や父が焼け出された話をさらりと聞いた程度である。
 息子の場合、冷戦後に生まれ、戦争の気配すら実感できない世代である。敢えて聞いたり知ろうとしたりすることはないかもしれない。
 
 70年という時を経て、戦争のことを語ることが出来る人が少なくなってきている。
語れるのは既に70代後半以上の後期高齢者たちだ。彼らが語ってくれることが出来るうちに、きちんと聞かせて頂かなければならない、そして語り継がなければならないのだと思う。

 そして我が家でも、今年の夏休みに息子が帰省したら、私の両親が身を以て体験した戦争の恐ろしさを、是非とも息子に話してほしい、と願っている。
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2 コメント

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ご紹介ありがとうございます (アリエル)
2015-06-25 19:43:50
言葉の力、思いの力を感じました。
70年の月日を受け止める17歳の覚悟に脱帽。
返信する
Unknown (ロッキングチェア)
2015-06-25 22:02:12
アリエルさん、こんばんは。

お久しぶりです。
本当にそうですよね。
17歳、凄いです。圧倒されました。
同じようにその言葉の思いを感じて頂き、ありがとうございます。
返信する

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