ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2016.11.21 進化する大人は素敵だ~「オケ老人!」~

2016-11-21 22:32:35 | 映画
 5月に双子のママになったばかりの杏さん、初主演映画という標題の映画を観た。
 「オケ老人!」という題名が「ボケ老人」をもじっているように聞こえて、高齢者をおちょくっているかのような印象もあり、どんなものかなあ、と思っていた。けれど、実際観てみたら評判どおりのいいお話。ラストシーンは涙が滲んで前が見えなくて仕方なかった。

 「大人になると人は成長しないものだと思っていました。」と高校教師の千鶴さん扮する杏さんが言う。
 けれど、そんなことは絶対ないのだ、ということをアマチュアオーケストラで練習を重ねる老人たちとともに過ごすことで身をもって経験し、頼りなかった自分自身がどんどん成長していく。元気の出るストーリーだ。

 学生時代に頑張ったものの就職して遠ざかっていたバイオリンを再び弾きたい、と千鶴さんが入団したオーケストラは、なぜか老人ばかり。入団先を間違えたとも言い出せず、辞めるに辞められず、なりゆきで指揮者としてタクトを振ることになる。

 周りは芸達者なベテラン俳優さんばかり。そんな中、ひときわすらりと背が高く手足の長い“オリーブ”のような千鶴さんの悪戦苦闘が始まる(いつも思うのだが、私のお友達で杏さんに似ているオリーブのような方がいる。今回、体型だけでなく、仕草や佇まいも似ていたんだな、と改めて気付いてしまった。)。

 ベテラン俳優陣だけでなく、共演する若手の演技もこれまたとてもチャーミングだ。物語で重要な柱となる野々村老人の孫娘、千鶴先生には小生意気な高校生の和音。年下の彼氏(これまた祖父からすれば曰くつきの関係)の前では、いじらしくも愛らしい。そして、千鶴先生が密かに心を寄せる年下の同僚、英語の坂下先生が、文句なしにいい笑顔を振りまいている。

 全編を通じて流れ、物語で大きな役割を果たすエルガーの「威風堂々 第1番 ニ長調」は、私も大昔にブラバンで演奏したことがある。
 色々思い出しながら、やっぱり音楽っていいものですね、という感じ。むろん努力しなければ決していいものは作れないけれど、アマチュアでも歳を重ねてもこんなに楽しめるのだから、やはり音楽はやめられないのだ。技術の高みを目指すためにはバランスが難しいことだけれど、アマチュアならば音楽は音我苦になってはいけないだろう。

 ラストの演奏シーンは、アクシデントを逆手にとってこれまた圧巻。ご覧になってのお楽しみである。エンドロールもお見逃しなく。あれこれ面白いおまけが隠されていて最後まで楽しめる。

 芸術の秋。映画と音楽、文字通り一粒で二度美味しい映画だと思う。是非幸せな2時間をお過ごしあれ。お勧めしたい。

 実は一人でこっそり観たことをポロリと夫に漏らしたところ、「えーっ?知人から薦められて観たいと思っていたのに!」と珍しくむくれている。
 ならば、もう一度観てうんと笑ってうんとじーんとするのもいいかもしれないな、と思うほっこり温かい一作である。
コメント
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